二月花形歌舞伎夜の部:通し狂言「青砥稿花紅彩画」@歌舞伎座


あおとぞうしはなのにしきえ。通称白浪五人男。


通しで見たのは初めて。よくかかる浜松屋と稲瀬川勢揃いだけのときの外題は「弁天娘女男白浪」になる。らしい。そちらはたぶんどこかで見たことがある,はず*1


いっぺん通しで見たかったので。って,ここ数年そればっかりですが。飛び石休みに挟まれた月曜日に有休を取って,歌舞伎座に行ってきた。

配役


適当感想。


建て替え後の歌舞伎座に初めて行った。如何せん建て替え前後の御祝儀価格が財布に厳しすぎるので,すっかり足が遠のいていた。今回も花形歌舞伎価格じゃないだろと毒づきながら,でも個人的には若手メインの方が好きよねっていうのと白浪五人男の通しっていうのとで,行ってきましたよ。


ビルになっちゃったと言っても,地上から歌舞伎座の前に立った限りではそんな感じはぜんぜんしない。前の歌舞伎座とそっくり同じで壁が綺麗になったぐらい。建物の入り口が切符モギリで,入ったら筋書売りぐらいしかなくてすぐに客席扉がある点も同じ。


客席内の席周りは多少ゆとりができたそうだけれど,久しぶりすぎて記憶にない。せせこましくはなかったし,椅子も広かった,かも。そして,そのせいか,館内はむしろ狭くなった。入って左手にあった売店が右手にうつったのだけれど,半分ぐらいの幅になってちょっと素っ気ない。1階にはトイレもない。ので幕間どうしよう感。B1のトイレの横に,コインロッカースペースががつんとあるのはわかりやすい。コートと手荷物を預けた。100円。


建物の外,正面左手にあったお弁当売り場エリアもなくなっていた(東銀座駅直通のB2木挽町広場に移動した?)。地上からでも建物右手のエスカレータでB2まで1本で降りられるけど,うちからだと東銀座駅を利用するよりも銀座駅から歩いた方が便利なようなので*2ちょっとびみょうな。今回は三越でお弁当を買って行った。余談だけど三越の開店が朝10時半になったので昼の部の開演前にお弁当を買うにはちょっと忙しなくなった模様。


序幕。梅枝たんの千寿姫が小太郎にらぶらぶで,そのあとがかわいそう。顔芸。


稲瀬川谷間の場の忠信利平と赤星十三郎とのやりとりには,アンテナが反応した。詳細はすっかり忘れちゃって,筋書を見直しても筋書ではどってことないから思い出せないんだけど,何かの気配が濃厚に漂ってた。


十三郎が自害しようとしていたところに利平がたまたま行き合って,十三郎がかくかくしかじかとわけを話したところ利平が家来筋だったことがわかり,十三郎が利平に盗賊の仲間にしてって頼んで,じゃあ,ってんで仲間になった,といった流れ。


なんだっけなー。距離の近さ? 顔の近さ? 肩を抱くとか手に手を取り合うとかしてた? 盗賊だけど元は武士という矜恃をもつ男前な利平(亀三郎さん素敵ー)とちょっと小心でおろおろしているところがかわいい柳腰の十三郎(七之助さんはぁはぁ)という組合せだから? それか,名前呼びか。仲間になると決まったと,主人扱いでへりくだる利平に対して十三郎が今日から仲間なんだから敬語じゃなくていいよみたいなことを言ってお互いちょっと照れながら名前呼びしてて,むはー。


それだ。


序幕を見られる機会は少ないだろうから,序幕だけでももう一度見たいなあと思っている。いや,ほんとに。幕見も一瞬考えたけど今日は遊んでる暇ないのよ(今遊んでるけど)。そして4時半開演は早いのよ。


亀三郎さんきゃあ素敵だった。浜松屋でも大詰めでもこの二人は出てこないから,あとは稲瀬川勢揃いの名乗りだけなんだよなあ。この二人が組んで盗みを働く一エピソード作れそうなのに実にもったいない。


5人5様のキャラ設計と,少しずつ柄を替えた揃いの小袖に身を包んだ稲瀬川勢揃いの名乗りの場面は,まさに戦隊ものを彷彿とさせる。むしろこちらが本家か。


主役の菊之助は,菊之助なので。こちらも顔芸が素敵。序幕の小太郎のふりをして千寿姫を騙しているところから辻堂で正体を知らせるところでの悪そうな顔がたまらん。悪い。悪いよー。


一方,浜松屋で正体が露顕する場面,緊張した場の雰囲気を壊すように,あーつかれたばれちゃった,とそれまでの振袖のお嬢さん芝居から一転素に戻るところは,脳内で当代菊五郎を想像していた。あれはおやじさまのノリだわ。おやじさまのノリで見たい。


幸兵衛から20両貰って,南郷力丸といちゃいちゃしながら*3帰って行く場面も,とぼけ方とかはおやじさまのノリなんだろうなあ。いやしかし菊之助の「兄ぃ」呼ばわりがたいへんおいしい。


大詰めは,大道具の大仕掛けはあるけど,立ち回りの場面がちょーっと長すぎる感じはしたし,話の風呂敷のたたみ方も酷く適当すぎるので,自分の前列に座っていたおじいさまが二幕目のあとで消えたのもさもありなんという感じではあった。一回見れば二度目以降はまあええかな,と。あの立ち回りを半分にして,もうすこしストーリーにちゃんと始末を。って,黙阿弥にはもう言えないから無理ね。


世話物だし,有名な話だからイヤホンガイドなしでよかろうと勇気を振り絞ってみましたが,話は分かりやすいし,セリフも分かりやすいので,大丈夫だった。セリフにかぶせてこられると苦手で。でも,イヤホンガイドの蘊蓄(話ができた背景やら過去の上演の話やら衣裳や下座音楽の解説やら)も楽しいのよね。一人だと幕間の手持ちぶさたもつぶせるし。悩ましい。


2度見られればいいんだけど,相変わらず3階席は完売。価格差がありすぎるんだよー。ぴぃぴぃ。

*1:2008年正月浅草歌舞伎。菊之助七之助,南郷が獅童。お金がなくてパンフレットもイヤホンガイドもなし,の由。そらあかんわ。日本駄右衛門が男女蔵あたりだったような記憶がうーっすら。愛之助丈もでていたかな。

*2:ということを今回初めて知った。GoogleMap先生様々。

*3:松屋を訪れて番頭さんから贔屓の役者さんをきかれる場面。「菊之助?」「菊之助は嫌い」「染五郎?」「……(首振り)」「松緑?」「……(照れで頷く)」