現実世界のミステリィ(おまけであり本当に言いたいこと)


文章を書くのは難しい。言いたいことを書くのは難しい。悪文の見本のようになるかもしれないが,容赦願いたい。


話が膨らんでいる方面にはいろいろ思うところもある。いろいろあるのだが,ひとつ言いたいのは,「ネットで調べたらすぐに答えがわかるような問題を出しているのはネット時代にナンセンスだ」という見解に対して,それは違うと。ナンセンスか否かではなく「ネットで調べたらすぐ答えが分かるような問題」という部分。


実際に問題を見てもらえば分かるが,少なくとも早稲田文化構想学部の英語*1と京大の英語*2は,知恵袋の回答*3を引き写しても得点できない。早稲田はおそらく試験時間内に回答が間に合っていないのだが,間に合っていたとしても無理。これは知恵袋の回答が間違っているということではなく(残念ながらわたしは英語はさっぱりなので判断できない),設問の「one sentence」という条件を反映せずに知恵袋に投稿した時点でアウト。採点基準次第ではあるが0点の可能性の方が高い。京大の方は,回答者自身が機械翻訳だから直訳にもなってないかもと書き添えているし,わたしよりは多少英語ができる人に知恵袋回答の英文を見てもらったところ厳しい見解を示された。ネット上に転がっている外国語の記事をぐ○る先生に和訳していただいた感触から考えても,機械翻訳がその程度のものでしかないことは想像に難くない。そうでなければ某選手の移籍かも違うかもニュースだってこんなにやきもきしないって。


数学に関してはもっとわからないので(文系数学は例年に比べて易しかったという講評のようだし)詳しい方の見解を知りたいところだけれども,少なくとも京大の数学が「問いの答えを出せるかどうか」だけを見ているわけではないというのはまことしやかに噂されている。


だからこそ「回答を得ることや合格は目的ではなく問題流出そのものが目的ではないか」という見解が少なくないのだろう。わたしも,なんでまた知恵袋,とは思う。しかしそれはそれで今後の調査を待つとして,ここで言いたいのは入試問題ナメんな,ということだけだ。


知恵袋だから時間も間に合わなかったし正答が得られなかった,というレベルの出題内容ではない。仮にネット持ち込み(?)可であっても,辞書持ち込み可であっても,この時間内で本当の意味で適切な解答を得ることは難しいのではないかと個人的には思っている。わからない単語や表現をちょっと調べる程度ならできるだろうが,それが決定的に合否を分けるとも……思えんのだよな。そもそもそんなことを聞いている設問じゃないし,複数教科で何問もあるのを総合して決定してるんだし。


もちろん不正行為はダメ絶対だ。わたしは今回の件でこの犯人(仮)に対して猛烈に腹を立てている。実際の入試は本当にストレスフルで,たとえ単語1つであろうと数学の途中式1行であろうと,その1点が合否を分けるかもしれない,今後の人生を決めるかもしれない,受験生はそういう崖っぷちの精神状態で受験勉強をし受験に臨んでいる。入試を運営する大学当局も,受験準備をサポートしている家族等の人々も,みな,それぞれに神経をとがらせて事に当たっている。このあと「入試なんてそんな完璧にできるはずないし入ったあとが大事だから別に完璧じゃなくていいし」とか「どの大学に入ったか(もしくは大学に入ったかどうか)よりも大事なのはその人がどういう人でどういうことをしたかだよね」とか書くつもりだが,それは今のわたしだから言えることで,そうじゃない受験生はたくさんいるしそんなの当然だし,大人になってからもそう思ってる人だっているだろうし,それは否定できない。それなのに,それをぶちこわすルール違反をして,自分だけずるして周囲に多大な迷惑をかけていることは許し難い。


まだ国公立後期日程が控え私立の入試日程も残っているだろう中で,今,各大学の現場の人達がどれほどの対応を迫られているか。いったいどれほどの人間を巻き込んでいると思っているのか。


話を元に戻す。議論は既に今回の個々の具体的事例の段階を通り過ぎている。客観問題に対してならば同じ手法でも効果が得られそうだし,主観(?)問題でも同じトリックを使って外部有識者に直接問い合わせられたら厳しい(多額の金銭の授受が想像されていやん)。そしてそれが誰もが可能な方法であったならば,現行の大学入試制度全体に関わる大問題である。


という前提の元に議論は進んでいる。それはわたしもわかっているし議論している方々もそれはわかってのことだろう。


それだからして「今更何を」と言われるのは承知の上だが,やはり言いたい。


「そんな問題出すなんてナンセンス」と問題を見もせずに知った風な口を聞く方々に対して。単純な知識確認問題ばかりじゃないから,そこは決めつけないでほしい。


限られた時間内で答えを出させることがナンセンスと言われても,実社会において,決められた時間内で何かを為す場面はたくさんある。時間を区切って何が悪い。なんならオール持ち込み可で時間無制限でもよいので,ちょいと解いてみていただきたい。


大学名が幅をきかせている風潮は,かなり薄まっているとはいえ,まだ残っている。そして,入ってしまえば出るのは比較的楽だし,入ったこと自体が高く評価されるという現実もある。しかし,完璧な選抜方法は存在しない。多くの私企業は何度も面接を重ねあらゆる方法でより良い人材を得ようとしているが,それでも入社後に辞める人はいる。こんなに就職難なのに。それは入った人にとっても不運なできごとだが,採用した企業にとっても不運なできごとだ。不正は言語道断だが,防ぐべきは不正であって,これを機に入試制度や入試問題の抜本的な見直しをとなると,それは別の話だ。もちろん入学者選抜方法の見直しもしても良い。良いが,完璧な選抜方法なんてないのだ。何を持って完璧とするのよ。受験生は受験校を選ぶ権利はある。しかし,入学者を選抜するのはあくまで大学であり,受験生同士が受験生同士のルールで勝手に合格者を決めるものでもなければ,まして,大学と関係ない外部の人間が当該大学の求める人材や入学者の選抜方法について口を挟む筋合いなど,本来はないのだ。極論だけど。選抜方法にとやかく言わなくても,下手な選抜をして下手な学位を与えていれば,自然とその大学の評価は下がるだろう。


とくに京大のようなところは,三千数百人のうちのせいぜい600人ぐらいひっかかれば御の字だと思っているのではないだろうかと邪推したい気持ちもあるぐらいで,要するに優秀な研究者の卵を得ることが第一義で,大学時代にあたためてみて,修士まで6年やってようやく孵化の見込みがあるかないかがわかるかどうかぐらいのことだろう。入学前に測るのは難しい。もし現行よりも良い方法があるならとっくの昔にやってると思うよ。


だからといって最初から600人しかとらなければ期待値はもっと低くなる。そして大多数の人間は,優秀なる研究者の卵であろうがなかろうが,つつがなく学位を取得し卒業していく。その後,社会に出たその人物が評価されるのはやはりその人物がそこで為したことであり為人であり,けして大学名ではない。出身大学名が幅をきかせる場面がないとは言わないが,下手にご立派な肩書きをもっていたら「○○出なのにねえ」と却って評価を下げるだけだ。その大多数の人間に対しても,学位を与える以上責任は負っているが,それは在学中の教育・指導の問題であって,それもまた別の話。


言いたいことと書き出してみたが結局何が言いたいのかわからない文章になってしまった。


今回の件で市井の人間があれやこれやと好きに言ったり便乗釣りアカを取ったりするのは構わないけれども,もし母校コケにでもされたら全力で怒る人間がよりによってあんな大学やこんな大学出身者ばかりということを考えると,以下略。