できたん×ブレイザーズ


意識して,書かないように心がけていることが幾つかある。その内の一つに,無関心の表明がある。逆説で話題を展開するときの枕に使いやすいのでうっかり多用することもままあるが,気づいたときには多少気を使ってはいる。全く書かないとは言わない。


だいたい,言及の多寡ににじみ出ているに違いないし。関心があっても無意識に記事対象事項から排除している物事はたくさんあるので,言及しない=関心がないは真ではないのだけれど,ある程度は。


長い前振りになったが,できたんって,実は,ちょっとだけそうなのだ。なんだろう。けして嫌いとか興味ないとかじゃなくて。無関心とは少し違うかもしれない。自分がカバーする案件じゃない感。大学に入る時から名前を聞いていたし,代表にも入っていて周りの人が話題にするから,それを受け止めていれば足りる感じ。自分からガツガツ行かなくても構えていれば入ってくる感じ。


だから日々の一挙手一投足に注目してはいなくて,どんな選手かも自分の言葉では語れない。でも,たまに飛び込んでくる一つの事柄にばーんと頭を殴られたとき,そこにできたんがいる。


1月19日,日曜日。Vプレミアリーグ金岡大会の2日目はそういう試合だった。


公式Twitterアカウントによる事前出場告知の末,ワンポイントブロッカーとしてVプレミアの試合に初出場したのがその前日1/18。わたしはその日所用ありて西の方にいた。「ついでに大阪に寄って日曜だけ試合観て帰ろうかな」と軽い気持ちで翌日の観戦を予定していた。そういう機会でもないと,BSCの会員らしいことをしないし(つまり,会員割引を行使した)。


そして日曜日,できたんはスタメンに名を連ねた。MBとして。エンダキさんがつけていた7番だから,ファーストインプレッションは「細っ」だったのだがそれはさておき。横田ベンチアウトにしょんぼりしたのもさておき。


「あー,やっぱりMBなのかー」と思った。代表でもMBだったし。OPはペッパーいるし。松岡もいるし。良いとか悪いとかじゃなくて「そっかー」。


初得点はクイックだった。


でも,そのあとが,ちがった。それだけじゃなかった。


石島→出耒田のサーブローテーション。2人が揃って前衛にいるとき,しばしば石島がセンターに入り出耒田がサイドに入った。メモを取っていないので不確かだけれど,石島ポジション3&出耒田4のときはブロックでポジションチェンジせずそのまま石島センター/出耒田レフトに入っていた。攻撃に入るスロットはなにやらさらに柔軟だった。一つ回って石島2出耒田3のローテーションでも,センターライト交代して石島センターに入ったときがあったような気がするんだよなー。気のせいかなー。ライトオープンはなかったかなー。


センターブロックに跳ぶごっつ。サイドから打つできたん。そうかと思えば別の攻撃では,できたんのほうがセッター寄りにいて,ごっつがレフトから決める。


位置差,時間差。楽しい。


できたんMBかOPか問題に頭を巡らせていた自分が馬鹿みたいだ。ブレイザーズは軽やかに,何でもないことのようにその上を行った。まだチームにがっつり合流しているわけではない,週末だけ現地集合に近いような状態だった出耒田を,事実上のデビュー戦で。


それができる選手もそれができるチームもすごい。隣が石島だから可能だった部分もあるのだろう。全日本でOPに入り,今はおおむねWSポジションで,大学時代はセンターだった石島の自由さ。筑波大の先輩後輩が並んだ姿は,心躍らせるものだった。VプレミアがともすればVプレミアの中でスタンダードでオーソドックスなオーダー・ポジショニング・戦術に偏りがちな中で,目から鱗が落ちるような使い方は,それだけでも魅力的だ。


これをきっかけにできたんの大ファンに変貌したわけではないし,この先も,はぁはぁしながら追いかけるようなことはおそらくないと思う。ただ,これからブレイザーズというチームで彼がどうなっていくか,彼をを迎えたブレイザーズがどうなっていくかが,ポジティブに,楽しみだと思えた。大学時代にOPでエースアタッカーでぶいぶい言わせていた選手に対して抱きがちな,ぷれみあはたいがい外国人選手がいるからさ,みたいな無用なもやもやがすーっと晴れていった。


わたしがそこに前のめりで突っ込んでいくかどうかはわからないけれど,ちょっと離れたところで「へー」と眺めているスタンスであってもときおり意識のうちに割り込んでくるようなスペシャルな存在でいられる選手だろうと思うし,これからもいてほしい。


そんなわけで,さすがにそろそろ辞書登録せなあかんなあと思う2014年の冬である。