帰りの電車の待ち時間に本屋に寄って,

いつもは歩かないあたりを歩いて見つけてしまった「『一人っ子長女』のための本」(多湖輝新講社)を衝動買い。1300円。昼に銀行でお金を引き出したばかりだったので気が大きくなっていた。


先ほど読み終えたのだが,終始「一人っ子長女」を育てる親(に該当する大人)に向けた内容が中心だった。終わりの方では,「一人っ子長女」本人の心構えにも多少触れられていたし,もちろん全体を通して本人にとっても示唆はあるのだが,最初の内は,“今更読んでも,っていうか,あたしが読んでもどうしようもないんですけど……”と。なんだか。わたしは,「一人っ子長女」本人が自分の生き様を見つめるための本かと期待して買ったので,これはタイトルが悪い。シリーズで「長男のための本」「長女のための本」「次男・次女のための本」(いずれもタイトルはうろ覚え)もありますので,興味のある方はどうぞ。


で,親向けくさいんだけど,でも,この本に登場する事例はわたしらぐらいの世代っぽいんだよな。今生まれたばかりの小さなお子さん世代って,一人っ子の割合はわたしの世代とは比べものにならないほど多いだろうから,周囲の目や家族の扱い方は随分と異なってきているのではないだろうか。近頃は(自分が大人になったからかもしれないが),“「一人っ子」だから○○”みたいな物言いを聞かなくなった。だから,今の若い親御さんが見て即役に立つかというと,ちょっと違うんじゃないかとも思う。というわけで,何のための本なのかよくわからないのだった。


読み進めてみて,“こりゃ,「一人っ子長女」を持つ母親に,『早く子離れしなさい』と言うための本なのね”と気付いたので,自分の母親に送りつけてみようかとも考えたのだが,多くの「一人っ子長女」の事例が出ているとは言え,なんだかんだ言っても一人一人それぞれ違うものだから,自分の身と引き比べて同感する話もあれば“それはちがうよー”と思うことも多い。合っている割合は星占いの的中率ぐらいかな。だから,うっかり母親がこれを読んで彼女がわたしのことを分かったような気になると,それは却って不本意。が,彼女の場合,はなっから「かなさんはそんな子じゃないわ」と,書いてあることの中に真実のかけらがあるかもしれないと考えてもみないのではないか,とも,思う。と,こういう風に書くあたりが,わたしが彼女を見くびっている(見下している)現れでしょうかね,やな感じ。


同感(納得)する記述(事例や性質)も星占いぐらいはたくさんあるのだけど,だいたいはどこかで聞いたことがあるものが多い。その中で,今までこれは聞いたことがなかった,というのが,「一人っ子は人との距離感を大事にする」というもの。少し長くなるけれど引用。



“「(略)決して人嫌いではなく,むしろつきあいはいいほうだと思うんですけれど,なんとなく放っておいてほしい一線ってあるじゃないですか。ぼくは人の心に土足で入ってくるような人間は苦手です。(後略)」”


これは,一人っ子同士で結婚した夫婦が,一人っ子同士だとそのへんの距離感が分かり合えて楽だと言っている例。これは言い当てられている気がしたなぁ。構ってもらいたがり,注目されたがり,自分から何も言わなくても気付いて対応してもらいたがり,なんだけど,同時に,この一線ってのは持ってるね。以前暑中見舞いで小林夫人(笑)から「あけっぴろげなようでいて実はガードが堅い」と言われたここ「たわごと」ですが,そういうことさ。


ここから先はわたしの推測だけれど,背景は,無邪気に残酷な「子ども」にキツイことをされてないから,とか,一人でいる時間が長いから,とかがあるのかも。周りの大人達は,ちやほや甘やかして何かと構いはするけれど,子どもの心に土足で入ってくることはない。それは既に大人の彼らは自然とそういう振る舞い(人付き合い)をするということもあるし,大人と子どもの感性の差が,何をしたところで「土足で踏み込む」ことはできない。そして,大人は何かしら忙しいので,たとえば6人家族で子どもが1人だったわたしですら,小さな頃から,一人アソビの時間は長かった。思春期ぐらいになると,もう完全に一人。自分の内面とか自分の時間とか自分の空間とかをたっぷり育ててきているから,侵犯されたくないゾーンが肥大化或いは堅牢化(?)しているのでは。


たとえば,わたしは,自分からは怒濤の如く話をするけれど「相談する」のは苦手で,というのも,人からあれこれ訊かれるのがあまり好きじゃない。「話したいことだけど,自分から言いだしていなかった」話題であれば,そりゃぁうきうきして話しますが。何気ないこと(言ったところで言う方も聞く方も利害のない無駄ネタ)ですら,虫の居所が悪いときに度重なると,なんだか領域侵犯された気分になるのです。あと,時間的に予定(心づもり)を乱されるのが好きじゃない。突然の電話とか(しかし電話は本来突然かかってくるものだ)。だけど「決して人嫌いではなく,むしろつきあいはいいほう」だし,構ってもらいたがりではあるので,そのへんのバランスは自分でもよく分からない。


もう一カ所。



“一人っ子は人との距離感を大事にすることが,さっきのカップルからもわかりますが,人との距離感は,臨機応変でいいはずです。/自分が楽しめるときは楽しむ。そうでないときは自分のほうから離れる。/よく言われることですが,“あなたが思うほど人はあなたを気にしていないし,見てもいない”ものです。/自分の気分を優先しても,誰もそのことをとやかくは言わないはずです。”


ありがとう多湖先生(涙)。これができないんだよ。“よく言われること”だけにしょっちゅうかなまるからも言われるんだけど(特にラスト2段落)。


そうか。母親に読ませてもどうしようもないが,どうやらわたくしの思考回路をさっぱり理解できないらしい三人兄弟の長男かなまるに無理矢理読ませるか。そうすればハタノのより良いしつけ方がわかるかも。(02:13)