腐ってないカレシにBL世界を軽く紹介するための10本[れびゅう10]


リストはid:cana:20080811#p1

EDEN/定広美香&秋野こよみ/青磁ビブロスBE×BOY COMICS


漫画 難易度:★(はんぶん)


全3巻(たぶん)。ツンデレツンデレツンデレ


同い年の叔父(強いて言えばたぶん受)と甥(たぶん攻)。たしか10代だったはず。受はしたたかで年齢に見合わぬ老獪さを見せる頭脳派,攻は直情径行の単純馬鹿。


受は,攻母の年の離れた弟。攻母の実家は格式のある旧家だが,攻母は若い頃に駆け落ちして実家を出たため,攻と受は一度も顔を合わせたことがなかった。姉弟の親(当主)が亡くなり,受は若くして旧家の当主になる。ところが,旧家の内実は台所が火の車。そこで,金銭的に傾きかけた状況を打破すべく,売れないミュージシャンの卵だかの甥をだまくらかして非合法に一儲けしようと企んだのが事の発端。


値打ちの絵画等々を追いかけて,2人でアメリカから香港まで珍道中,香港マフィアも巻き込んで,派手にどんぱちを繰り広げる。カーチェイスあり発砲ありと,ハリウッド映画系(違)の痛快な筋立てになっている。


受がピンチに立たされて女装(チャイナドレス)したり,怪しい薬を飲まされて,目をとろんとさせて色仕掛けしてきたりと,お色気(なのか?)シーンが織り込まれ,そうこうしているうちに攻が受にほんのり惚れてしまうという展開。でも受は完全拒否。


基本は非現実的な設定の馬鹿話コメディ,主役2人も喧嘩ばかりしている。でも,2人とも天涯孤独に近い身の上で,強がりながら生きているけれどほんとうはひとりぼっちが寂しい10代の少年。それぞれの孤独や弱さ,血の繋がった人間へ想いやらが,明るい馬鹿話の中に時折顔を出す。3巻あたりが泣かせどころ。受は,当時そんな用語はなかったけれど,一種のツンデレ


歴史と伝統の正統派BL出版社からBLコミックとして出ていて一瞬びびるんだけど,エロ描写もないし,コメディだし,恋愛感情よりも「家族が欲しい」気持ちに近くて(感情が理解しやすく),BL入門者に好適品。トータルでコンパクトにバランス良くまとまった作品だと思う。


というふうな話だった,はず。実家に置きっぱなしで手元にないし,ぐぐっても内容がわかるようなページがまったくひっかからないので,100%記憶で書いてます。


ぐぐったところで出てこないのも道理,記憶によれば,コミックスが出たのが1992年ごろ。絶版なのは当然として,作者もその後ピンで活動するようになり,挙げ句に出版社もなくなった今となっては,最早古本市場でしか入手できないだろう。こういうことが起こるから,一度買った本は絶対に手放せない。


10本目だからといって特別な何かはないんだけど,この作品は,自分が初めて読んだBLレーベルの出版物だ。(それ以外だと「絶愛」が既読,あと,別コミ秋里和国が「THE B.B.B」が連載中だったと思う)。田舎の中学生だった当時,学校の同級生(女子)間で漫画の回覧が盛んで,「スラムダンク」も「THE B.B.B」も「花とゆめ」系(「サイファ」&「アレキサンドライト」,「ぼくの地球を守って」等),マーガレットコミックス(いくえみ綾とか)も,どれも借りて読んだ。漫画だけじゃなくて,CDも音楽雑誌も,たくさん回覧されていた。(今にして思えば借りてばかりだった。うー)。この作品も最初はその一環でクラスメイトから借りて読んだもので,そこではまってしまって,後日自分で買い直した。踏み入れてはいけない世界へ足を踏み入れた第一歩。


10日間お付き合いいただき,ありがとうございました。