雨柳堂夢咄(波津彬子/朝日ソノラマ出版)


5巻まで借りて読んだ。「ネムキ」ですな。12巻が出た後,大人の事情で続きが描かれていない風(ソースは某巨大掲示板)で,如何ともしがたい。蓮さん素敵。明治末期−大正期という浪漫の香り漂う時代設定,眉目秀麗の謎多き青年,妖たちの跳梁跋扈,しんみり人情譚,美麗な絵柄(衣裳が,建物が,道具が,いちいち素晴らしい),どこを切ってもマイナ界のメジャ道まっしぐら。平伏。以前からカバーを見てずっと気になっていたものだが,期待をこれっぽっちも裏切らない素敵漫画だった。


マイナな漫画の方が細部に凝ってて綺麗だし,その分お値段も適正に近づいているかと(これでもまだ安いか)。買わずに言うな。


雨柳堂シリーズを借りる前に「陰陽師」の漫画(岡野玲子)も何年ぶりかでぱらぱらめくっていたものだが,彼の漫画における晴明も,雨柳堂の蓮も,共通するのは,俗気のなさとか近寄りがたさとか。誰にでも(何にでも)優しいけれど常に微笑で距離を置いている感。そしてそこが魅力であり,特定の何かに拘泥してほしくない感(晴明が博雅にやや拘っているのは別格)。