ホーチミンへ行ってきたよ(2020年乾季)

タイトルの通りです。

はじめに


当社で今年度から導入された勤続休暇,たまたま自分が初年度の対象者に含まれていたので,超絶繁忙期のさなかでしたが,周りに無理を強いつつ,1週間取らせてもらいました。ありがたやありがたや。


1週間休めるなら海外旅行というベタな発想。しかし,生憎,海外旅行に同行してほしい人はわたしと同じだけ長くは休めない。そもそも休める時期のすりあわせからしてままならず,ようやく合わせられたのが2月の下旬。あちらの休みは3営業日。振替休日のある3連休を挟んで21(金)から26(水)までの6日間,国内移動も含んだこの期間で「無茶はしない」ことを条件にすると,可能な渡航先は絞られる。ヨーロッパも中央アジアも無理。韓国や台湾・香港は,行ったこともあるしもっと短期でも行けるからもったいない。


とうことで,ベトナムになりました。ハノイホーチミンかはたまたダナンか迷ったけれど,周囲へのリサーチもあわせて最終的には「えいや」で適当に,ホーチミンに決定。ダナンでビーチリゾートも惹かれた。ものすごく惹かれた。往きは夕方成田発(あちらに夜着),帰りは早朝発(日本に夕方着)という,5泊4日な旅程。

旅支度


目的:特になし


やりたいこと:おいしいごはんを食べたい。できそうだったら,洋服を作りたい。売ってないと思うけど売ってたら焼き物(食器)を買いたい。


このすさまじくざっくりした状態で,ゆるゆるとガイドブックを買い集めてぱらぱらめくるも,ざっくりから進まない。行き先はコンパスで円描いてダーツ投げて決めたようなものですし。


そこで,飛行機も宿泊も,現地の移動も,プランニングからコーディネイト諸々一切合切,まるごと配偶者に投げる。毎度のことですが,自分が行きたいと言い出して休みを捻出してもらっている旅行です。よく呆れて放り出されないな,と自分でも思います。フライトは選択肢がなかったけれど,ホテルは2案出して「どちらがいい?」と希望をきいてくれた。すごいなー。


持ち物はあれこれ参考にしつつ,GoogleKeepでチェックボックス式のリストを作り,共同編集にして管理。かばんは,大きなスーツケース1つと機内持ち込みできるカート1つ。リュックサック1つ。そのほか,各自小さなショルダーバッグ。(つまり,わたしはショルダーバッグ1つきり)。


食べたいものや買いたいものは,同じガイドブックを1冊ずつ買って,それを見ながら相談。keepメモに入れたり口頭でやりとりしたり。今時はYouTubeでYouTuberの案内動画やお店がつくってるプロモーション動画がたくさんあるとのことで,出発前夜にいくらか見せてもらった。時代は変わった。


わたしは,旅行となると行き先の言語が気になるタチで,今までも,旅行のたびに「1時間でハングルが読めるようになる本」だとか「トルコ語のしくみ(白水社)」だとか,台湾華語の本だとかを軽率に買ってきた。でも,読み物は読めても語学書はいつもだいたい5ページで挫折する。今回も,旅行ガイド本よりも熱心にベトナム語の本の棚を眺めたものの,5ページで挫折しそうな予感しかなかったので,本のかわりに,ベトナム語独習コンテンツ系のWebサイトをいくつか開いて眺めた。


だがしかし。無理。これは,無理。いやもう絶対無理。ラテン文字だから少しは取っつきやすいかな,少しでも読めたら楽しいかな,なんて甘い考えはあっさり打ち砕かれましたね。諦め悪く「ことりっぷ会話帖」を買ってアプリで単語聞いたりしけど,箸にも棒にも。いやはや。


実際,滞在中会話でチャレンジしたのは「ありがとう」3回「こんにちは」1回だけ。あとはすべて,潔く英語。ごはんも英語メニューのある店にしか行かなかったし,英語表示しか見なかった。現地で唯一覚えたのは,工事現場の看板の「chú ý」。たぶん漢越語で「注意」。

空港と交通


成田空港に行ったのは,2015年秋(イスタンブール旅行)以来約5年ぶり。COVID-19騒ぎの影響か,成田エクスプレスも成田空港も,とても空いていた。中国本土行きはすべて欠航。手荷物検査の機械が新しくなっていたし,出国審査も自分でパスポートのIDページをかざす無人方式にかわっていて,ほんとにびっくりした。パスポートに出入国スタンプがないのは淋しいからわざわざ押してもらった。係官の仕事が減らなくてごめんよ。


ホーチミンシティの空港(タンソンニャット国際空港)の空港コードはSGN。荷物が出てくるのを待ちながらターンテーブル前で「なんの略? たんソ(s)ンニ(gn)ゃっと? そんなややこしい」などと学のない会話をする中年夫婦を目撃していたら,それは我々です。


後にWikipedia先生に聞いたところによると,サイゴン時代から空港コードが変わっていないからSGNの由。困ったときのWikipedia。今回滞在中いちばん見たのは,ことりっぷ会話帖でもGoogle翻訳でもなく,Wikipediaだったかもしれない。夫はたぶんGoogleマップをいちばん見ていた。


タンソンニャット国際空港から市街地までは車で20分程度。到着が夜遅いこともあり,事前に車を手配していた(ホテルの有料迎車サービスかな)。到着ロビーに出てから両替をし(余談だが,その日に限って急に円安になり,よりによって,と嘆いたものだった。10000円=2020000VEDくらい。3万円両替。),携帯電話用のSIMを買って(夫がなにかに挿していたがわたしはよくわからない。日本でグローバルWi-Fiも借りて行った),待っていた車に乗ってホテルへ。


ホーチミン市内は,公共交通機関がバスしかない。そのバスにも,あまり人が乗っていない。とにかくバイク。バイク。バイク。自動車,バイク,バイク,自動車,バイク。ぐらいのバイクの多さ。自転車もなくて,自動二輪ばかり。バイクは2人乗りも多い。子ども連れの家族が大人×2,子ども×2で4人乗っているのも見かけたが,あれはさすがにアレなんじゃ。


我々の市内移動は専らGrab。Uberの類のシェアリングエコノミー配車サービスで,アプリで現在地と目的地を入れて検索したら,来てくれる車が表示される。市内のメジャー観光スポットしか行かなかったからか,たいていはすぐにどこからともなく現れた。待って最大5分。リアルタイムの接近表示があるので安心。ドライバーは専ら若い男性。行き先は事前にわかっているし,道中の経路も見られるのかな。支払いも現地-目的地の距離換算でクレジットカードで自動決済なので,喋る必要も現金のやりとりもぼったくられる心配もない。外国人観光客にはタクシーよりも便利。ということで,タクシーがかなり暇そうにしていたのが,気の毒なくらいだった。


我々は車だったけど,バイクのGrabも多数見かけた。車は自家用車なので一見してわからないけれど,バイクはドライバーがGrabロゴのヘルメットをしてるからわかりやすい。あとで在住日本人向けミニコミペーパーで見たところによると今年の1月から新しい道交法が施行されて飲酒運転の厳罰化が進み,配車サービスの利用がさらに増えているそう。


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Tôn Đức Thắng St.

観光と町歩き


今回の旅行は観光はあまり目的にしていなかったので,少しだけ。ホーチミンは国内随一の経済都市で,発展と開発のまっただ中。観光を売りにしているわけでもないようす。いくつかある仏領時代のコロニアル建築が見所だけど,入れないところも多い。


それに,連日予想最高気温36℃だから,外を歩くのはしんどい。乾季なので湿度は低く,直射日光さえさければさほど暑く感じず不快でもなかったけれど,それでも,暑いものは暑い。


建物の冷房は弱め。冷房効きすぎで寒いのを想定していたのでこれは良い方に拍子抜け。


ノートルダム大聖堂。ちょうど日曜ミサの時間に行ってしまったので中には入れなかった。すごく綺麗。


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Nhà thờ Đức Bà Sài Gòn


中央郵便局。駅舎か銀行か,というつくり。こちらは中に入った。中は通常業務とおみやげの販売と。ちょっと丸の内のKITTEっぽい(雰囲気はぜんぜん違う)。


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Bưu Điện Trung Tâm Thành Phố


オペラハウスとか裁判所とか人民なんちゃらとか:外観のみ。人民委員会庁舎は撮影禁止らしいのだけれど,遠くからならとのこと。とはいえ,気にせずぱしゃぱしゃ撮っていた。


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UBND Thành phố Hồ Chí Minh


グエン・フエ通りの中央部分が公園(歩行者天国?)になっていて,正面の人民委員会庁舎とホーチミン像に蓮のある噴水が,それらしい光景。とくに夜はライトアップされて綺麗だった。陽射しを遮るものがない昼間は人気がないのに,夜になるとどこからともなく人が集まる。


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タンディン教会。インスタ映えするピンク色の教会。少し離れた場所にあるので,フォーを食べに行くついでに寄ってみた。ガイドブックには運が良ければミサの時に入れるかも,と書かれていたが,そもそも門が閉まっていて工事中と書いてあった。なんのことかよくわからない。


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Giáo xứ Tân Định


統一会堂。ゆいいつ中に入った。わりと隅々まで見られる。日本語オーディオガイドを借りたら,これが,とんでもなく長かった。建物や内装の美術的なことにも少しは触れているのだけれど,大筋が「ベトナム共和国最後の一日」ドラマ。南ベトナムの最後に詳しくなれたような気がしないでもないが,世界史をほとんど忘れてしまっている日本人ツーリストにとっては,前提知識が足りなかった。お勉強,だいじです。


サイゴン陥落が1975年で今から40年以上も前のこと,ではあるのだけれど,自分が生まれるほんの少し前で,たしかに幼いころはまだベトナム戦争の爪痕が大きくて,ということを考えずにはいられない。


モスクとヒンドゥー寺院。モスクは,中には入らなかった,のかな。緑色で綺麗。ヒンドゥー寺院は,マスク必須ということで出直した。モザイクタイルが綺麗。仏教とはまた違う,ふしぎな感じだった。中はLED照明で派手派手。


サイゴンスカイデッキ。なんとかとなんとかは高いところを好む。地上49階の展望デッキ。上りましたよ。エレベーターでぎゅーん,と。360度の展望フロアになっていて,ホーチミン市街を一望できる。サイゴン川対岸の未開発地区は数年後に大きく景観が変わっているんだろうなあと思うと,どきどきする。中にはビル建設の経過や,世界のおもな高層建築物の写真展示,アオザイの展示も。


眺めが良いといえば良いのだけれども,天気のせいだったのかそれともいつものことなのか,見晴らしは良くない。けぶっているかんじ。


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Saigon Skydeck


ホーチミンでいちばん高い建物はランドマーク81という少し外れたところにある2018年に開業したタワーなんだけど,そこまでは足をのばさず。ランドマーク81はちょうどホテルの窓から見えて,綺麗でした。


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Saigon River


ホーチミン市街,とにかくあちこちで工事をしている。ちょうど地下鉄工事中で広い通りをまるまる塞いで工事をしているので,少し歩くとすぐに工事中のバーケードに行き当たる。地下鉄ができたら,アクセスがぜんぜん違うんだろうな。


それから,建設中のビルも多かった。泊まっていたホテルのすぐ近くでもヒルトン新築中。日本と違って,建物や建設エリア自体には覆いがなく,コンクリート剥き出しのスケルトン剥き出し状態で工事をしているので,ぱっと見古い建物の解体でもしてるかのような廃墟感がある。逆です。


オペラハウス近くのヴィンコムセンターのような超新しくて超綺麗な建物と,いかにもな「東南アジアの都市」の猥雑感が混在しているあたりが,15年前のバンコクに似ていた。15年前のバンコクよりはキレイめ,か。道ばたでおばちゃんたちがジュースを売っていたり,ローカル食堂のガレージっぽい雰囲気や看板のフォントや色使いが,東南アジア。


道路は舗装されていて,電柱電線も地下に埋められているので,そういう意味では歩きやすい。が,街路樹が多いので木に邪魔される。そういえば,たまたま電気工事(メンテ)に行き当たったところは,道路の舗装をめくって電線剥き出しだった。成長著しい都市の活気を感じた。


それから,広い公園がところどころにあるのも良かった。木や草は少し涼しく感じられるし,リスや雀もかわいかった。風通しの良い日陰では人がだらだらしていた。わかる。

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リス


そういえば。ベンタイン市場にも行ってみましたが。アジアのマーケット。ようやく通り抜ける程度のエネルギーしかわたしにはなかった。

食事と喫茶


旅の大きな楽しみが食事。旅行先を決めるときに「ごはんがおいしそうなところ」は重要な判断材料になっている。2011年のイタリア(ヴィエネツィア,フィレンツェ)然り,2015年のトルコ(イスタンブール)然り,2016年の台北然り。今回も,旅行ガイドブックとは別に「ベトナム行ったらこれ食べよう!(誠文堂新光社)」*1など読みつつ,楽しみにしていた。


とはいえ,食事の回数は限られている。朝食は宿泊につけていたのでよけいに。言語も全くできない。もともと冒険できる性格ではないので,ツーリスト向けのレストランかつ京都でよく行くベトナム料理屋さんで食べたことのある料理が主にはなった。


それでもじゅうぶんおいしく堪能したのだけれど,食べられなかったものが多く心残りは大きい。


余談だが,行きの機内食有料オプション機内食にした。+2500円ぐらいなのでかなり奮発することになるけれど,食器やカトラリーもちゃんとしてるので良い感じ。


朝ごはん。ごはんの評判の良さが決め手になったらしいホテルルネッサンスリバーサイドの朝食ビュッフェ,すごく充実していた。冷蔵ケース3段にびっしりのサラダ,種類充実のパン,バインミは自分でも作れた。うどん,おかゆ,中華系の蒸しパン,焼きそば,頼んでつくってもらうフォーや卵料理(ホテル特製のサイゴンエッグベネディクトも美味しかった)。温野菜,肉料理,豊富なチーズ(エメンタール大好き)に冷製肉,調味料。アイスクリームにベトナムコーヒー。日替わりの絞りたてフレッシュジュース,フレッシュフルーツは乾季だからかあっさりめ。冷蔵ケースのヨーグルトも市販品とホテルメイド。毎朝食べても食べ飽きないし5泊しても食べ尽くせなかった。


朝食レストランは1階,内装は洒落ていてスタッフもあたたかい。リバーサイドを通勤する大量のバイクを眺めながらのんびりコーヒーをすする。


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あさごはん


カフェ。ベトナムといえばコーヒーの国。チュングエンレジェンド,ハイランズコーヒー,フックロン,が3大チェーンで,街の至る所にある。暑くて長時間外を歩いてらんないので,休憩にちょうどいい。どこもカウンターで注文して前払い方式なので,利用もしやすい。(時間のかかるメニューは番号札を渡されて席で待ってたら持ってきてくれる)


チュングエンレジェンドがいちばん高級路線。オリジナルのブレンドの種類が多い。ベトナムアイスコーヒーを飲んだけれど,チョコレートみたいなこくがあって,とても美味しかった。


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Trung Nguyên Legend Café


ハイランズはスタバっぽい雰囲気で洒落たアレンジドリンクも多い。統一会堂横のハイランズで,公園や人を眺めながらぼんやりしている時間が良かった。ちょうど蓮の実の入ったアレンジティーが(期間限定商品だったのかな)プッシュされていたので飲んでみた。底に蓮の実がごろごろ(おいしい)。上に,柘榴に見立てたゼリーがのっている。柘榴風ゼリーは,チェーの具で人気らしい(とこれはガイドブック情報)。芯の部分が慈姑でつくってあって,しゃくしゃくした歯ごたえが楽しい。ベースの紅茶もとても美味しかった。コーヒーの国だと思っていたけれど,お茶もおいしい。


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蓮の実入りお茶(TRÀ SEN VÀNG)


そして,フックロンがドトールくらいのカジュアルさ。イートインでも紙カップで提供される。フックロンの100円ぐらいのプリン,シンプルで美味しかった。


スタバにも行った。高島屋の中の店舗。ロゴ入りのベトナムコーヒーフィルタを売っていて,まちなかのフィルタに比べればずいぶん高いのだけれど(500円ぐらい),面白がって買ってしまうという。


フランチャイズ以外にも洒落たカフェがある。タンディン教会の帰りにたまたま見つけた路地の奥の「サイゴンコーヒー」,高級ショコラティエ「マルウ」のカフェ*2


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Sài Gòn Coffee


全体的に,プラスティックストローは駆逐されつつあり,紙ストローが主流。たまに,植物の茎(麦ではない)のストローがあった。紙はそのうちへにゃへにゃになるしちょっと味に影響している感じもしたので,植物の茎ストローがいちばん良かった,かな。日本もそろそろ紙ストローでしょうか。


昼ごはん。1日目*3はバインセオ。ハノイホーチミンと迷って最終的にホーチミンに決めたのはバインセオが南の食べ物だったから,というくらいにはバインセオが好き。


半端な時間だったのでアイドルタイムのお店が多く,営業しているお店優先で。中国風の内装に窓際にクリスマスディスプレイが残っている謎のテイストだった。屋外の通路を挟んで厨房が見える。ぴかぴかのバインセオ用の鍋(フライパン?)がずらり。ハーフサイズを頼んだら,生地の大きさは変わらず(鍋の大きさは同じなので),具が少ないスタイルだった。直径40cmはあろうかという大きなバインセオに巻物のレタスや紫蘇や謎の葉っぱがどっっさり出てきて,ベトナムの洗礼を受ける。結局ハーフでは物足りず2つめを頼んだので,最初からフルサイズにすればよかった。ミックスきのこが美味しかった。結局バインセオを食べたのはこのときだけで,食べるには根性が必要なので仕方ないんだけど心残りではある。


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Nhà Hàng Bánh Xèo Ăn là ghiền


1日目の晩ごはんは,ホテル近くのHoang Yen。市内に何店舗かある。かしこまるほどではないけどそこそこ高級路線。同じホテルに泊まっている外国人(平たく言えば日本人)客が多かった。


ベトナム料理屋さんの良いところは「飲み」じゃなくて「ごはん」なこと。どの店のドリンクメニューも,お酒だけでなくソフトドリンクもわりと豊富だった。自家用車(四輪・二輪)ユーズが多いからかもしれないし単なる食習慣かもしれない。わたしは専らお茶(桁違いに安く,たいていミネラルウォーターよりも安い。店によってはサービスで出るから注文しなくていいよ,と言ってくれた)を頼み,夫は専らライムソーダを頼んでいた。


ライムソーダは,氷の入ったグラスと,生のライムとシロップと,缶のソーダ(シュエップスとか)が出てきて,自分で調合するスタイル。ほかのソーダ類はできあがったものが出てくるっぽいし,シントー(スムージー)は甘すぎる。食事どきの飲み物に,ライムソーダがちょうど良かった。


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Soda Chanh


ホアンイエンには結局2度行ったが,一度目はごはん物を頼まなかったら勝手に白いごはんが出てきた。頼んだのは,生春巻,空心菜と思って頼んだらほうれん草だった炒め物,それからカインチュア(魚と野菜の甘酸っぱいスープ)。そしたら,ジャスミンライスっぽいほかほかごはんが陶器のおひつに入って出てきた。取り皿と取り鉢(?茶碗というか汁椀というか)は1枚ずつなので,やや扱いに困る。ごはんをよそってスープをかけて食べるとおいしいらしい,という耳より情報をもとに,カインチュアかけごはんに。したら,これがめちゃくちゃおいしかった。全人類1度は食べてみてほしい。ほんとうにおいしかった。タマリンド味のカインチュアはパイナップルの入った酢豚が駄目な人は駄目な味だと思うのだけれど,インディカ米のさらさらスープごはんは暑くて食欲がへばり気味でもするする食べられて,甘酸っぱさが魚の脂っぽさをさっぱりさせて,無限ごはん装置。カインチュア自体は好きでよく食べていたのだけれど,ごはんにかけるのは目から鱗だった。


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Canh chua


2日目の昼ごはんは,サイゴンスカイデッキ近くのNgoc Chau Garden。中心観光地観光客向け価格でお高いという評価はみたけれど,個人的にはいちばんよかった。中華っぽいピンクと赤のおめでたい内装,ソンベー焼っぽい(すごくベトナムらしい)食器。ひょうたんと海老のスープがあっさり滋味でとてもおいしかった。牛肉の炒飯も絶妙の味。そしてこんどこそ空心菜。このとき隣のテーブルの人たちがなにやらわしわし巻いていたのが気になった。


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Ngoc Chau Garden


夜は,Nhà hàng Ngon。THE外国人ツーリストレストランが続く。ここは大型店舗で,ベトナム料理に限らず,韓国料理屋タイ料理などメニュー数が多い。オープンエアのエリアから続く店内もセミオープンエア。コロニアルっぽい内装で雰囲気も良い。例によってツーリスト向けだけど,ロケーションの楽しさと味のバランスが取れていて,おすすめできる。隣席は地元民っぽい若いカップルだった。デートにもおすすめ,なのかしら。6〜8人ぐらいの団体が多くて賑やかだったけども。


昼に隣のおねーさんたちが巻き巻きしていたのが気になって,巻きそうな料理を頼んでみた。挽肉の焼いたのと,米粉を揚げたっぽいものとブン(米粉麺)と野菜と葉っぱを,ライスペーパーで巻いて食べる。葉っぱ(ハーブ類)は季節や場所によっておそらくまちまちで,冬だったのでそれほど種類豊富だったわけではない。コリアンダーと,少し苦みのあるノコギリコリアンダーと,赤紫のミントっぽい風味のものがメイン。あとは店や料理によって,赤紫蘇とか,巻き野菜のサニーレタスとか。いろいろなハーブを巻いてお肉と一緒に食べると,食感も良いし,口のなかでいろんな風味が混じり合って,さっぱりして,とても幸せ。巻いてたれにつける作業も楽しい。


それと,蛤のレモングラス蒸し。蛤は小ぶりだったけれど,29個かな,ごろごろ入っていた。想像できる味で想像通りおいしかった。


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Nhà hàng Ngon


3日目の昼は,フォー。Phở Hoà Pasteur。フォーは北部が本場らしいのだけれど,せっかくベトナムに行くし1度は食べたい,と。(わたしはさほど好物ではないが1度は食べたい)。歩いて行くには距離があるので車で。ここもガイドブックに載ってるしメニューに写真と英語が書かれていてわかりやすく外国人観光客が多かったけれど,店構えや壁に貼ってあるメニューのテイスト,テーブルに置きっぱなしのバナナや油条(?)で一気にローカルな雰囲気に。


牛肉のフォー全部のせを頼み,ついでに苺のシントーと揚げ春巻きも頼む。シントーはその場でミキサーがーってしてフレッシュで美味しくて,これで150円くらいだぜベトナム最高。揚げ春巻きはブンと一緒に葉っぱに巻いて,スイートチリかなにかをつけて食べる。うまい。


フォーにはテーブルにある葉っぱを適宜ちぎってのせて食べる。葉っぱをむしったあとの茎は足もとのバケツへ。スープはあっさりめ,牛の内臓っぽいものとロースっぽい赤身の肉と薄切りの半生の肉との歯ごたえまちまち,そこにちょっと苦みのあるハーブ。


今のホーチミンの物価がどんなものかわからないけれど,東南アジアだからと安さを期待しすぎると期待外れになるだろう程度には安くない,という感じだった。全部のせのフォーが90,000VNDだったので450円ぐらい。全部のせでなければ,350円とか400円とか。日本がデフレすぎるねん……(それは台北に行ったときにすごく感じた)。


食後の会計のときに,店員さんが肝心のフォーをつけ忘れていて異常に安い金額を請求されて,いやいや,おかしいでしょう,というやりとりをするなど。こっちが「払ってない」と言うのが通じないというよくわからない状況だった。


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Phở Hoà Pasteur


その日の夜は,Secret Garden。人民委員会庁舎の裏手,古いアパートの屋上にあるレストラン。ここはもう,ロケーション全振り,という感じ。味は,まあ,ふつう*4。古き良きサイゴンらしさ満点の路地アパートの,電気配線剥き出しの階段を上がった屋上にあるレストラン,オールドソンベーっぽい(知らんよ)食器やらランタン(?)やら蔓性植物の葉のカーテンやら,籠の中の鶏やらの向こうに見える夜景にちょうどヴィンコムセンターのH&Mのネオン。というカオスな街のカオスな雰囲気が楽しい。屋上のレストランで酒を飲む(飲んでない)のが楽しい。という感じ。食べたのは,なにかの花のつぼみの炒めもの,豚の角煮,青パパイヤのサラダ。と,ごはん。なんかの花のつぼみはポピュラーな食材のようで,ちょっと甘めのニョクマム+醤油炒め,というシンプルな味で,しゃきしゃきした歯ごたえでおいしかった。ごはんの進むラインナップでごはんをもりもり食べた。隣のテーブルは,ドイツかフランスっぽい(偏見)ファミリーだった。


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bông thiên ly xào tỏi @ Seacret Garden


4日目の昼,は,サイゴンスカイデッキ付近に舞い戻って,NHU'LANでバインミと汁ありフーティウと(また)苺のシントー。ここがいちばんローカルでいちばん注文難度が高かった。お店は巨大でテイクアウト客も多く,メニューの種類も多い。同一カテゴリの同一価格のものがまとめて書かれていて写真もほとんどないので,自分が食べようと思っているものがどれなのかを見極めるのが難しく,すまほの検索と首っ引きだった。


イートインで誰にどうやって頼んでどこで支払いをすればよいかよくわからん。支払い済みのシントーを払った払ってないのすったもんだもあり(英語は通じないので眼力と英語と気合いで通す),その場で見ていた別のおっちゃんが助け舟を出してくれたりなんだり。


フーティウ,おいしかった。フォーやブンはつるつるだけどふにゃふにゃで歯ごたえがないけど,フーティウは同じ米麺だけれど,しこしこしていて,良いです。


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NHU'LANのメニュー。15と16のどちらかがわからん。


夜は,翌朝も早い(5時台チェックアウト)ので,ふたたび,ホアンイエン。巻きたい気持ちに忠実に,旅行最後のまきまきをして,カインチュアのおかわりをして,それから,まだ食べていなかった蓮の実の炊き込みご飯を食べた。蓮の実のごはんは蓮の葉にくるんで蒸しあげてあって,ほどくと蓮の花みたいで,見た目も素敵だった。


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めしうま

買い物


お洋服を作りました。ワンピースとロングスカートと長袖シャツ,各1枚。全部で13500円だったかな(日本円)。内訳はもう忘れたけど,ワンピースが6000円でスカートが4000円でシャツが3500円ぐらいだった。


食事と同じで,めちゃめちゃ安いというわけではない。お高いお洋服のお高さはデザイン料とブランド料だけど,お素敵なおデザインやお素材でのオーダーはすごく難しい(事前の準備とその場での根気が必要。客側にも洋裁の知識があったほうがいい)。逆に値段だけなら日本でファストファッションブランドの服を買うほうが安い。


デザインは,お店には日本のファッション誌もある(ちょっと古い)けど,現実的には,店に置いてあるサンプルから選ぶか,つくってほしいデザインの現物を持ち込むことになる。現物をベースに変更してもらいたいところを伝えればいいんだけど,ディテールの説明はだんだんめんどくさくなってくる。日本語のできるスタッフのいる店に行ったわけですが,それでもまあまあアレだった。言語の問題というよりは,感覚の問題。まいぺんらいマインドが大事。まして,現物なしで資料写真ベースに頼むのは,そうとうたいへんだとおもう。


素材は,お店に置いてある布は選択肢は限られる。日本で買って持っていくか布市場で戦って勝利する根性があればいいけれど,なかなかね。裏地や留め具は(持ち込まなかったし)相談もなくおまかせ。


そんなこんなで,いろいろ思うところがありすぎてまとまらなかったワンピースは最終的には当初のイメージとは違うものになったし,スカートも野望とはずいぶんかけ離れたものになった。けれど,両方とも,想定の用途には合ったものが買えた,かな。


シャツは,ワンピースとスカートを受け取るときに追加でオーダーした。いちばん気に入っているデザインのものは現物を持ってきてないと思い込んで別ので作ってもらった。リネンがよかったけど店の在庫にちょうどいい色がなかったのでコットンで。


困難もあったし不満もあるけど概ね作って良かったと思っていて,なんでかってーと,自分のサイズで作ってもらえるからです。そういう意味で,シャツが一番仕立甲斐がある。ご存じの方はご存じの通り腕が短くて胴が長いので,市販の長袖シャツは袖が余ってカフスを折り返さないと着られないし,背中や脇腹がすぐに出る。メンズの仕立てもしてる店だったので,シャツ生地はまあまあ豊富だったし,枚数があって困るものでもないし。スカートも,結果的には違うものになったけど,もともとはマキシスカートを作るつもりでした。ワンピースはわずかな増量も許されないぐらいぴったぴたになりました(ボディコンシャスなデザインではないのに)。


所要日数は1日半。午前中に頼んで翌日夕方仕上がり。居合わせたスーツを作っていた男性は,注文の翌日に仮縫いの確認,仕上がりはさらに翌日だったようす。


当たり前ですが洗濯表示タグがついてきません。どうすりゃいいのさ。


それから,バッチャン焼を買いました。Authenticというモダンなオリジナル柄のバッチャン焼を扱っている店で,角皿大小と鍋の取り鉢になりそうな小鉢と,小ぶりの花瓶を。日本人好みのシンプルでおされなデザイン。角皿は何を盛り付けても良い感じになって,捗ってる。


良い買い物だったけれど,いわゆるバッチャン焼で想起される柄とは違うので,赤絵の菊とかトンボとかの,典型的バッチャン焼も欲しい……が,ホーチミンでは場所が離れすぎているからか,扱っているお店もわからなかったし,ほとんど見かけなかった。


大きな買い物はあとひとつ,シルクの織物のストール。Mystère という少数民族の手仕事雑貨を扱っているショップで,最初はウールの刺繍ストールなどを肩にかけつつきゃっきゃしてたんですが,うっかり見つけてしまったシルクストールのしなやかさにめろめろになり,15000円ぐらいで,そらまあいいお値段でしたが,これがたとえば日本の百貨店の催事(期間限定限定ショップ?)で売られていたら6万円ぐらいかな,とかいやらしいことを考えてしまって,クレジットカードを切ってしまいました。すんごい奮発した。奮発しすぎて,身につけるシーンがない。(ストールにあう服もない)


スーパーマーケットの食材の類いは,買って帰ってもあまり使わないのがわかってきたので,チュングエンレジェンドのコーヒー(粉)ぐらい。あとは,メゾン・ド・マルウでチョコレート。


チョコレートはおみやげのつもりだったのに,帰国直後に友人に会ったときは(1度ならず)持参しそびれ,そうこうしているうちに,当面会えそうになく,食料品を渡せるタイミングは過ぎてしまいそうなのが,つらい。

*1:ハノイホーチミンの食べ物を交互に比較しつつ対照しつつ紹介していて楽しい。

*2:コーヒーの味はふつう。

*3:滞在2日目だけど初日は深夜着なのでノーカウント

*4:悪くはない。まずくはない。が,すごくおいしい,という感動もない。ベトナムごはんは平均値が高いので期待値も高く,ふつうだとちょっとざんねん。