「年刊バレーボール TOP OF THE COLLOEGE VOLLEYBALL 2012 〜翔〜」によせて。


全日本インカレが無事幕をおろしたので,しばらく,全カレにまつわる個人的な所感やらなにやらで天皇杯,あるいは東西対抗までを過ごしたい。


まず,項を改めてちゃんと書きたいと思っていたのが「年刊バレーボール TOP OF THE COLLOEGE VOLLEYBALL 2012 〜翔〜」。全日本インカレにあわせて作られた,関東の大学スポーツ新聞の合同冊子。


昨年と同様のモノクロ簡易印刷・簡易製本の冊子を想定していたら,とんでもないものが出来上がっていた。


なにこのB5判無線綴じ40pの冊子。表紙はもちろん両面カラー。本文が1折カラー12p,2折モノクロ16p,3折モノクロ12p。


内容は,巻頭特集にパナソニックの清水・福澤の対談。大学時代別々のチームだった2人のライバル話と今の仲良し話,インカレの思い出。後輩達に伝えたいこと。ちょうど今の4年生と入れ違いで出て行った2人。ともすれば遠い世界の憧れになりがちな2人が,目標になるような,自分も遠い世界じゃないと思えるような対談記事。


続いて,関東大学バレー部員100人に聞きましたの部門別選手ランキング。サーブ,スパイク,ブロック,セッター,リベロ……番外編でイケメンとかワイルドとか。個人的にはここの企画がいちばん好き。昔は「チームの顔」にもあったんだが。選手による選手の評価は,プレー経験なしに見ているだけの人間には分からない,ネットを挟んで対峙している選手だから感じる「凄さ」「良さ」が伝わってくる。もちろん,投票時のコメント欄に「オレ(笑)」と書くような選手もいる。想像通りでめちゃめちゃツボにはまった。かわいいよ。


それから,学生記者さんたちが選んだ注目の4年生選手12人。これというスター選手がいない90生を丁寧に掬い上げそれぞれの特徴や魅力,注目ポイントを紹介している。


一息つける七里と出耒田の「やる気ごはん」。2人の手書き文字に味わいがある。ふたりとも親元を離れて暮らしている若者なんだなあ。


以下はモノクロで,この冊子のメインコンテンツであるところのチーム紹介にページが割かれる。1部の10チームは各チーム1見開き,2部の4チーム(冊子が対象としているのが4チーム)は各1ページ。チーム毎の概要と予想スタメンの7人の選手紹介が中心で,そのほかに各チームそれぞれの形でのピックアップ。スタメン紹介の並び順がさりげなく目玉になっているあたりの仕事が細かい。


そして編集後記と,ざっと全カレのスケジュール。といった内容。


これが無料配布。


正式名称が長い(というかどこが正式名称なのかが分かりづらい)のにサブタイトルがシンプルに「翔」だったので,ある界隈では「翔ちゃん」と呼ばれていた。頒布場所のポップには「年刊バレーボール」と書いてあった。別バレのパクリですな。題字にも月バレのロゴが使われていた。


がたがたな月バレロゴの題字に見えるオアソビ要素や,学生サークル(という言い方はスポーツ新聞には不適だね)らしい手作り感も,作り手の生身のあたたかさが伝わってくる。


何より,企画を練り,大学を超えて企画検討し打ち合わせをし,それぞれに少なくはない対象を取材し,どのように書くかを悩み苦しみ,形にしていく,それらの過程ひとつひとつに時間と気持ちと手間暇をかけていることが窺える。


自分の通っている大学とは別の大学のチームを担当している人もいる。記者として担当して取材してチーム紹介や選手紹介を書いて。それが彼らのスポーツ新聞記者としての仕事であり,学生生活を懸けている課外活動であり。


今や,印刷発行される学内紙だけでなく,学外からインターネットで記事が読めるようになった。遠方の試合にも来ている記者さん。遅い時間まで試合があっても翌日には上がっている詳細な試合レポートと臨場感のある写真。負けた試合でも勝った試合でも,監督・選手に食らいついて引き出す濃いインタビュー。たまにスタンドから試合をみることしか出来ないわたしは,各スポーツ新聞の記事にずいぶんお世話になっている。


その一年の締めくくりとしての全日本インカレ。冊子の編集後記を読むと,3年生の部員さんたちはインカレで引退という人も多いようだ。彼らには彼らの戦いがある。彼らの新聞にかけた大学生活がある。インカレは彼らにとっての最後の舞台でもあっただろう。


幸運にも,最終日に,合同冊子に参加していたある大学のスポーツ新聞の方々と少しだけ話ができた。報道の札を下げて,自分の大学を応援しながら,選手の活躍に目を,声を,きらきらさせながら,紙にペンを走らせていた。件の冊子は夏頃から企画が始まり,特に清水選手と福澤選手の取材は場所も大阪で離れており,大変だったとのこと。


それでも,後輩達がまた来年も大学スポーツと共に一年を過ごし,インカレを迎え,願わくばこのような冊子をつくってくれることを,一観戦者として願う。


そして,引退する3年生たちの,今後の活躍を願う。


平たく言うと。わたしは,選手よりはずっと,○スポのひとたちの生活やら活動やらのほうをリアルに想像できる。新聞やってたわけじゃないからあくまで想像に過ぎないし,実態とは異なるんだろうけれど,それでもきっとスポ専でバレーやってる男子について妄想を巡らすよりは近いと思う。


そこで何かを得て,あるいは何かをこじらせて,今,ごはんを食べている。


直接仕事に結びついても結びつかなくても,その経験は今後の人生の糧になる。


ありがとうございました。楽しかったです。