♪草津良いとこ一度はおいで


先の土日一泊二日で草津温泉に行ってきた。経緯は前回書いたので省略。


名前から想像していたのと実態とは随分違っていた。かなまると違って実はわたしはあまり興味がなかった(如何せん遠い)のだけれど,行って良かった。良いところだった。


往復の交通手段はJR特急草津。上野始発で→赤羽→浦和→大宮→(略)→新前橋→渋川。このあたりで特急水上と分岐して吾妻線に入り,長野原草津口駅が最寄り。そこからはJRバス関東


特急とはいえ我らが新快速と同じかややゆっくりめ。途中JR津山線のような崖に張り付く単線状態になっていたり噂の八ッ場ダムを通ったりと,車窓の風景を楽しめる列車の旅もなかなか楽しい。


もちろん乗り換えや在来線特急列車の旅が好きでない向きには,新宿−草津間の高速バスがあるのでそちらが楽。我々は動き出しが遅かったのでバスは当然満席,おまけに帰路の特急は指定席も満席で確保できておらず,帰り道に些かの不安を残しつつの旅立ちではあった。


家を出てから延々4時間,到着した草津温泉は,すり鉢状のこぢんまりとした街だった。すり鉢の底が湯畑(温泉がほこほこ湧いてる源泉)。そこを中心に放射状に近い形で細い道路が延び,旅館やホテル,土産物店,喫茶店などがひしめく。昭和風建築の大型旅館もあるけれど,温泉町としての歴史の古さを誇るだけのことはあって,歴史的建造物としての価値も高そうな伝統的旅館も多かった。遊興施設は少なめ。なぜか異常にラーメン屋が多かったのには何か理由があるのか。


熱海のような開けた所にやどこぞの想像の世界のような川沿いに,大型旅館がにょきにょき林立している様を思い描いていたので,草津の規模の小ささは良い意味で裏切られた。


すぐ近くには草津国際スキー場もある。我々が泊まった温泉旅館にもスキー兼客がいたし,湯畑中心から少し外れたところには,価格も手頃なペンションなど,よりスキーメイン向けの人に適した宿泊施設も見られた。タクシーの屋根にキャリアが設置されてたのが,さすがというか。今回は事前準備不足でスキーは諦めたが,標高2100mの白根山からの8kmのダウンヒルコースにはかなり心惹かれた。脊梁山脈のこっち側空っ風で有名な群馬ゆえ,スキー場といってもオマケ程度だろうと高をくくっていたが,どっこい,硫黄臭い湯気がもうもうとしている湯畑側でさえも雪の結晶が肉眼で確認できるような上質パウダースノー。スキー場に行けば,そしてさらに山の上まで行けば,見晴らしも良くて雪も良い,かなり楽しい雪遊びができそうだった。


といった諸々の条件が重なって,今時の観光地には珍しくほぼ日本人観光客ばかりだったことも印象的。大学生グループや家族連れ,友達連れ,母娘連れなど,客層も広い。外気温はおそらく氷点下だったけれど天気は悪くなかったし,観光スポットである湯畑を中心に客が皆屋外をうろうろしているので,特に何があるというわけではないのだけれども,なんとなく賑わっていて活気があった。


なによりお湯が気持ち良かった。強酸性なので,アルカリ性のようなお肌つるつるにはならないけれど,お湯が柔らかでじんわり温まって本当に気持ちいい。西の外れにある「西の河原」公園内の露天風呂は,川のをせき止めて作ったような風情。雪が舞っていたので,雪見露天風呂を堪能してきた。豊富な湯量,加温なし。温泉と銭湯は違うんだ浴槽の広さの問題じゃないんだとは今も銭湯生活を続けるかなまるの弁。


我々が泊まった宿は,建物はやや古くお風呂も部屋も狭めだったが,畳は新しいし布団も気持ち良いし,かしこまらない雰囲気もありがたいし,あちこちにお花も生けてあるし,料理もおいしかった。多すぎないのが良い。建物自体はごくごく普通だけれども,骨董の家具と陶磁器がたくさんあって,これはかなりの目の保養。明治の文豪が投宿していたような時代には,古伊万里で料理を出していたらしい。


なにぶん遠かったし,帰りは自由席だったので早めに動いてたくさん待ったけれど(特急の終点の1個前なので並べば座れる),のんびりと良い休日を満喫できた。旧き善きを感じさせつつ時計の止まってない温泉だった。また機会があれば行きたい。