「マリみて」にケチをつけるつもりは毛頭ないが,

あの作品および作中登場人物の「御嬢様度」はいささかあやしい。自分に上流階級や女子校やミッションスクールとの縁が一切無いため,言動の適不適は判断できないが,少なくとも,毎度毎度冒頭に掲げられている学校の説明と本編との乖離は甚だしいものがあるのではなかろうか。「御嬢様っぽくない」ことについて以前鈴木氏が,地の文の文体が口語的に過ぎる旨を指摘していらしたが,わたしは文体については特にひっかからなかった(先に書いたように,知らないからというのもあるだろう)。もっとわかりやすく,「スカートの裾を翻すなんてもってのほか」の割にいつも走り回ってないか? とか。


その関連で,わたくしが最もひっかかったのが,彼女たちが生徒会室でお茶を飲むとき,お茶菓子を“広げたティッシュペーパーの上に置いている”ことだった。ティッシュペーパー!! わたしは彼女たちが何の疑問も持たずにティッシュペーパーを使用し続けていることが正視に耐えない。許せないと言ってもいい。ティッシュペーパーを貶めるつもりは毛頭ないが(きょうはこればっかり),いかにも間に合わせ的でありあまりにびんぼくさい。


偶然お菓子が手に入ったがそれを置くべき物が他に何もない,というシチュエーションならティッシュペーパーもやむを得まいが,電気ポットやカップや流し台がある場所で,お菓子も持ち込みだ。御嬢様高校生の財力が如何ばかりかは定かでないが,どうして一向に紙皿だとかペーパーナプキンだとかを買おうとしないのか。育ちの良いお嬢さんがすることではない。と,思う。いつも思う。だいいちティッシュペーパーは,びんぼくさいとか間に合わせ的だとかいうのを除いて考えても,お茶菓子を置く用途にはあまり適しているとは言い難い。薄くて軽くてちょっとした空気の動きで飛びやすい(飛ぶとその上に置いているものが巻き込まれる可能性も高い)し,箱ティッシュの場合は常に一枚外に出ているから,しばらく使わないとその一枚には埃が付着している。また,水気を吸いやすいので,乾燥したお菓子以外は(他の紙製品に比べ)付着しやすい。うっかり羊羹なんて切ってみな?


会社でお菓子類が回覧(見るだけでなく当然1つ取って食べるのだが,なぜかわたしの職場ではこれを回覧と呼び慣わしている)されることがままある。個包装されたものが多いが,まれに,個包装されていないおまんじゅうとか,切り分けられたカステラとか,果物とか,の場合もある。そういうとき,わたしは1つ手に取った後で何処に置いたものかといつも頭を悩ませる。メモ用紙を使うのが無難だが本来の用途を果たさぬまま捨てることになんとはなしに申し訳なさを覚える。ひとりきりならゴミ箱の中からきれいめな廃紙を拾い出して再利用するのも平気だが,さすがに人の手前それもちょっと(それでも,たまに周囲の存在をうっかり忘れて拾い上げていることがある)。裏白コピー用の廃紙箱が近かったころは取りに行っていたが,今は席から遠いので,わざわざ取りに行くのもどんなもんか。で,結局,向かいの席のくまさんにティッシュペーパーを恵んでもらったりゴミ箱を漁ったり「まだ使えるかもと思ってとっておいたけど別に捨てても構わない半使用済みメモ帳」を利用したり,するのである。


そんな日々に嫌気がさしていて,こないだデパートの和風小物売り場を通りかかったら,懐紙が売られているのに出くわした。「あ,これだ。」と思ったね,そのときはね。懐紙。こんな便利で素敵なものの存在を忘れていたなんて。そして思った。なぜ「マリみて」に出てくる御嬢様方は,懐紙の一輪(数詞不明)も携えていないのか。そう思うとよけいにティッシュペーパーなのが許しがたいんだよなー。たしなみとして,どうよ。とかさ。


「あ,これだ。」と思ったけどいまだに買っていないのだがね。その理由は,懐紙はポケットティッシュと違って開封するとパッケージはゴミにしかならないので別途懐紙入れが必要になるのだが,そのとき売られていた懐紙入れのデザインがどれも今ひとつだったのだよ。それに懐紙入れに入った状態でさらに鞄の中にまで入っていると,速やかには取り出しづらいしね。やはりそのままの状態では現代には適さないということなのかなぁ。懐紙メーカ(?)の人たちも,簡易懐紙入れになる(或いは簡易懐紙入れ付き)パッケージで売ってくれてもいいのに。時代劇(といってもわたしは大河ドラマだけだが)を見ると女性はみなさん懐紙を胸元に挟んでますね。あれ剥き出しだけど,使うときには一番外側の一枚を谷折りにして使うので些細なことは気にしない。お茶を習っているときには,ふだんは洋服なので,ふくさばさみ(形態は懐紙入れに同じ。ふくさを入れるのが主目的だからふくさばさみ)に入れていたものです。ティッシュペーパーに比べると紙質丈夫だし,一枚を折って残りを台にできるし,おまんじゅうのひとつぐらいなら包める大きさだし。おねだんはピンキリ,白無地だと50枚200円ぐらいからあるし,ちょいと柄が入ったのだと30枚で300円とか。


とはいっても,飲み代の精算を後日するときに裸銭よりもポチ袋に入っているとかわいらしいぞ(どうせすぐお財布に入れることを考えると裸の方がもらう方はありがたい),程度の,言ってしまえばどうでもいい類のものではあります。ええ。(0:31)