東海大学札幌校舎


はてダではかれこれ9年,リアルでも2年以上お世話になっているid:dhalmel氏が札幌に移住して1年と少しが過ぎた。彼の方が北の大地に転居されて以来,急激に北海道情報が充実することになった。


自分が楽しいと思うことを楽しんで,それを楽しいよと表現できることは素敵だなあと思う。


今年の東日本インカレは,数年ぶりに札幌は北海きたえーるで開催された。これまで何度か北海道に足を踏み入れてはいたが札幌には立ち寄っていなかったこともあって,観戦と観光を兼ねて札幌を訪れた。それが約半年前。


そこでわたしが到着した金曜日に残っていた北海道勢が,東海大学札幌校舎(東海札幌とか札幌東海とか)と札幌大学だった。試合順がずれていたためどちらも観戦することができた。東海札幌はサブコートで中大と,札大はメインコートで……早稲田,だっただろうか。とくに,サブコートの目の前数メートルのところで,優勝した中央大にぼっこぼこにされた東海札幌の面々は,選手のひとりもわからないながらに,深く心に刻まれた。えらく難儀した観戦環境だったが,サブコートで間近で見られたからこそ,より印象的だった。


その後東海札幌さんは関東の秋季リーグが始まる直前に,練習試合のために関東に遠征にいらっしゃった。初日の慶應との練習試合は会場が日吉の記念館で予定もオープンになっていた(はず)ので,これはチャンスとばかりにネタ探しに出かけた。背番号入りのユニフォームを着ていない選手を見るのがどれだけ大変かが身に染みつつ,練習試合を大いに楽しみ,またどこかで(=インカレで)見られるといいなと思いながら,でっかいキャリーをごろごろしている面々にくっついて記念館をあとにした。


その日以来の全日本インカレだった。


東海札幌は,道内では頭一つ抜けている存在で,北海道の秋季リーグでもさらっと全勝優勝をなさったらしい。D氏には忸怩たる思いもお持ちのようだが,それはそれとして。東日本インカレでは関東2部の真ん中からやや上位の駒澤大に勝った。全日本インカレではグループ戦で1位になれば金曜日に湘南校舎と当たるグループになったが,同グループに大商大がいた。


同一学連内の序列はなんとなく頭にある(それがひっくり返るのが勝負のおもしろさだ)けれど,学連が違うと力関係がわからない。それでも,大商大に勝つのは困難だろうと思っていた。大商大は2年前の全日本インカレベスト4の実力校だ。今年の春こそ2部に落ちたものの1シーズンで1部に戻った。もし大商大に勝って1位通過したとしても,トーナメント3回戦では9-16シードの中京大と対戦する。中京大は東海リーグの1部2位。湘南への道は険しそうに見えた。


親近感というには大げさだしおこがましいが,関東以外のチームの中では格別に,多少の愛着を感じていた。大商大に勝って1位通過したことを知ったわたしのボルテージは,そりゃあ上がるよね。2つ勝ったら湘南なのはもちろん,木曜の試合が墨田のサブコートになったのも都合がよかった。これはもう,サブ魔神になって目に焼き付けるしかないじゃないか。墨田のサブはきたえーるのサブと違って客席もあるし。


どんなのが良いプレーでどんなのが良い選手でどんなのが良い戦術で,なんて,そんなことはわたしにはわからん。ただ目の前で試合をしている選手達がいて,点がどんどん入って試合が進行していく。1点入ったら嬉しいし,相手に1点入ったらむむむと唸る。


札幌に肩入れしていた理由なんてその程度だったがそれで充分でもあった。トーナメント2回戦の日大戦,第1セットはビハインド気味で進行していたが,19-19ぐらいからの一刀の3連続サービスエースで一気にひっくり返し,突き放してそのセットを駆け抜けた。第2セットは試合を優位にすすめて,あっさりと,といってもいい勢いで3回戦に駒を進める。


その東海札幌の快勝のあと,湘南校舎と福山平成大の試合が行われた。第1セットは東海がさくっと取り,第2セットは福平。厳しい戦いになるだろうとは思っていたけれど,第2セットを落としたときには,湘南の方が金曜にたどり着けないかもしれんと思った。なんといってもリベロの井手がスゲエし,サイドアタッカーの18番さんと23番さんもツボ。あと,春田。


同じくフルセットになった湘南校舎の2回戦岐阜経済戦は見ていないけれども,もう(ノ∀`)アチャー。もともと福平は簡単に勝てる相手とは思ってない。しかしここで負けるわけにもいかない。第3セットは東海が本気モード。後半に福平18番さんがあしをいためて(攣った?)交代するアクシデントもあり,最終的には東海が福平をかわした。こちらの準備は整った。


そしてLコート第6試合。墨田区立体育館でいちばん遅くまで試合が行われた。相手の中京大はご近所ではないが総員出動の構えで,スタンドは完全に中京ホーム。どうやら最小限の人数で乗り込んできているらしい東海札幌はどアウェー。「ちょっとそこの湘南,東海繋がりなんだから応援しようよ」などとぶつぶつ心の中で言ってみたところで,どうにもならん。


日大戦と同じく,第1セットはビハインドだった。でも,ここぞというところでサーブで相手を崩すことができるのが強み。ブロックは,関東上位に比べれば高くないけれど,相手の攻撃の選択肢を狭めることで対応できていた。両MBはもちろんのことながら,山本のブロックが案外いいな,という印象。そして,この試合は,河西のプレーがすごく安定していた。パスは落ち着いていて精度が高いし,スパイクも力強い。ディグからトランジションバックアタックに惚れる。


あと,山本ねー。かわいいねー。(わたしの心の琴線に触れる)セッターにありがちな,ボールへの反応が早くてファーストタッチに行くタイプの。2回戦の日大戦では,日大はおそらくフェイントを,わざと狙って山本に取らせようとしていたように見えたのだけれど,あかんやろ。山本ファーストタッチでライトから一刀がトス上げてレフトから河西のクロス。なんつーお膳立てよ。一刀さんのトスが綺麗すぎる。笠原の後衛3ローテで入る関根さんのサーブとレセプションも良かった。


そんなこんなで,だから何がいいとかはわからないんだけど。とにかく勝った。かっこよかった。


キヤノン純正を構えて東海札幌の熱い戦いを切り取って保存していた人に「こうなったら札幌応援するしかないでしょう」と唆された。東日本インカレの中大戦でもたしかに東海札幌に肩入れしてはいたけれど,でも,それって判官贔屓だよ。そういうの良くないよ。と思いながら,晩ご飯を食べる頃には「札幌になら負けてもいい」という謎の(あるまじき)発言をかましていた。


一夜明けて,金曜日。綾瀬。朝10時試合開始。カイシャ行くよりも早い時間に起きて家を出て,通勤ラッシュに揉まれて東京を軽く横断して,たどりついた東京武道館。ちょっとくすんだ青地に白い「東海大学」の背中と,やや鮮やかな青地に白い「TOKAI UNIV」の背中の対戦。


第1セットは,どうみても湘南の立ち上がりが悪かった。いけだーいけだーいけだーーーーーーー。というぐらいネットにかける。全体的にぐだってる湘南に,札幌はお付き合いする気はない。なので,前半は札幌がリードしていた。


だけど,いくら湘南さんが立ち上がりの不安定さに定評がある(むしろ,立ち上がりが良いときは最終的によろしくない感が強い)とはいっても,いつまでもあたたまらないチームではない。結局,お久しぶりの鶴Dさんが容赦ないスパイクをぶっこんだり,星野がまちょい3番対決に鼻息を荒くしたり(妄想です),鈴木がにやにやしながら(妄想です)立ちはだかったりしはじめて,そうこうするうちに池田が調子をあげてきて右から左からきゃっほいしてくると,結局湘南がひっくり返すし,第2セットの後半ぐらいになると,札幌の気持ちが,たぶん,切れたよね。


心の中で応援しているといっても,結局,心の中でしか応援できない。この日もスタンドにずらっと部員が集う湘南。コールは「とーかい」だからとっても不思議な感覚だった。でもあっちはホームこっちはアウェー。コールが「とーかい」でも,コートのまわりの幕が「東海大学」でも,ヤツらは敵。


第3セットとか,もう,ぼっこぼこで。「あー,もう! きぃぃぃ!」という心境だった。もっとボールを追え。諦めるな折れるな。試合に負けても勝負に勝て。省エネ反対。意味不明。でも,なあ。こういうときどうすればいいかわからないよね。笑えばいいと思うよ,じゃなくて。それじゃ東カレのときのあの子だ。何度となくつい「こっから,こっから」と言いそうになり,喉まで出かかったところでかつての全日本女子監督が想起されていやいやと思いとどまる。その繰り返し。応援ってしなれてない。どうせ聞こえやしないし,聞こえたとして,試合中にかける言葉が見つからない。それに,応援しようがしまいが,勝敗にはたぶんきっとそんなに,いや,全然,作用しない。


だから,要はわたしの気持ちの問題で。だから,いいの。3試合観られたのは正直なところ予想以上だったし,試合を観る毎に愛着が増した。観戦数だけでいえば,今大会で湘南校舎と並んで2番目に多かったチームだ。いちばんが専修の4試合,その次が湘南校舎と札幌校舎の3試合。


それに,彼らには来年がある。もともと4年生のいない,3年以下で構成されたチーム。卒業が理由で抜ける選手はいない。新戦力も加わるだろう。来年の東日本インカレで,全日本インカレで,きっとより強くなった彼らをまた見られる。と信じてる。また会える日まで待ってる。


少しばかり後日譚がある。明らかに胡散臭い観客だったことをわたしが気にしていたら,わたしの胡散臭さに巻き込まれた人が,後日Facebookを通じて選手の一人に断りを入れてくれた。わたしは直接やりとりの内容を知らないので詳細は不明ながら,とりあえずあっさり流していただけたようで,胸をなで下ろした。それから彼との間になにがしかのやりとりがあったようで,彼女経由でインターネット回線を通じて試合の動画が札幌方面に流れ込んだ。


中京戦の第2セットの閲覧回数は現時点で300を超えている。youtubeはうっかり間違って踏んでもちゃっかりカウントされているようなのだが,それでもすごい。最初の日は夜までに20とか30とかだったのに,さらに一晩経ってみたら,ねずみ算式に増えていた。


何かあれば取り下げる準備はいつでもできている。でも,海を越えて戦っていた自分達や友人知人や家族や。現地でその場で見られるのはこの上なく贅沢で,わたしがどれだけここに文字で主観を書き連ねたところで,観ることには敵わないだろう。少しでも雰囲気が伝わればいいと思う。世に放った時点でわたしの手からは離れている。ただそこにある映像として閲覧されていることがすごく嬉しい。読まれていないと知っていてここで書くのはずるいのだが,おそらくいちばんの山場であったであろう商大戦がないのが心苦しくさえある。


楽しく充実した2日間だった。(湘南校舎がそこで負けるわけにもいかなかったが)もっと観たかった。せっかく天皇杯ファイナルが駒沢であるのに北海道代表がとわなのは,個人的にはたいそう残念なことである。もちろんとわはとわで楽しみではあるが,だからこそ,とわつええよ,こええよ,と思っている次第でもある。

12/6のおまけ