最後はエースの殴り合いだろ
※タイトルと本文は関係ありません。
さきの土日に刈谷で行われた上位1-4位決定戦のことを何か書きたいと思いながら,頭の中を覗いてみても何も書くことが出てこない。
ひとつには,それだけ自分に余裕がなかった。
もうひとつには,大上段に構えて批評がましくなるのがイヤで。見る目もないのに。ちゃんと見てもいないのに。覚えても考えてもいないのに。
自分の周りに4チームそれぞれ応援している人がいた。自分はどのチームに対してもそこまで強い思い入れはないけれど,思い入れのある人たちに思い入れがある。
だから,うかつなことを書いてはならぬと口を噤む。実際には軽口を叩いていたけれど,あれでも少しは噤んでいたつもりだった。
でも,話の流れで前回警視庁が出場したチャレンジマッチの記事を辿ってみたら,書いてあるようなないような中途半端なもので,それは今になってみるとがっかりすることだった。
わたしにとって,書いていないことはなかなか(ほとんど)残らない。思い出話に花を咲かせられるのも,書き残していたことのみ。過去の記録をトリガーにしないと思い出せないことが多すぎるし,そうやって思い出せる範囲もひどく狭い。
わたしの本体はおそらく頭の中にあって,常に頭の中を言語化することばかりにかまけている。そこはとても閉じた世界で,しかも忙しなく,そこにリソースをさきすぎていて外の世界には関心がないし見てもいない。経験したことを覚えていられないのも,そう考えると辻褄があう。見聞きすること,体験することって外から入ってくることだから。外から入ってくることを処理して自分の内に定着させることは得意でなくて,刻一刻と変化していく状況に処理が追いつかない。
つまり。
ぽえむを書いて悦にいるのが好きだとか,何か書いていないと死んじゃうだとか,そういう趣味領域の軸とは少し違った観点からも,書くことはわたしにとって意味のある行動なのだろうと感じることは,折々ある。以前は周りの人たちの記憶力が秀でているのだと認識していたけれど,そうではなくて,自分の記憶力が標準よりも劣っているのではないかと。
文字で自分のことばで書く必要はないんだけどね。写真でも。記念になるほかの何かでも。でもチケットの半券を見ても思い出せないだろう自信はある。たとえば写真なら,結果として残る絵そのものではなく,シャッターを押すという自身の行為に伴って起こる自分の内なる世界のありよう(の変化)をトリガーとして埋め込むのだと思うから。
だから,主観的すぎたり間違っていたりしても,自分がその時そう受け止めたということを,将来の自分に残しておくというだけなら,いいのかな。とか。
「だから」じゃねーし。
だから,最後はエースの殴り合いだろ,はアリだと思っているのです。
つまり,ここまででものすごく予防線をはりました。
土曜のつくば対警視庁。第5セットの最後,警視庁は7-9から当間が6連続サーブを打って,そのまま試合が終わってしまった。その間つくばでスパイクをしたのが丸山と加藤だけだった。S1レセプションローテーション。丸山で切ろうとして切れず,リバウンドなり次のトランジションなりが加藤にしか上がらない。もう加藤さんに上がるの分かってるし3枚ブロックだし。じゃんけんでぐー出し続けて次はちょきが出るか,いやぐーか,みたいな,我慢比べ。だけど,じゃんけんと違ってブロッカーは後出しできるから優位ですよ。警視庁の14点目と15点目は,加藤のスパイクを鈴木(たぶん)がブロックして取った。
あとあと振り返ってみると,ブロード無双の奥村は後衛でリベロ(吉野)と交代しているし,後衛レフトの南は白石と交代している。つくばにしてみれば攻撃の手数が多いとはいえない状況ではあった。尤も,同じ場面の警視庁は中村と金丸しか打ってないから大差ない。
勝敗だけ見るとつくばはOP(加藤)一辺倒で警視庁は偏りが小さい印象が残っちゃったけど,警視庁だってもともとOP(金丸)比重の高いチームではある。今年は随分比重が下がったと感じるけれど,それでも,ラリーが続くと金丸に上がるし,この日も第5セットは完全に金丸で勝負,という体になっていた。
必ずしも,最初から最後までずーっと順繰りにみんなが打っていけばいいということでもなくて。センターが多ければいいということもなくて。わかんないけど。
わかんないし,あまり踏み込みたくないので踏み込まないけど,サイドアウト制じゃなくても「そういうの(=センター速攻)が欲しい場面」があるような気がするんね。基本的にレセプションアタックで,「さ,次々」みたいにさくっと切りたい場面。「MBの決定率が高いのは決定しやすいところでしか使わないから」みたいなそれ。たとえば翌日曜日の富士通の平澤のスパイクはまさに「センターってこういうの」っていうイメージぴったりだった。5分の5で決定率100%。富士通だと今季の松野も(センタープロパーの選手じゃないんだけど)そんな感じ。松野はスパイク賞ですね。
個人的には,そうでないところ,つまり,なにやらお互いにリズムとテンポが嵌ってしまってけして悪いスパイクじゃないのにいい感じにブロックがワンタッチして後衛の足が動いて拾いまくってラリーが(決め手を欠いて)大味になりかかったところで,ぴしゃっとセンター速攻使って締めるのが大好物なんですが,それはそれとして。
きっと局面っていうのがあって,フルセットゲームの最終セットって,エース同士のガチ勝負で決着,が基本になるんかなあという印象もあるんだ。
それが良いとか悪いとかじゃないよ。結果を見ればつくばの選択はよろしくなかったっていうことになる。それは誰か(上げた人とか打った人とか)のせいという意味ではなくて。
土曜にフルセットでエース勝負やって負けて,日曜日。土曜の加藤さん勝負はなんだったのと思うくらい見事に瀧澤一辺倒のある意味今季のつくばらしい状態になっていた。
土曜日の加藤さんは本当に凄かった。アドレナリン出てるつーのか,ああいう試合の,瀧澤離脱という追い込まれた状況で,どんどん研ぎ澄まされて,プレーにもそれが現れて。スパイクの精度が半端ない。そこのストレート抜くか,みたいな。もう唖然とするしかないプレーの連続だった。
日曜日の瀧澤も凄かった。とても足首を傷めてるとは思えなかった。第4セットの2連続サーブポイントには舌を巻いた。
個々の力が強くて,結束力も強くて,去年の今頃あのチームに感じていた「で?」という無用な懸念もなくなって。
挑戦してほしかった気持ちもある。今年のサンガイアをあの舞台で見てもらいたかった気持ちもある。ファンじゃないんだけど。
でも,足りなかったってことなんだよな。エースの殴り合いでエースが負けたんだろうか。
そういう部分もあるだろう。日曜のモーさんもやはり,終盤での集中力がすごかった。今季の三好をあまり見てないけれど,少なくとも観た試合に限っては去年のジェイテクトのエンダキみたいな反則技を使われているかのような頭抜け方には見えず,ごくごくふつーにチームに溶け込んでいた(三好の歴代のケニアっ子たちに比べても馴染んで見える)。だけど,試合の最後らへんのモーさんはやはり背中に何かを背負っていて,背中から何かを放っていた。第5セットだけでモーさんはひとりで6得点ぐらいしている。研ぎ澄まされたエースの研ぎ澄まされた一撃は,フルセットゲームの終盤の醍醐味なんだ。それは終盤のチャンスで打席が回ってくるベテラン代打やクリンナップがそうであるように,そこにあわせてくるのを期待しちゃう場面なのだ。
だけど,勝ちたいわけじゃん。エースの殴り合いをしたいわけじゃないじゃん。だから,そうじゃない(インサイドワークでどうにかできた)部分もあるんじゃないかとも思うし。
結論は,ないのだけれど。試合に再戦がないように。