「三国志」横山光輝
専攻が東洋史だからって三国志(三国演義)や水滸伝を読んだことがあるとは限らないわけで,この歳にして初めて漫画を読み始め,すっかりはまっております(過去に吉川英治の小説を手にとって桃園の誓いあたりで挫折した経験あり)。文庫版を借り続けて今14巻まで読んだ。30巻まであるそうな(単行本だと60巻)。そろそろ陣取り合戦は落ち着きつつあるものの物語の先は長い。
漫画だけに細かい描写が気になる。最初のうち力仕事の下働きをしていた男の人たちがもっぱら弁髪に上半身裸だったのだが今読んでいるあたりでは漢人になっているとか,そういうの。女性の服装とか住居とか。大部分は気づかないまま読んでいるんだろうけど,きっと何らかの根拠(資料)があってちょこちょこ変えていると思うので,興味深いところではあり。
ところで主人公が頻繁に「劉備玄徳」と呼ばれたり名乗ったりするのは,かつて田中芳樹が創竜伝の後書き(多分:ソースなし)で名と字を同時に呼ぶことはないとかなんとか書いてあったのが印象に残っている為にいちいちひっかかるのだが(日本名前の感覚でつい二文字ずつで区切ってしまうし),しかしそれを言い出したらキリは無かろう。名と字が同時云々以前に偉い人に対して面と向かってフルネーム+様で呼ぶのか? などと真面目に考え出すと論文が書ける(嘘)。
漫画は原則絵と台詞だけで話が進むので状況説明をフキダシの中が負っている。「あれは君の養子の関平じゃないか」by張飛 などと,養父であるところの関羽本人に対してわざわざ「君の養子」と説明を付加しなくてもわかるだろう(わからんような父はどうよ)。しかし読者は関平くんが誰かを忘れている。だから劉備玄徳も同じようなものなんだろうけど。