親が子の勉強を教えるなんて


ところで,先日職場の給湯室で,別の会社が主催していたらしい何かに来ていたと思われる方達が通信教育の話をしていた。コーヒーが落ちるのを待ちながら聞くともなしに聞いていたところ,小学生ぐらいのお子さんの話だったのかな,「家で机に向かう習慣を身につけさせたいと思って」とか「自分で進んで勉強できる子にはいいと思う」とか。


なるほどねー,と,思ったものだ。後者は(当たり前すぎるので)ともかく,前者については,モチベーションを上げる工夫がされている低学年教材にはそれなりの他にはない意義があるな,と。勉強は学校と塾だけ(家は宿題だけ)って割り切るのも一つの方法かとも思うけど,低学年のころって比較的暇だから,自宅にいる時間の一部を机に向かわせるための材料として手頃ではあるかも。


大きくなってからは,つまづいたときにその場でその子にあったアドバイスをしてくれて,かつ,組織的なバックアップも期待できるという点において,料金が高いのは承知で個別指導ありの塾が最強とは思うけれど,それは都会の話。地方の現実として塾がないっていうのは致し方ない。塾どころか学参の充実した大きな本屋でさえも近くにはない。だから,大きな本屋に参考書探しの旅に行く代わりと思えばやはり通信教材が手頃か。教材が想定しているレベルと本人のレベルが合っていないと役立ち度が低くなりそうだから(解説読んでわかんないと意味無いわけで。)中身の見極めは大切になってくるだろうけど。


しかしそもそも,小学校や中学校低学年のうちから親がこどもの勉強心配したり勉強みてやったりすること自体がちょっとびっくりではあるが。小学生が夜9時過ぎても塾にいるなんて,9時には寝ろとせっつかれていたわたしには信じられないけれど,9時過ぎの電車に塾の指定鞄持って平気で乗ってくるからな,今時のガキ。塾講師との三者面談もあるし,学校説明会も当然親が行くし,中学受験って親も大変(本人も大変)。話を聞く限りでは「ごく普通の子」が私立受験している地域もあるみたいで(つまり,どこでもいいから公立だけは避けたいと),時代も地域も違うという背景はあると頭で分かっていても,そんなめんどくさいとこには住みたくないとさえ思う。


あたしゃ親に勉強関連で何か言われたことなんて高校受験の志望校決める時まではなかったよ(それも結局好きにさせてもらった)。通知票にはんこおしてもらってたから学校の成績は知っていただろうけど夏休みの宿題出したかどうかとかは知らないでしょう(出してない)。親が勉強教えるっていっても親が習ったことと今のこどもとでは違うわけだし,中学校ぐらいになると難しくてどうせついていけないし(ついていけたらスゴイよなー。わたしは全教科ダメな自信がある),なんだかなあ。親は教師じゃないって。


なんちゅぅか。小次郎さんも書いてはるけど,いい大学に入ることは目的にはならないんだよ。そんな人生の早い時期の出来事に人生の目的を置いていたら,その後の長い人生ヌケガラで過ごすのか。一昔前ならいざ知らず,今時「いい大学」に入ったからって将来の安泰が約束されているわけではないし,そもそも「安泰って何」とか「安泰がいい人生なの?」とか,突っ込みだすときりがない。


でも,特にやりたいことが決まっていなければ所謂「いい大学に進学」が一番つぶしが利きやすいってのは今現在でも現実にあると思うので,だから今のこどもに対して「別に大学なんてどうでもいいから勉強なんてしなくていいよ」と言い切ることもできないけど。


ただ,なんとなく思うのは,無理して無理して他をすべて二の次にして,ただ大学進学のためだけに過ごすこども人生だとしたら,それはどこか不自然だということ。所謂「いい大学」に入ることは悪いことではないし実際メリットは計り知れないわけだが,人間適不適向き不向きはあるし大学には定員がある以上,入れない人は必ずいるからね。それに入れたとして,そのあとどうするかってのはいったいいつ考えるのかと。


それも本人が望んでやるならまだいいんだよ。だけど親が勝手に親の価値観でこども自身の選択の幅を狭めているとしたらそれは違う気がする。幼い頃から受験勉強しかしてなければ将来何になりたいかを考える材料も余裕も手に入らないだろうから,それはあまりいいことじゃないと思うんだが。だいいち,どんな方面(学部系統)に進みたいかさえも決められないでしょ?


しかしまぁ,そんな話をわたしがしたところで説得力に欠けるわけだが。勉強しないからってその分将来について想いを馳せるでもなく単にテレビで野球見たり漫画読んだり枝毛を切ったりのぐうたら生活を謳歌した挙げ句,大学に入ってもやりたいことなんてなんにもなくてだらだら遊ぶばかりの4年間を過ごし就職活動もろくにしなかったくせに履歴書の最終学歴のお陰で今のぬるま湯会社に潜り込んで使えない会社員にしてはいいお給金もらって都会で遊び暮らしているのが現実ですからねぇ。


いつも,こんなに恵まれていてこの先の人生いつか……って不安を抱えているんだけど。ほんとに,周期的に,ものすごい不安になる。


ただ,わたしもその辺がよくわかってないところがあって,高校入試より中学入試の方が簡単かもしれないし中学で一貫校に入れてしまえば高校受験はパスできるから,その分それこそ将来のことを考えたりいろいろ経験したりするような人生のゆとりを得られるというのが現実の姿かもしれん。それに,環境ってのはどうしようもなく大きいので,周りの友達の雰囲気とか先生の質とか,それだけで本人のパフォーマンスが全然違ってくる以上,やっぱり中学・高校の選択はばかにはできんよな。結局のところわたしが気にしているのはお金だけだ。と,そこへ行き着くのがさもしい。