ポンペイ展


今年の春の横浜展のときにポスターがあちこちにはってあって,気になってたけど横浜は遠くて行けなかったので,ちょうど良かった。火山噴火の悲劇といった方面で切るのではなく,出土品を用いてローマ時代の人々の暮らしの様子をテーマ切りしたもの。彫刻,壁画,タイルのモザイク,装身具,化粧道具,調理道具,農作業の道具,カトラリー,各種食器,燭台,中庭の噴水,お風呂。などなど。


あれだけ保存状態が良い遺物が大量に見つかってるんだものな。敦煌もそうだけど,ごそっと一次資料が見つかると研究はぐっと進む。もちろん研究されつくされてない資料が残っているだとか,技術が進歩に伴って同じ資料でも新たなアプローチができるので,新しい一次資料が見つからないと研究の手立てがないわけでは全然ない。新しい資料に一斉に飛びついちゃうのも。


特に,石造りの彫像や水盤や壁画といった大物は,当時の人々の家の様子が鮮明に思い浮かんだ。もちろん想像に過ぎずあちこち誤ってはいるんだけど,なんだろう,大昔なのにあまり今と変わってないじゃん,みたいな感じ。


ちょいちょい細かな装飾が施されてはいるものの,支配階級の遺品に見られるような手間暇かかりすぎた懲りすぎた特別の宝物ではなく,当時ごくごく当たり前に住んでいた人達のごくごく普通の家に置かれていたものらしいあくまで実用品の範囲内のほどほど加減。似たようなデザインのものがたくさんあるあたりも大量生産品然としていて「こういうデザインが流行ってたんだろうなあ」と身近に感じられる。


興味深かったのは,素材によって状態の差が大きいこと。鉄は熱に弱い,青銅はまあまあ,石は強い。金は強い。銀も強い(のか,何かの中に入っていて免れた物か)。フレスコ画も強い。ガラスが曇っているのはもともとその程度の精錬なのか,それともいたんでるのか。


見ものは個人宅にあったという浴槽。給水のしくみが凄い。そして大理石のバスタブ。


バスタブを見ても,食事用臥台(宴会のときにはみんなでベッドにごろんしてごはん食べてたんですって!)を見ても,今のあの辺に住んでる人(具体的にはよく知らない)よりも小柄だったのかな,など,妄想が膨らみました。