歌舞伎鑑賞強化月間総括


9月末から11月アタマにかけて立て続け。もともと年1本を目標にしていたので,一気に5年分ぐらい消費(笑)。そもそも今年は1月に国立劇場と浅草公会堂に行ったので,あわせると7年分ぐらい。別名通し狂言強化月間。

@9月新橋演舞場夜の部 加賀見山旧錦絵/色彩間苅豆・かさね


加賀見山が通し。中老尾上を時蔵,局岩藤を海老蔵海老蔵の岩藤が無駄に別嬪。召使いお初(亀治郎)の衣裳が,前半は黄八丈後半青色の矢絣。いずれも無地の黒繻子の帯を立て矢に結んでいて,たいそう素敵。青の矢絣は翌月菊之助が着ていたので,どうやら典型的なこしらえらしい。才気煥発でキュート。


かさねは,亀と海老が踊っていたらしいがもう忘れた。

@10月歌舞伎座昼の部 恋女房染分手綱・重の井/奴道成寺/魚屋宗五郎/藤娘


重の井は大遅刻して「いやじゃ」姫と三吉が遊んでいるパートがぜんぜん見られなかったという。あう。重の井は福助。仕事大事で家庭を犠牲にせざるを得ないサラリーマンの哀しみその1。


道成寺松緑


魚屋宗五郎。菊五郎の宗五郎に玉三郎のおはま。菊之助のおなぎちゃんがかわいかった(なんでもかわいい)。三吉が河原崎権十郎,磯部主計之助に松緑。あとは省略。有名な世話物狂言を見ておこうという目的で。この手の話って,いつも最後は強引にメデタシメデタシで幕,となるんだけど「ちょっと待て,全然解決してへんやん」と思います。エライ人に「ごめんなさい」言われてお金もらったらそれで解決するかというとしないでしょう。死んだ人は戻ってこないからせめて詫びとお金でももらうしか他にないとは言え,けしてハッピーエンドとは言えないなあと。庶民の力のなさとか虚しさとか侘びしさを感じてしまいます,ええ。


藤娘は芝翫丈。

@10月歌舞伎座夜の部 本朝廿四孝・十種香・狐火/雪暮夜入谷畦道・直侍/英執着獅子


「なまたまの会」。八重垣姫@玉三郎,勝頼を菊之助,濡衣を福助,謙信が團蔵さん。狐さん(右近)がかわいかった。狐火ってそんな色? とはちょっと疑問。


直侍。直次郎が菊五郎,三千歳が菊之助。暗闇の丑松を團蔵,寮番喜兵衛を家橘。蕎麦おいしそう。蕎麦屋に於ける田之助の丈賀の常連客っぷりがとってもナチュラル。こういうおじいさんいる。菊ちゃんに色気が欲しいようなでもあんまり色気があると見てる方が恥ずかしいような。


三千歳は今で言うところの地雷女。もとはと言えば直次郎が悪いとは思うんだけど。芸妓に入れあげすぎるのがアレなのは常識として,客に入れあげ過ぎるのもアレだと思うのよ。悪い人なんだしあまりアテにしない方が。だいたい,何でも良いけど仕事はしよう。仮病は良くない。


英執着獅子は福助丈。例によって覚えてません。あう。

@11月新橋演舞場昼の部 伊勢音頭恋寝刃/吉野山


以前油屋と奥庭は見たかもしれない(うろ覚え)けど,通しでかかるのはたぶん珍しい。


今田万次郎に門之助,奴林平が獅童。福岡貢が海老蔵,油屋の仲居万野に上村吉弥。お紺が笑三郎,お岸宗之助,お鹿猿弥,料理人喜助に愛之助。藤波左膳右之助。


蓋を開けてみると,前半(油屋の前)までと後半で話が全然違う。どころか,貢のキャラクタ造形も違う(前段はしっかりした頼もしい人に思えたのに油屋以降は遊女に夢中な上に各方面からやり込められて逆ギレしてしまうダメな感じ)。話の筋が今ひとつわかっていなかったので通しで見られたのは良かったけれど,話の背景さえ分かっていれば通しにする必然性は薄いかも。


海老蔵は何してても顔だけはえらく格好いいので,それだけで結構です。門之助の今田万次郎のどこまでもダメな若様ぶりが素晴らしくダメだった。あと,万野(吉弥)がめちゃめちゃ憎たらしくてヤな人だった。貢タンかわいそう。


奥庭の場は血まみれにはなっていましたが,人間なので首ちょんぱはなく。


吉野山松緑菊之助に速見藤太が亀三郎,だったんだけど,そもそも昼の部の自分のコンディションが今ひとつであまり楽しめなかった。無念。

@11月演舞場夜の部 伽羅先代萩/龍虎


仕事大事で家庭を顧みられない(?)哀しみその2。乳人政岡を菊之助が初役。仁木弾正を海老蔵。八汐が愛之助,あといろいろいるので配役省略。子役大活躍のお芝居で,とくに千松役はセリフも多いし義太夫にあわせたフリもあるので,大役。長台詞のあとには客席から拍手が。子役への拍手が一番大きかった気がする今日の演舞場。


亀三郎がかっこいい。序幕の足利頼兼もええとこ坊で素敵だったし,後半の渡辺民部の勇敢で正義感があって父親想いの好青年が超かっこいい。声が素敵だ。


後半「対決」以降の場面は萌えポインツが多かった。前半(政岡のターン)は色々と重い。女ばっかり出てきてどろどろしたまま後味悪く終わるのと,男ばっかり出てきて,あれこれありながらも最後は分かりやすく勧善懲悪なのと,差がはっきりしすぎ。ただ,前半と後半で感じが違うという点は伊勢音頭(略)と同じなんだけど,こっちの方が,ただ乖離しているだけでなく,それぞれに見所があって,バリエーション豊富で話そのものが面白かった気がする。見ている側のコンディションの問題かもしれませんが。


仁木弾正は格好いい悪い人らしい。そんな感じで,海老蔵の外見は外見だけで以下略。福岡貢もそうだけど,仁左衛門の仁木弾正を見てみたいと思いました(貢は見たことある)。そんな感じ。


龍虎は愛之助(龍)と獅童(虎)。龍と虎がいちゃいちゃしててかわいかった。以上。


11月の演舞場は久しぶりにイヤホンガイドなしに挑戦してみまして(時間がなかったからだけど)。かれこれ数年来必ず使っていたので無いのが不安だったけど,案外筋書だけでも話がわかるし充分楽しめてほっとした。イヤホンガイドの蘊蓄と幕間の解説は有り難いけども(1人で見るときに便利)。


お財布が涼しくなった上に,色々シーズンなので,しばらく観劇はお休みの方針。でも1月の国立は演目と配役が出たら考える。