間取り(戸建て)


産経新聞は購読していないが,このところ律儀に「リビング東京西」がポスティングされている。ひごろは心のゆとりがなくてなかなか読めないんだけど,今日は珍しく昼間に予定がないだらだらした土曜日で,天気も気温もいいので家でごろごろしながら読んでいる。


その中に折り込みで某大手ハウスメーカの注文住宅の大きなチラシが入っていて,そこに何種類かの間取りプランが。一戸建ての間取りに大興奮。しょっちゅう入ってくる分譲マンションのチラシも嫌いじゃないけど,どうしても標準的な間取りばかりであまりおもしろみがない。戸建ての方が夢が広がる。


間取りだけ見ていると「これじゃ狭いよ」とか「ここはもうちょっと」とか思うんだけど,実際には諸々の制約の中でつくるわけだから,夢物語ばかりは言ってられませんわな。しかし土地代を別にすると家って案外安く建てられるのかしら。延べ床面積100平米前後のプランで,このへんにチラシが入ってくる新築分譲マンションの3分の1〜2分の1ぐらいの値段。坪単価も40〜50万円ぐらいなので,建物探訪に出てくる家の坪単価の異常さがよく分かるというべきか,注文住宅という名のアレなのか(ブライダル産業のごとく実際にはオプションまみれになる,とか),そのへんは判断が付きかねるが。


でもまあ(建物探訪のごときデザイナさんや設計士さん付きの家は別として)一戸建てが高いのは土地代なんだろう。マンションも土地も店子で分割しているはずだし。同じくこのへんにチラシが入ってくる戸建の分譲物件は,それぐらいの広さの建売で平気で7000万円とかつけてくる。駅まで徒歩10分はあるぞあそこ。結局なかなか売れなくて1000万円ぐらい値が下がってようやく買い手が付いたようでしたが(下げ幅も尋常でない。キュウリが1本98円なら買うけど130円だと高いからやめようと思う感覚を鼻で笑うかのような)。


どうせ戸建てなら,できあがったものを買うよりも,自分の生活スタイルや人生設計や好みに応じてカスタマイズしたおうちにしたいと思うんだがなあ。その点で,建売の戸建てって(たいていはマンションよりもさらに高いだけに)売る側の狙いがあまりよくわからないんだけど,そうは言っても実際に間取りから各種部品からを全て自分で最終決定を下しながら建てるとなると,決めなければならないことの物量が甚大すぎて,根性が足りなくなって途中でへたれる気がする。選択肢があるうちはああでもないこうでもないと悩んでしまうものだが,いざ1つの家が建ってそこに住んでしまえば,ドアノブの茶色具合がちょっと違っていたぐらいで生活に大差が出るとは思えない。それに,カスタマイズ設計して最初から逐一決めていったとしても,どこかで妥協することも失敗することもあるだろう(完成品が見えない中で決めていくことでもあるし)。それだったら,ある程度割り切ってすぱっと建売とかモデルハウス(?)とかをそのまんま買った方が精神的疲弊(と自分自身の時間単価)の分,得をしているとも考えられる。(そういう考えを以てしてなのか,かなまる両親はある日突然家を買ったそうな。玄関の壮大な吹き抜けに見本の面影が)。


家を建てるのと結婚披露宴を挙げるのって桁は1つ違うけれど,似ている部分があるような。カスタムして細かい部分まで希望通りにしたい気持ちは強いけれどカスタムは大変で結果としてはパッケージものと大差ないところとか。未だに豪華披露宴に憧れているのでたまにそういう話を(もちろん冗談で)するのだが,その度に,自分にはもう一回する気力はない,と言われる。わたしも口でならどうとでも言えるが,豪華披露宴などもう一度でなくても(つまり初回でも)とうてい無理。小規模でそれもほとんどパッケージされた商品を買ったが,それでもそれなりに決めることは多かった。豪華披露宴規模になると(しかもそれをカスタマイズするとなると)どれだけ決定・手配のパワーがかかるんだろう(招待してくださった皆様本当にありがとうございます)。そして,その程度の小さな選択・決定しかなかったにもかかわらず当日蓋を開けてもといドアが開いて一番に目に入ったものがア○ヒスーパード○イの銀色のラベルだった衝撃は生涯消えないと思うので(未だにしつこくしつこくしつこく根に持っている),選択・決定の物量が大きくなれば成る程,そういう小さな行き違いだとかが積み重なり,その分不満やらも増大するのかと思うと,おいそれと家なんて建てられない。たとえば前述のドアノブだって,この家はベージュのドアノブですベージュのドアノブしかありません,と言われてベージュのドアノブなんだったら「このドアノブ手垢が目立つよね」と小さな不平をこぼしながらも諦めて掃除に励む(か汚れたまま使う)だけで済むが,濃い茶のドアノブを選べたのにベージュを選んでいたのなら「あのときどうしてわたしは濃い茶にしなかったんだろう」とドアノブを見る度に当時の決定を悔やんで辛い気持ちになるだろう。まして濃い茶で注文したはずだったのに内覧したらベージュのドアノブがついていた日には発狂しかねない。さすがにア○ヒスーパード○イでは発狂しませんでしたが(でも内覧会じゃなくて本番なんだぜ。しかしあれは直前に再確認と念押しをしなかった自分の落ち度だったと思うことにしている。そして,酒飲みでない人間なので直前の念押しができなかったのも仕方ないでしょうと自分で自分を慰めている),人の執念とは恐ろしい。ビールは一例であって,ビール以外にも後悔していることがいくつかある(それらは約束違いの事例ではなくて,純粋に自分の判断やら伝達やらのミス)。


家の間取りの話がとんでもない方向にいってしまった。そして土曜の午後にうっとうしいことばかり書いているからか,さっきまで青空が見えていた空がいつのまにやらすっかり曇ってしまった。要はチラシの6パターンの参考プランを見たり,キッチンまわりを見たりして,あれこれ妄想を繰り広げて楽しんでいたという話。戸建なら和室がほしいとか,収納はたくさん欲しいけど,収納部屋だけにきれいに納めて満足できる人間じゃないから居室に収納をつくれる状態がいいとか。かなまると一緒に住むなら彼の引きこもりスペースは必要だろうし本人は納戸サイズで充分と言うが万一の地震の際に本棚から降ってきた本で頭の角を打つ(とか倒れてきた本棚に行く手を阻まれる)のはわたしが切ないのであんまりなところに押し込めておくのはあんまりだとか。一方わたしに専用の個室がいるかというと,どうせ家全体が俺のスペースぐらいの勢いになるに決まっているので,案外不要ではないかと近頃考えを改めている。