大河ドラマ「新選組!」#28は池田屋事件


知らなかったのですが,高校の日本史の教科書の脚注に載っているからには有名と言っていいのだろう,かの「池田屋事件」は,6月5日の深夜に発生したそうなのだが,この日は祇園祭の宵宵山だったそうだ。今年の大河ドラマが始まるに当たり,脚本の三谷幸喜氏が,池田屋事件祇園祭の週にぶつけると語っていたインタビュー記事を読んだ。


新選組について書かれた本を数冊読んだだけでも,池田屋事件新選組史の前半(初期といってもいいかも)に登場する。その放映が大河ドラマでは後半になる7月の半ばというのは,新選組の歴史を通しで書くのであれば随分遅いことになる。


それでも敢えて祇園祭池田屋事件を合わせようとした為に,新選組になる前(それ以前の多摩時代)をこってり描くことにもなったようだ(それだけが理由ではないのだろうが。青春群像劇という話もあることだし)。


さて,新選組史上指折りの山場(見せ場)となる池田屋事件については,NHKでも番組宣伝に力を入れていたようだ。わたしは目に触れる機会がなかったのだが,スタジオパーク土曜スタジオパークのゲストも続き,番宣番組「プレマップ」もがんがん流していたようだ。しかし,昨日から今日に掛けて,今回の感想を書いている日記やウェブログを幾つか読んで回ったけれど,期待していたほどではなかったという意見が散見される。わたしもそうだ。第25回の芹沢鴨暗殺の方が,よほど盛り上がっていた。


その理由としては,隊士個々のキャラを立てるなど,組織の内部に焦点を当ててずっと物語が進んでいたから,ぽっと出感の強い対外的な戦いは,何週にも渡ってじわじわと盛り上がってきていよいよ,といったところがない分あっけなく感じてしまうのではないだろうか。新選組(というか前身の壬生浪士組)の初代筆頭局長芹沢鴨が内部粛正によって近藤一派に暗殺されたのが大河ドラマ前半のクライマックスだったが,そこに至るまでをじっくりと,若い近藤派の面々の所謂「父親殺し」といった通過儀礼の意味合いを含めつつ描いていた。


それに比べると,池田屋事件は#27と2回に渡って放映されたとはいえその2回だけで,今後の新選組には大きな意味合いを持つ出来事ではあるが,これまでとの繋がりが少ない。


長々と書くようなことでもないけど,芹沢がいなくなってからのここ3回分はちょっとばらばらしている感じがする。それまであまりに鴨祭りをしすぎていたために,トーンが一変し,その割に説明が少なすぎて,ついていけない。年初にある程度予習をしていたわたしでさえついていけない。当時の国内の趨勢もわかりにくいし,新選組が普段何をしているのかもわかりにくい(市中見回りだよ,などと言わないでくれ)。おまけに局長(近藤勇)のキャラが,妙に豹変したような。


特に#26の大阪町奉行与力殺しと#27の冒頭古高捕縛について,あんたたちなんでそんなことしてんの? っていうね(#26は自分達の身を守る為で#27はそれがメインの仕事だったと言われればそれまでだが,そうなの? わかりにくいっす。それに,やってることに同意なり肩入れなりがしがたい)。何故けんか売りに行っているのかがわからないので,納得できないままどんどん話だけ進み事件だけ起こっている感じがする。新見や芹沢を殺す方がよほどわかりやすいという話。


今年の初めにも書いたけれど,結局彼らが思想的にというか政治的にというか,どういう考え方をしてどういう立場を取っているのか,その変遷がどうしても腑に落ちない。最初に読んだのが岩波文庫の「新選組」だったのがよくないのかな。この本では近藤はわりに(最初は)尊皇攘夷が強かったと書かれていて,ドラマでも最初の頃はそうで,だから,なんでまたここに来ていきなり「御公儀にたてつくものは容赦なく切り捨てる」などと毅然と言い放てるのか。


左幕であることについては,以前,多摩が天領であり千人同心などの組織もあったこと(その上豪農の出であること),つまり,彼らはもともと御公儀の為な人たちだったという説明を何処かで読んで,それなりに納得はしたのだが。しかし,維新後に生まれて育ったわたしにはどうもわかりにくいっちゅぅか,ね。


文句はこれぐらいにしておきます。個人的には,幕末好きでもないので特に期待していたわけでもないので,あまりがっかりはしておりませんし。番宣打って今まで見ていなかった視聴者を取り込もうとするのなら,それまでの流れを知らずに見ても楽しめる作りの方が良いでしょうし。


で。引っ張りまくっといてアレですが,祇園祭の宵宵山の感じがとてもよく出ていて,そこはよかった。今回の始めの方に佐久間象山先生の元を桂小五郎が訪れて話をするシーンがあったのだが,その背後にずっと例の「ちんとんしゃん」の音が聞こえていて,「お,きたきた」って感じ。その後,新選組メンバーが不逞浪士が集まるであろう宿を探して,木屋町と縄手通りの二手に分かれて四条から三条までおよそ500mをしらみつぶしに(3時間)捜索するわけだ。宵宵山の日にね。


電気もないうえに物騒な世の中になっていた当時,普段なら夜も更けると人通りはそれほど多くないんじゃないかと思うのだけれど,宵宵山の日ゆえ四条はかなり混雑している。それが直接メインストーリーに影響している場面はそれほどなかったけれど,雰囲気が出ている。


そこで笑ったネタ一つ。セリフをかなり正確に引用してくださっていた「はてなダイアリー 同居人日和」さまから引用させていただく(http://d.hatena.ne.jp/doukyoninday/20040718



 一仕事の前に京の町を歩く歳三、斉藤一オダギリジョー)、そして葛山武八郎(平畠啓史)。激闘池田屋の前に、ちょっとだけ三谷さんの遊びが入ったね(^0^)。


 町の中が落ち着かないという歳三に「明日の六月六日は祇園宵山だからな」と添乗員のハジメちゃんの説明が入ります。「本祭りの前の日が宵山、前の前の日の今日はヨイヨイ山」「じゃあ昨日はヨイヨイヨイか」うふふふふふ、超くだらないこと言い合ってる、歳三とハジメちゃんのホンワカツーショットでござります〜(≧▽≦)。ありがとうっ!三谷さん(笑)。


うひひ。この場面を見た途端,頭の中で「歳さん,そりゃぁねぇよ,宵宵山までだよ」「って,こないだとうとう「宵宵宵山」できたけどな/爆」と一人ツッコミ更にツッコミ,をかました京都人は多いだろう。どっちかいうと,現実にできてしまった「宵宵宵山」を笑うところか,ここは(だってあまりに安直で笑っちゃったもの,最初に聞いたとき)。「宵宵宵山」の存在を(それもほんの数年前にできたことを)知っててわざと噛ましたネタなのか,わからんけど,これはヒット。


蛇足ですが,祇園祭というのは一ヶ月ぐらいかけて延々とやっているお祭りでございまして,山鉾巡行のことを祇園祭というのではありませんのことよ。


もう一つ,これも「同居人日和」様から



 そこに登場は槍とイカを持って「ヤリイカ、ひとつどう?」の左之介(山本太郎)だよっ!必ず食べ物と一緒なんだもん(笑)。「イカは胃にもたれる」とハジメちゃんったらつれない素振りで去っていく。


サノスケの「ヤリイカ」は,焼きイカを槍に刺して勧めたから「ヤリイカ」って言ったんじゃないかと,あれはサノスケ流のしゃれのつもりだったんじゃないだろうかと,思うのだが。イカ焼きに使うイカってヤリイカなの? スルメイカかと思っていたのだが? いずれにしても屋台のイカ焼きでイカの種類を云々しないと思うのだが。時に,真夏の京都でイカ焼きなんてあったのかな。あったんだろうな。


どうでもいいけど,斎藤一は甘い物が苦手でイカも苦手で,けっこう偏食家なのだろうか。道ばたで寝起きするような(食うのに困ってヤクザの助っ人をしていたような)生活をしててそれってことは,どうなんだ,おい。おまけに大勢で呑むのも好きじゃないし,とその発言をしたのはかなり前のことだったように思うけど#26では一人酒してたところをワルイヒトタチに連れ去られてしまって,一応その発言にも意味はあったのねとか。なんちゅぅか,ドラマ上かなり遊ばれておりますが。いやまあそれで(が)いいのですが。フジョシ受け狙ってるよなぁ。


フジョシ受けといえば,はてなダイアリーにしても他のブログにしても,「新選組!」の感想を書いているのはどうも女性が多いような印象を受ける(書き手の性別は明記していないところが殆どなので印象に過ぎないが)。その中で,それっぽい匂いを漂わす記述をしている人としていない人とがいて,それっぽいことを書いている中では,意外と,副長(総長になってない方)がわんこ(サイトウハジメさんね)の御主人様であるといった記述が多い。指摘されてみれば確かに副長は妙にわんこ贔屓しているし,わんこもわんこで……いやまあどうでもいいんだけど(すみませんねぇ,こんな視聴者ばかりで)。わんこはもともと局長に恩があると思うので例えば局長と副長が相反することを命じたらどっちに従うのだろうなどと思ってしまうものであったよ。


この構図は,例えばわんこは大きなおうちの飼い犬で,局長は家の主,副長が直接の飼い犬係,といった感じなのだろうか。或いは,迷子になった野良犬わんこが間違って近藤先生のお屋敷に迷い込んでしまい,下男(源さん)が追い返そうとするが主の近藤先生は温厚で鷹揚な人柄だったので,追い返しもせず「うちで飼ってやれ」と言ってやる。わんこ感涙。しかし主は忙しい人なので,実際に日頃飼い犬の相手をしてくれるわけではない。で,飼い犬になったわんこを見つけておもしろがって遊んで(?)いるのが主のオトモダチで近藤家に入り浸っている土方なんじゃないだろうか,とか。で,わんこも現金なので,直接えさをくれる人を御主人様だと思ってしまうフシがあり,主近藤先生は近藤先生として恩のある人だという認識はありつつも,遊んだりおやつを与えてくれたりする土方の方に御主人様認識がシフトしつつある,と(ドラマのストーリーとはかなり異なる展開です,念のため)。


謎だ(謎なのは寧ろ俺の頭の中だ)。


いずれにしても,プラシーボ効果じゃなかったサブリミナル効果で画面の端々からそういう電波を受け取ってしまった大勢のフジョシ達がきっと今頃大変なことになっているに違いなく(←夏コミの追い込みで),斯く申すワタクシもいっときかなりヤヴァイ思考回路に足を踏み入れ掛けたが今ではどうやらすっかり立ち直った模様。当時はマイナ路線をひた走っているのではないかと思っていたがそうではなかったらしい(むしろ上位三傑ぐらいメジャかもしれない)ことは,喜ばしいような寂しいような(苦笑)


他にも色々小ネタは仕込まれているので(というか,個人の感想を読んでいると匂い立ってくるものが幾らかある)やはり今年の夏コミは気になりますな。もしや遂に有明でびゅぅ? でも人混みキライ。熱いし汗くさそうだし(化粧臭いとか香水臭いとかもあるかもしれない)酸素少なそうだ。有明には行ったことはないが人が多いとたいがいそうなので有明もそうじゃないかと思ってしまう。むぅ。(15:28)