ポニテですけどさ


まずは,挨拶なりていねいな回答なりをしてくれるK戸くんは,ほんとに真面目で律儀でいい人だな,と。反応を頂けるのは嬉しいものです。素でいい男だと思っているのはわたしが彼の表面しか見ていないからかしらん。どうでしょう。


ところでポニーテールなるもの,ほとんどしたことがない。ポニーテール姿で「おでかけ」したことは,1度もないかもしれない。先回コメント欄で「応用でも装備しない」と書いた後,今は髪が伸びたのでやろうと思えばできなくはないことに気づいたけれど,どうかなぁ。


リアルワールドでポニーテールにしている女性って,どれぐらい見たことあります?


わたしが「りぼん」愛読者だった頃の主要連載まんがの一つに水沢めぐみ氏の「ポニーテール白書」という作品がある。小学校低学年でりぼんも読み始めだったわたしはこの作品に多少影響を受けてしまい,髪を伸ばしたがった挙げ句ねだってリボンだけ2種類買ってもらったものだ。わたしが通っていた小学校ではプールの季節になると暗黙のルールとして短くしなければならなかったので,ポニーテールができる長さになるのはけっこう難しかったわけだけど。


その後中学校に進学してから23歳の2月までわたしの髪はずっと長かったがポニーテールにされることはなかった。中学校に上がった頃には件のまんがの連載も終わっていて既にポニーテールへの憧れは薄れていたわけだけど,中学校の校則の影響も大きかった。わたしが通った中学校は,生徒手帳にも明記されているれっきとした明文化された校則によって,肩につくより長い髪は二つに分けてくくらなければならなかった。


3年間来る日も来る日も毎日髪を真ん中から分けてくくりつづけていれば,髪は自然と真ん中でわかれるくせがつく。髪を洗っていてもぱかっとわかれるぐらいで,これを頭頂部で一つに束ねるのは難儀なことこの上ない。鏡も見ずに三つ編みおさげを2本作れるまでの技術を身につけながらどうしてわざわざ難しい頭頂部一本縛りに挑戦しようか。こうして子馬の尻尾とは縁遠くなる一方なのだ。高校に進学して髪型の規制はなくなったけれど,入学してしばらくは習慣で三つ編みお下げだったような気がする。そのころから世の中の長髪の主流はレイヤーだとかシャギーだとかになっていたので,わたしもそのうち美容院に通うようになり,シャギー髪は三つ編みには向かないので下ろしっぱなしになった。なんつってもそれが一番手がかからず楽なので。


そんな経緯を別にしても,実際問題ポニーテールにするのはかなりめんどくさい。不器用な人間や根気のない人間にはできない。そして,がんばってまで取り組もうと思える魅力には(女子にとっては/当人にとっては)乏しい髪型であるとも思う。これはどうやら男子にはわからないことらしいのでわざわざ書くのだけれど,ポニーテールって,綺麗に作るの難しいんだよ。かなまるに言ったら「一本縛りを下でくくるか上でくくるかの違いだけじゃないの?」とあっさり返されたので,「万有引力の法則と髪の流れに逆らって頭頂部で髪をひとまとまりに束ねて留めておくのは,かつそれを綺麗にするのはとても難しいのだ」とわざわざ説明してやったが今ひとつ腑に落ちていない風だった。あんたもいっとき髪が長かったんだからポニーテールにしてみればよかったんだ。そしたら大変だっつぅことがわかったろうに。


細かく言えば,髪の量が多い人はまとまりにくいし重量が増すために難度は上がる。また,髪質がつるつるさらさらすぎても崩れやすくなるので難度が上がる。あの髪型はたかが頭頂部一本縛りのくせして,ああ見えて櫛(それも一本歯で反対側はとがっているアレ)だのヘアピンだのヘアスプレーだのを駆使しなくては作れないのだ。しかも後ろ頭だから鏡を見ながらできないのでやりにくいし,頭頂部だからうだうだやっている内にそうとう腕がだるくなる。どうにかこうにか縛り倒して合わせ鏡にしてみたらどっかで髪がぼこっとなってたりしてさぁ。


そこまでする前に他の髪型がいくらでもあるだろうっつぅ話になるわけよ。もちろん髪の量や質が向いている人や体が柔らかい人や手先が器用な人や根気のある人は別だけど。


そうそう,それから,髪の長さも難しい。頭頂部に生えている髪はほぼそのままの長さで尻尾になるけれど,襟足は一度頭頂部まで持っていかれる。つまり襟足がそれだけ長くなければポニーテールにはできないのだが,扱いやすい長さまで伸ばすと今度は逆に「絵に描いたようなポニーテール」を飛び越えて「幕末の素浪人」の領域に突入しかねない。


ここまでが「難しい」の理由。その上で,(これは先日鯨を食べながら話していてかおりさんと意見が一致したのだが),ポニーテールは頭の形を選ぶ。わたしは後頭部が絶壁なので,絶望的にポニーテールが似合わない。ついでに言えば顔型も選ぶ。わたしのような下ぶくれがポニーテールにすると,たいそう悲惨な正面顔になる。これは髪型の責任ではないし本人の技能の問題でもないが,誰が似合わないと分かっているものを苦労してまでするか。


ポニーテール好きを表明する男性は,おそらくは「ポニーテールでさえあれば顔かたちはどうでもよし」という意味ではなく「ポニーテールが似合う女性が好き」なのだろう。本人がそれを自覚しているかどうかは別として。だって目の前にポニーテールが二人いたら,似合っている子の方がより素敵でしょう? となると,卵形の顔と頭をもち,髪は多すぎず少なすぎず髪質は細めで柔らかという,つまりはかなり素材がいい女の子を好む傾向にあるとも言えるわけですよ。


逆に言えば,審美眼を持っているっつぅことなのかしらね。まぁ,誰だって見た目かわいくないよりはかわいい方がいいし,ポニーテール好きの男子もそのような深い意図に基づいてポニーテールを好んでいるわけでもないだろうからそれはそれでいいんだけど,ポニーテールが似合う女子ってレベル高い気がするとだけ。そして,誰にでもできるものではないとだけ。