新春浅草歌舞伎「傾城反魂香」「弁天娘女男白浪」


どうやら風邪をひいたようです。土曜日あんなに早くに寝たのに,なかなか体を起こせない。喉が痛い,ほんのり寒い。頭も痛い。風邪引きフラグ立ちまくり。


チケ代1500円だったしパスしてもいいかなあなどと弱気になりながらも,どうにか重い体を引きずって,時間ぎりぎりに家を出た次第であります。これで咳洟嚔の類が出ていれば近所迷惑にもなるから自粛が優勢だったんだけれども。


ほんで,チケットぴあの引き取り方法が変わっているというのでメールで届いていた9桁の予約番号を必死で暗記。駅へ向かう道すがら,もしやメールにはなかったがIDとパスワード(とデジポケ番号)が必要だったらどうするんだと不安になる。でも家に戻っている時間はない。これでファミマで試してみて無理だったらタクシーで家に帰るべぇと(チケ代よりタク代の方が高くなるのに)とりあえず駅前のファミマに着いたら,ファミポートで「ぴあ」が選べない。なんでやねん。店員に訊きたくても妙にレジ混雑。ぎゃーす。


うへぁ。しかし致し方ないので再びとりあえず,着た電車に乗ってみた。浅草まで東京をずばっと横断。電車の中でぴあサイトに接続したりファミマの店舗検索をしたりで,どうやらチケットを手に入れられそうとわかり一安心。普通は前日までに発券して手元に用意しておくものだと思いますが。


前振りが矢鱈長くなっていますけれども,ともあれ浅草駅に着いてファミマ雷門前店で無事チケットを発券し,ついでにルル風邪内服液(高いやつ)と野菜生活100のゼリータイプのと昼ご飯に鶏五目と温かいお茶を買って浅草公会堂へ。雷門前は朝の11時前というのにめったやたらに人が多かった。みんな冬の朝っぱらから元気だなあ。


野菜生活あたりが余計だったと気づいたのは建物に入ったあとのこと。イヤホンガイドを借りようと財布を開けたら,1650円がない。したらば今回はイヤホンガイドは諦めようとプログラム売り場の前で驚愕。1500円もしやがんの。小銭をどれだけ数えても,30円足りませんでした。あああああ。


顔を見ただけで全員の役者が判別できるわけでなし(屋号も覚えてないから大向こう聞いてもわからんし),イヤホンガイド頼みだったからあらすじを把握しているでなし。暖房の効いた室内でおいらは風邪っぴき,舞台は遠いし客席は暗い。「傾城反魂香(吃又)」は世話物の静かめな義太夫狂言で,浄瑠璃あんまり聞き取れないし三味線のべべべんは心地いいしで,舞台が整いすぎ。途中誘われるまま落ちてました。ああ気持ちよかった。……悔しい。


勘太郎(又平)がコミカルだったんだけどあれはコミカルな役でいいの? 世話女房っぷりが板につきすぎている亀治郎(おとく)とすっかり夫婦漫才。だからこそ自害しようとするくだりでギャップに背筋が薄ら寒くなる仕様なのかもしれないけどうとうとしてたので如何とも。いずれにしても,勘太郎亀治郎なかなか楽しかった。亀ちゃんのあの早口なせりふ回しと忙しない手の動きがすげー好きだ。


白浪五人男は歌舞伎を知らなくてもそのタイトルと「知らざァ言って聞かせやしょう」は誰でも知ってる超有名お芝居で,とはいえなかなか機会もなさそうだったので,今回楽しみにしていた。そもそもこれをやるっていうから見ることにしたようなものだし,重い体を引きずって浅草くんだりまで出かけたのも七之助菊之助見たさ。弁天小僧菊之助七之助,相方の南郷力丸に獅童。以前図書館で借りて読んでいた本でだいたい筋もわかっているし,そもそも筋も何もあったものじゃないというかなんというか。何も考えずに見て楽しみ,聞いて楽しむ。以上。七五調のせりふは耳で聞くとリズムが良くて文字で見るよりおもしろい。あまり意味もないのがわかってるからさらっと聞ける。七之助の黒振袖姿がかわいい。如何せん線が細いので,女装を解いてもしゃらくさい田舎の不良少年が悪ぶってつっぱってるだけにしかみえず,それがたいそうほほえましかった。七は七でかわいかったけど,本家音羽屋の親父様の弁天小僧や現菊之助の弁天小僧も見てみたい。


ところで,新春浅草歌舞伎は初めてだったんだが,なんというか歌舞伎座あたりの通常月の本公演とはちょっと雰囲気が違っていて興味深かった。開演前の舞台挨拶ありカーテンコールでの主要キャスト全員挨拶あり(カーテンコールは千秋楽だったからかもしれん)で,客席巻き込んだトークもたくさん。それに客層もほんのり違っていて,開演前挨拶で獅童が「二回目以上の人」と言ったらほとんど手が挙がっただけのことはあって,若い役者を応援してやろうとパトロネスの気持ちで観ているおばさまか,役者の年相応に若いお嬢さんか,という感じで,通い詰めているんだろう。若いお嬢さんのカジュアル路線着物姿が目立った気がするし,一方で三階席でも訪問着が散見されたのは千秋楽仕様かしら。違うと言えば,届いているお花もテレビ番組やら歌舞伎役者じゃない俳優さんやらが多くて,新鮮だった。


1月これで四座千秋楽を迎えたと思うんだけど,結局国立1度しか見られなかった。遠いんだもの。高いんだもの。しかし二度はかかるまいと考えるにつけ残念なことであった。松緑の孔雀三郎かっこよかったのに(なんだかんだで孔雀三郎の暫と公卿のふざけた隈の阿呆面以外は忘れてしまった)。次に菊之助を歌舞伎の舞台で見られるのはいつになることやら。5月團菊祭出ずにシアターコクーンで蜷川とかもうね。


お芝居の後は浅草寺にお参りして,仲見世通りを雷門までてろてろ散歩。なんでもないただの(風が寒い)日曜日なのに人多すぎ。でも浅草って楽しい。久しぶりに行ったけれど,雷門は威風堂々,松下幸之助寄贈の提灯はとにかくでっかい。仲見世通りはごみごみキッチュで,通り抜けた浅草寺の境内は広々,五重塔の宝輪がとってもじゃぱにーずてんぷる。めちゃめちゃ観光地でめちゃめちゃ軽薄でめちゃめちゃ胡散臭いのに,歴史があるからか空々しさや作り物めいた感じがなくて,どっしり構えて地域に根付いている安心感がある。日本人でも外国人でも,東京にお上りさん観光に来たら浅草寺に足を運んで損はない。チープ極まりないおみやげ物を冷やかしたりせんべいだの買い食いしたり,そうかと思えばしれっと高い珊瑚細工や鼈甲細工がへろっと売られている(けれど店構えが店構えだけにどっかしら胡散臭い),浅草以外のどこでお目にかかれるのかというような安い和装小物店やらお祭り衣装店やら,なんともカオスな小旅行。


で,パンフレットは事後通販可能なのでせうか。