ちょっと思い出した(調べる気はないらしい)


京都にいるころ,するかん(「スルっとKANSAI」と総称される関西私鉄共通プリペイドカード)を当たり前のように使っていた。ただし,関西に移住してすぐにはなく,ちょうど在学中にできたんじゃかったろうか。


それから首都圏でパスネットが登場するまでにはかなり間があいている。パスネットができたとき,関西で学生していた仲間内では自然とするかんと比較したものだった。するかんは会社によってカードの名称が違うので,カードを買おうと思ったときに少し分かりづらいのが欠点だけど,対してパスネットは最初から「パスネット」という名前で統一したのでカードの浸透は早かったと思う。こうして書いていて気づいたが,「パスネット」のカードって,ひょっとして「Suica」のペンギンに名前がないのと同じく,カードの名前はないのかしら。


ただ,パスネットのカード裏面の表示方式があまりに分かりづらく頭が悪いというのが,関西に住んでいた仲間内での評価だった。あれは初乗り運賃を乗車時に引き落とすシステムだったからだが,そもそもその乗車時に初乗りを引くという発想がよくないという話。おかげで,20円とかの半端な金額が残ったパスネットカードというツカエナイヤツが頻繁に発生し,けっこう面倒だった。2枚重ねて通せばいいだけなんだけど(その為か,関西圏に比べて2枚同時OKゲートの普及スピードと普及率は格段だったかと),初乗り未満のカードでも入場できる関西に比べるとやはり不便には感じられた。だいたい乗るときは急いでいるもので,降りてからの方が余裕があるものなのだ。さくっと夏目さんで新たに1000円分買うならさほど時間はかからないが,少額しか持ち合わせがないときは,パスネット残額+現金で切符を購入する必要があったので,急いでいるときには余計に往生したものだった。あと,ぎりぎり初乗りに満たない120円なんてときは空しかった。1000円じゃ新宿3往復できないんだからもっと高額なのを買うようにすれば端数で困る回数もずっと減るのだが,1000円の次が3000円というのはよくなかった。


で,切符を買うのはカードを買うのに比べて釣り銭やらが面倒なので,手持ちのカードが初乗り未満の残額の時には通常は新しいカードを買って2枚差し精算していた。すると少額だったカードが0円になって改札から吐き出される。そして使用済みカードで定期入れがじゃんじゃん分厚くなる。これがなかなか捨てられない(回収箱に入れる機会は次のを買うときで,でも買うときには急いでいることが多い)。どうしようもなくなると燃えないゴミに突っ込む。あれも,関西だと,残高不足のときでも新カードを買ってから乗るのでなく精算口で現金精算することが多いから,その場で回収箱に入れて手元に残らなかったんだな,と,今にして思う。


PASMO定期に切り替えてパスネットを使わなくなってまだ半年ちょっと。そういった不便さの記憶や自分なりの習慣も感覚としては今も身に染み込んでいて,いつでもすぐにそのころの生活に戻れる気がする。


それなのに,もう戻りたくても戻れない。首都圏交通から磁気カードが消えた。「昨日で終わったよ」と言われてもすぐにはぴんと来なかったのだが,二度と首都圏の鉄道でパスネットを使うことはないという事実が徐々にじわじわときて,そうすると急に寂しくなってきた。1枚ぐらい電車の顔が並んでいるカードでも残しておけば良かったと思うが,(まだ確認はしていないが)おそらく全部捨ててしまっているだろうなあ。こっちから疎遠になった相手なのに,いざもう会えなくなるとなるととたんに未練がましくなってしまうのは身勝手でかっこわるいことである。


パスネットの不便さと磁気カードの(結果的な)乱発を招いていた初乗り運賃の引き落としだが,PASMOの登場(Suicaとの相互利用)の開始と同時に首都圏鉄道でも初乗りの引き落としをしなくなった。今できるなら,どうしてあのときできなかったのか。パスネットよりも早く導入された(と記憶している)関西私鉄のするかんがなくなる気配が今のところないのは別にパスネットのその不便さがないからではなくて,PiTaPaの存在とか,ICOCASuicaの相互利用問題とか,PiTaPaICOCAのそれとか,いろいろあるからだろうとは思うが,なんとなく皮肉なものである。磁気カードを使いたければ関西に行け,と。11月に大阪に行ったときにもするかんを使った。なので寂しがることはない。磁気カードといえば,ふつうの切符や一日乗車券は磁気カードだから読み取り機はそのままだよね。じゃあなんでパスネットやめるんだ?


PASMOPASMOで,非接触ICカードだからではなくSuicaとの相互乗り入れ(だけど2枚同時には使えない)やらの絡みでややこしい乗り換えなど場合によってはパスネットSuicaの方が便利なこともあった。でも,もはやそういう使い方もできなくなったんだね。


感触レベルで,私鉄は常に関東より関西の方がリードしていると思うのだが(最初に感じたのは切符のシステムでなく,列車の案内や掲示のわかりやすさの方で,東京に出てきた当時,どこから先なら目的地が各停でも特急からどこぞの駅で各停に乗り継いだ方が早いよとかこの時間帯なら乗り継ぎがないから最初から各停だよとかの情報が首都圏私鉄ではほとんど満足には与えられていない事実に驚愕した)関西私鉄連合には現状PASMOに相当するものがない。だんだんシステムがややこしくなっているので,この先どうなることやらという感じ。大人はPiTaPaが便利そうだけど,PASMOSuica(誰でもすぐ買えるプリペイド)とは根本的に異なる。いずれは非接触ICカードを出すのか,それともICOCAにしてしまうのか。それはそれでPASMOの各会社のクレカと結託したオートチャージのシステムも,よくわかるようなわからないようなではあり,やはりPiTaPaのほうがスマートかなとはおもい。