腐ってないカレシにBL世界を軽く紹介するための10本[れびゅう4]


リストはid:cana:20080811#p1

幼馴染み/吉原理恵子角川ルビー文庫


小説 一人称/受視点(だったと思う……) 難易度:★★


幼馴染みの高校生同士を描いた作品。これはシリーズでなく単発。


何年も読み返していないので実は細部はほとんど覚えていない。個人的に初めて買ったルビー文庫作品でかなり衝撃を受けたので挙げてみた。当時のルビー文庫のカバーイラストが東城和実なんですよ。学ランの前がはだけて白いワイシャツなんですよ。当然黒髪短髪ですよ。それだけでご飯三杯。(イラストだけじゃないんですけども,勿論)。文庫はおそらく絶版だろうけれど,この度調べてみたところ,2004年に文庫未収録の短編や書き下ろしも加わった単行本が出ているようです(勿論イラストレータは違います)。今でも手にはいるかどうかは不明。


発表年代としてはかなり古い作品のようで(もちろん1993年のルビー文庫創刊よりもずっと前),描かれているのは後のBLの王道となる人間関係でありつつも,作品全体からそこはかとなくJUNE的な耽美さもほんのり漂っていたように思うのはちょっと記憶を美化してるかもな。少なくとも吉原理恵子で耽美なら他にもっとこってりした代表作がたくさんあるので,この作品では語らない。


というわけで余所様のレビューも参考に記憶を掘りおこすと,主人公は強気な性格の(当然ノンケの)男子高校生で,ある日幼馴染に再会すると。その幼馴染みは子どもの頃は気弱で体格も貧弱だったのに突然大人びていて主人公に迫る。とにかく強引に詭弁を弄しつつ実力行使しつつ主人公を押しまくって,主人公もなんだかんだで流されてしまうという,そんな感じ。幼馴染み・天然系ヤンチャ系の受・屁理屈Sっ気の攻・幼少期の関係からの下剋上萌え要素満載。そしてこれもBLの王道。そしてそんなにエロいことはしてないのに描写はけっこうエロかった記憶。

(蛇足)男子高校生×男子高校生


高校生がキャラの作品ってその後さっぱり触手が動かなくなったけど,読者自身が中高生の場合は身近な感じがして好きなのかもなあ。「身近な感じ」というのはけして自分の周りに実在する男子でどうこうっていう身近さじゃなくて,生活環境としての舞台設定や場面設定,あとは,年齢なりの悩みとか,性体験はその相手とが初めてだったりといった,性別に関係ない部分で。


若い頃は,高校生モノにありがちな(それ以外の設定でもしばしば見られる),カップルのどちらもがもとからの(自覚的な)同性愛者ではないっていうパターンがものすごく理想的に見えた。その後すれてきて「ノンケ同士のカプなんてあり得ないじゃん」とすっかり斜に構えるようになってしまったけど,あれですよ,究極の殺し文句。「お前が男だろうが女だろうが,そんなのは問題じゃない。お前だから好きなんだ」。


腐りかけた女子はこういうのを読んで半ば本気にしちゃうわけですが,普通に考えてどうなんでしょうね。そこで展開されている恋愛模様が,初恋(幼少期の恋心とは異なる,肉体的欲求を伴う恋情という意味での初恋)であるとすれば,それまでが自覚的な同性愛者でなくても成立はしますわな。という発想が既にフジョシ思考による世の中のねじ曲げなんだろうけど。いずれにしても,BL界に住む男子高校生達は,思春期(かつその手のことに興味を覚える時期)にうっかり,男だからじゃなくてお前だからと言いながら手近な男に惚れてしまい,その初恋が終わった後,次の恋も何故か同性に惚れてしまって,それを繰り返していくうちに自分の性向を自覚し,いつしか立派な「BL界に住む自覚的同性愛者の攻リーマン」に成長していくんだろうか。成る程。