THE PENINSULA BANGKOK


ペニンシュラといえば香港のそれが有名ですが,バンコクペニンシュラもなかなかのもの。チャオプラヤの右岸,トンブリー地区の川っぺり。中心街のサイアムから少し離れている分,町歩きの便にはやや劣るものの,対岸にバンコク中心部を臨む全室リバービューが売りのホテルの高層階からの眺望はたいそう気分の良いものでした。交通の便も,ホテルの渡し船が10分に一本ぐらい出ていて,対岸に渡ればBTSの駅がすぐなので,悪くはない。時刻表がなくて来たら乗るBTSは5〜7分間隔。乗ればサイアムまで約15分。BTSにはたくさん乗った。


お宿代は下から2番目ぐらいのグレードの部屋を3泊+半日レイトチェックアウト(の割増料金で夜9時半の出発まで使わせてもらった)で10万円を超えたので,かなり贅沢かつ奮発はしたものだけれど,日本で同じクラスの部屋に泊まるときっともっと高い。その程度の部屋でも広いバスタブに浸かりながらテレビが見られるし,洗面台も2つあるし,独立シャワーブースの使い勝手もよいし,せせこましいながらも充実したクローゼットと化粧台もあって,ふかふか掛け布団にさらさらリネンにゆったりソファにフルーツ(みかんがおいしい)にクッキーにインターネット無料接続とかなり快適。日本語の新聞が届けられることやNHKが入ることなども気楽で,日曜の昼に部屋でパソコン片手にだらだらとラグビー日本選手権の決勝戦を生で見ていると,窓の外の風景を除けばいったいどのへんが異国なのかさっぱりわからないぐらいだった(ちなみにテレビはSONYの旧式ブラウン管)。アフタヌーンティーセットのサービス券がついていたので,土曜の午後,午餐会と二次会の合間にはロビーの喫茶店で生演奏聴きながらハイティーなぞという気取った真似もしてみた。880バーツ(!)のアフタヌーンティーセット。聞くところによると川べりでの朝食ブッフェが「がんばって早起きする価値はある(byかめさん)」ぐらい素敵なのだそうだが,朝に弱いので3日とも食べられず仕舞いだった。


午餐会の豪華中華料理におけるスタッフのとりわけ方がどこまでもテキトーで,一流ホテルでこんなもんとはさすが魅惑のタイランドと日本人感覚で感心しきりだった,そんな日本人ゲストのためにペニンシュラの素敵なところをアピールしつづけている次第です。(中華なので,取り分けた残りの大皿は円卓中央の回転台に置かれるわけで,最初にスタッフが取り分けた1皿の分量がまちまちだからって困りはしないんですのよ,念のため)。ここまでが前振り。


さて我々はワタクシの職場へのお土産品として部屋においてあったクッキーを買って帰ろうと思いたちましたと。朝寝坊のくせにおなかが空くと機嫌が急降下してだだをこねまくるワタクシの朝ご飯として3日間活躍してくれたホテルメイドと思われるチョコチップとナッツの入ったさくさくしっとりクッキーで,おみやげをどうしようという話をしていたところ,かなまるが「このクッキーでいんじゃない?」って。ところが,例によって横着な性格なのですぐに行動に移さず,最終日の夜8時過ぎに外出先からホテルに戻ったときにはホテルグッズを取り扱っているショップは既に閉まっていた。それならそれで諦めて空港で何か買おうかなどと言っていたのだけれど,チェックアウトの寸前にかなまるが「コンシェルジュで訊いてみたら?」。一流のホテルならコンシェルジュで用意してくれるだろう,客の要望に応えないわけがない,と。


ワタクシは英語は話しませんので,チェックアウトが終わった後(空港まで運んでくれるお迎えの車が来るまで10分ほどしかなかったにもかかわらず)かなまるに訊いてもらったら,デスクのお兄さんがどこかに電話をして,なんと今から店を開けるという。夜9時を軽く回り,少なくとも閉店後1時間以上が経過していたのに,開きました。ほんとうに。どこからともなく颯爽と現れたコンシェルジュのおねえさんに案内されてついていくと,お店に電気が付いてスタッフのおねえさんが1人ぽつねんとそこにいる。ドアも手動。そしてスタッフのおねえさんは大きい瓶に入ってバラで売られていたクッキーをホテルの名前入りの空き缶に詰め始めてくれた(缶詰セットがあったわけではなかったらしい)。そこまでていねいに対応してもらっていながら,コンシェルジュのおねえさんは,店頭のクッキーが部屋に置かれているものとは種類が違うことに気づき,「同じ物が良いわよね」と(英語で)我々に確認してすぐさまスタッフ用のドアから裏手に消えた。クッキーは缶から瓶に戻される。なんとまあ。店頭のクッキーもどれもおいしそうだったので,無理に「the same one」でなくてもいいのにと心苦しく(動員された店のおねえさんを気の毒に)思いながら待っていると,程なくしてコンシェルジュのおねえさんが缶を抱えて戻ってきた。蓋を開けて中を確認。部屋用のストックから持ってきたんだろうが神業。ホテルの支払いも終わっていたしバーツも残っていたのでその場でキャッシュで精算。行って帰ってジャスト10分。


クッキーにしてはそれなりにけっこうなお値段がついていたけれど,そうはいってもたかだかクッキー2缶計720バーツごときのために営業時間外に店が開くとは。キャッシャー締めた後って面倒だろうになあ。しみじみ。開けさせた張本人が言うことではないかもしれんが,「残念ながら本日は既に閉店しておりましてご用意いたしかねます」の一言ではねつけても構わないところを大したものだと舌を巻いた。そして対応してくれたコンシェルジュのおねえさんは終始笑顔(にやにや,かも)。あくまで英語は話さないワタクシにかわって,かなまるが「このクッキーはとてもおいしい」というようなことを伝えると,おねえさんはさらに破顔一笑してくだすった。


お世話になりました。