いまださん


東レアローズ(男子)の今田祐介選手の,黒鷲旗をもっての現役引退が発表された。


当該チームに対しても当該選手に対しても,とりわけ強い思い入れはない自分が,軽い気持ちでしたり顔で何を語るか,という反省は既にした。したが。でも書く。


少し話が逸れるけれど,わたしの外野スタンスからの根拠も裏打ちもソースもなければ考えも他意も思いやりもない何気ない一言が,人を傷つけたり愉快でない気持ちにさせたりしていることは頻繁にあるんだろうな。バレーボール界隈においても。少し前のTwitter上のとあるやりとりを見ていて思った。


なので,今,うまく書こうとしてかえってうまく書けないでいるのだけれど。


名前とそれが今年だったという事実は,残しておきたい。記録だから。


10年。そんなになるのか。


現役引退,社業専念。ああ。


率直に,驚きはしなかった。敢えて書く。年次的にも最近の起用のされ方からも。とどめを刺されたのが,先のVリーグの3位決定戦での出場の仕方。具体的にどこがどうとは言えない。でも,交代出場の瞬間に,何か感じるものがあった。そう感じたのが自分だけじゃなかった。


「引退してもいい」と思っているのではない。プレーヤを引退してカイシャに残って他の仕事をするというのは,見ているわたしにとって都合の良い話ではない。バレーボール選手として見ているわけだから,どこか他のチームでプレーを続けることがいちばん嬉しい。或いは,スタッフとして今後もチームに関わり続けたり,宇佐美や藤森がそうであるように,高校の指導者になったり。


選手のファンなら,いつまでもプレーを見たいと願うだろう。チームのファンなら,戦力ダウンを不安に感じるだろう。


だけど,しかたない。時間ばかりはとめられないし逆回しもできない。それに,人生はその人のものだから。


昔からそうなのだけれど,自分にとってのバレーボールとやらはエンタテイメントなので,エンタテイメントとしての振る舞いを無意識に求めている。興行であるNPBJリーグと同じ基準で考え,それにはアレが足りないココが不満と言ってしまう。


すごーく話が逸れている。無理矢理戻す。


今田さんが。企業のチームにおそらくは社員として入って。若い頃には主戦力としてコート上で力を発揮していた。ここ数年はベテランとして控えに回っていることがほとんどだった。ワンポイントでの出場もなく,何かあった時のバックアップかな,と思わせるような。ベンチアウトしている試合もあった。


チームは試合だけが全てじゃないし,選手は試合でコートに立っている6人だけが全てでもない。役割は自ずと変わっていく。若い選手が次々に入ってくる中で,普段の練習や試合中のアップゾーンや記録席で,彼が,どういう役割を担うようになっていたのか,わたしには想像するしかできない。今回東レの公式サイトで引退発表と共に掲載された本人のコメントには,アップゾーンで一緒に試合を見ていた後輩達に対する思いが溢れている。


そりゃあね。試合に出てないのは寂しかったですよ。コートでプレーを見たいもの。身も蓋もない言い方になるけど,いまぽい,かっこいいもん。背が高くてしゅっとしてて,顔もすっとしててそのくせちょっと甘さもあって。東レの着る人を選ぶ白いユニフォームが似合ってて爽やかで笑顔がかわいくて。バックアタックが打てるサイドアタッカーで(←個人的に重要)。


でもなあ。驚きはしない,んだよ。時は経つもの。若手から中堅,ベテランを経て,その時々の役割を全うしながら10年を過ごし,来月プレーヤを引退して,セカンドキャリアを歩む。


それって,実力と才能があって本人の努力もあって周りにも恵まれている,ごく限られた選手にしか歩めない道だから。けして悪い話じゃないから。


個人的には,こういうアマチュア企業スポーツの世界は嫌いではない。業界として,特定少数の大企業に頼って甘えていてはいけないことは強く感じる。会社の業績やらもっといえば景気の影響をダイレクトに受けやすいというリスクは大きすぎる。そのために多くのチームがなくなってきたのも事実ではある。


だけど,企業スポーツがダメなわけじゃない。このような形でセカンドキャリアが保証されているのも。そりゃそっちの仕事はそっちの仕事でまた別の難しさはあるのだが,それはそれ。厳しい世の中だからこそ,それを全うできるチームと選手は,素晴らしいことだと思う。


だから,納得して,見とどけたい。黒鷲旗。すっげーーーー期待してるので試合出てくださいマジ頼む。