團菊祭五月大歌舞伎 昼の部@松竹座


松竹座は道頓堀にある。江戸歌舞伎を代表する名優をたたえる團菊祭。歌舞伎座立替工事にともない,3年前から松竹座にうつっている。
そのときには黒鷲のついでに行けるかもと思っていたが2年間黒鷲自体に行かなかったのですっかり忘れていた。たまたま大阪移動の直前にその話題になり,思い立ってチケットを購入。
松竹座,洋風建築。中は改装されていて広々と快適。まだ公演は始まったばかりで5月下旬までやっているので,ぜひどうぞ。土日も席に余裕ありげ

菅原伝授手習鑑 寺子屋

ものすごく有名で人気の高い(上演回数の多い)演目。タイトルと要旨は知っていたけれど,見たことはなかった。
源蔵:海老蔵,戸浪:梅枝,松王丸:松緑,千代:菊之助,園生の前:吉弥
若手(といっても自分と同世代)俳優をならべたキャスト。ベテランの方々ならどうなるだろうと考えながらも,好きな役者さんばかりなので喜んで観劇。
物語後半の源蔵夫婦と松王丸夫婦が対で対峙する場面では,舞台の上で錯綜する4人のそれぞれの立場と思いにぐっときて思わず涙。現代の感覚と常識ではおこりえない事件だけれど,現代人にも通じる人情が流れているような気がして,これが人気演目であることを得心した。またの機会にも見たいと思わせる。
時代物の義太夫狂言で,文楽のものとセリフ含めて全く同じだそうで,と文楽公演時の床本と見比べる乙な休憩時間。

身替座禅

狂言「花子」をもとにした松羽目物。恐妻家のおっさんが,ふーぞくに行きたいがために,奥さんに「持仏堂におこもりして座禅するから見に来ちゃダメ」と言いくるめ,家来の太郎冠者にかつぎをかぶせて身替わりに仕立て上げて家を抜け出すも……というかなりバカバカしいストーリー。
山陰右京に尾上菊五郎,奥方玉の井市川團十郎。太郎冠者は河原崎権十郎
菊五郎にエロ親父とか酔っ払いとか,はまらないわけがない。
そして,團十郎玉の井はほとんど出オチの世界。出てきた奥方を迎えた右京が奥方を上座に座るよう促す場面で,ワタシの夫が「ぷっ」と吹いた。待て。

封印切

近松門左衛門の「冥途の飛脚」由来の,こちらは文楽作品とはいろいろと異なっているらしい。
上方が舞台の上方和事,ふだん江戸歌舞伎ばかり見ているのでこれはこれで新鮮。坂田藤十郎が2枚目(というかただのダメ男というか)役。
タダのダメ男がもてるのは納得いかないし,話のまるめ方も「えええええ」というもので,寺子屋の比じゃなく「昔の人の感性わからん」お話だったけれど,藤十郎のダメ男は良い物見たなあ。