或いは B-T LIVE TOUR「或いはアナーキー」の感想


神宮は明日行くよ,なので,今日は一日家にいた。この機会にこそ書き物をすべしと奮発してクーラーまでかけたのだけれど,髪をいじったりだらだらしたりしているうちに6時になって,テレビで野球を見て,終わったら9時半。


水・木のB-T渋谷公会堂二日間が楽しすぎて,いまでもふわふわしている。


1日目は2階後方上手。初日の八王子とはちがう衣裳で,その衣裳が5人おそろいでめちゃめちゃ素敵で,しょっぱなから滾っていた。黒基調の赤アクセント。ゆたさん衣裳には縦に赤ラインたくさん,今井さんと櫻井さんは黒のノースリーブがややおそろい。櫻井さん巻きスカートの中が赤。星野さんは黒のロングジャケット風の上着の腰のところに赤い細いラインが横に入っていて,ちょっとだけふわっと広がっていて,かわいい。サバイバルダンスで片足けんけんでぴょんこぴょんこしたり後ろ向いたりしたときのかわいさにやられた。


そしてステージから遠すぎるのを利用してぬるく見ようとオペラグラスを覗いたら,視界に汗だらっだらの星野さんの首から胸元(デコルテというか)が入ってきて,それ以降かなり変態さんな鑑賞になった。喉仏とタイトなネックレスと鎖骨と胸しか見てないんじゃないかと。襟ぐりあきすぎ。自分のあまりの鼻息の荒さに翌日が恐ろしかった。


2日目は1階3列目上手。ほしのさん真正面。マイク位置確認したときにはどれだけあてられるかおそろしかったけれど,真正面すぎて前の席の人の頭で隠れちゃうぐらいだったので,立ち位置によっては見づらいこともしばしば。それで救われたかもしれない。オペラグラスみたいに視野が狭まりすぎることもなく,いろいろ視界に入ってくるので結果的にはわりと平気だった。


そうは言っても端近で機材に足かけて(つまり大股開きで)いるときには目の前に太腿が現れるんだからどうしようもないし(パンツの生地が薄手のストレッチみたいなんだから,ラインでるよね),前方席の醍醐味で演奏中の手元をガン見していたので,釘付けといえば釘付けで。目視できる距離での演奏姿って,ありがたすぎて。スタンディングでも前方に突っ込んでいく勇気がないから,ホール前方の奇跡に感謝するしかない。それだけじゃなく,ちまちま曲に合わせた仕草を小技で繰り出してくるし(微笑ましい),わりとしばしば歌ってるし(きゅんきゅんする),LIMBOとかSTEPPERとかはにっこにこしながら客にコーラス煽るし(撃ち抜かれる)。ウィンクは反則です。眩しいのかと思ったよ。


今井さんが来たときにも思ったけれど,ギターの2人はMCするわけでもなく,一切喋らないんだけど,目で客に話しかけてくる。もう少しはっきり客と絡んでいる樋口兄弟ともちょっと違ったニュアンス。


位置関係からして,上から見下されるんだけど,それがいい。深い位置にいてフリーにしているときと端近に出て客と絡んでいるときとのバランスな。右手あげた決めポーズでかっこつけてるところも,にやにやしながら見下しているところも,客席を指さしてるのも,視線飛ばしてるのも,ぐあああああ。ぱたり。


前方列になったときは,自意識過剰と自己満足でしかないけど,「楽しんでるよ,ありがとう」が伝わるように,いい気持ちで演奏できるように,できるだけいい笑顔になるように意識している。もちろん曲によるよ。わーわーした曲の時。きれいでもしゃれてもいないけど,楽しそうな表情ぐらいはと思って。わざと笑顔を作ってるていう意味じゃなくて,楽しんでいるから顔に出てるに決まっているけど,ちょっと意識して口角上げる。


それでなにかあるわけじゃないけど,その場で直接伝える手段ってそれしかない。


そういう対話と意識を打ち砕いて素でつっぷしてしまったのが,櫻井さんの真正面からの攻撃だったわけですが。腹抱えて笑ってるような恰好になってしまったけど,そうじゃなくて,みぞおち撃ち抜かれましたん。何の曲だったかなあ。客に向けてのアクションではなく曲のフリ(お芝居のような)だったんだけど,こっち向いて何かを投げつけてきたから,それが刺さった。美しすぎて,しかもこちらの防御ができていなかった。


2日目の席は,星野さん前がちょいちょい隠れるかわりに,櫻井さん方面の視界がものすごくクリアだった。前の方だと全体を一度に視界におさめられないのがもったいない。ライブ後にTwitterに流れるライブレポを見ていると,自分がどれだけ見落としているかがわかる。100%あっちゃんビューの人ならあの席をもっと有効活用できただろうに。


櫻井さんのステージングは,「見世物」らしい。曲によっては客と対話したりくだけた表情を見せるものもあるけれど,おおむね鑑賞物としての時間と空間を作りあげている。すぐそこにいても,別の世界にいる。ことにマスクみたいな曲は彼の持ち味や魅力が最大限に引き出される。照明もほぼ櫻井さんスポットだし,ギターずもあまり動かない。ステージの上で歌いながら演技している。凄まじく綺麗で引き寄せられる。


「この人ほんとに美形だよな,信じられないぐらいに」っていう感動。


ほかの4人もそれぞれに役割があって全員で(もっといえばスタッフも含めて全員で)あのステージが成り立っているのはもちろんだけれど,中でも櫻井さんが担っているものは大きい。間近で見るとその覚悟なり存在感なりに圧倒される。彼が中心になってステージを引っ張っている。曲に息を吹き込み色をつけ,曲ごとの世界を作り出し切り替える。ときに小道具を使いながら。ごく短いMCを挟みながら。彼の顔立ちの良さは間違いなく想像主が造りたもうたこの世の奇跡だけれど,あの表現力があってこその美しさ素晴らしさなのよな。


感動。


それから,ゆうたさん。NOT FOUND の直立不動のプレイ中に下からライトがあたっていたときは,大人のおじさんだった。リズム隊,ガチ。一段高い位置にいるからバックの映像に陰になって映り込むことが多くて,それが映像にとけこんで,しばしば感動する。無題の最後の微動だにしないところとかも。そのくせ,アンコールでステージに出てくるときとか,何かの曲で(すてっぱーずかしら)お散歩に出てきたときとかのあざといきゃっぴきゃぴのかわいさを振りまく一面もたしかにゆうたさん。


星野さんにしろゆたさんにしろ,演奏しているところを見るのが好き。ネックの上を滑る左手,コードを抑える指,かき鳴らす右手。その仕草が単純にかっこいいのはもちろん。目の前で見ていて弦を弾いたタイミングで音が聞こえることに興奮する。曲を聴いているだけではあまり意識していないようなフレーズも,目の前の演奏と一緒になると音が立って耳に入ってくる。ここ,こんなフレーズ弾いてたんだ,とか,ここ,こんな和音なんだ,とか。NOT FOUND の星野パートはちょっと感動だった。サビのところ,照明で真っ赤になってぐわーーーーーーって熱くなる場面なのに,ゆうたさんは黙々と単音を刻み,星野さんはずっと物悲しくて冷たい印象のあるイントロと同じ分散和音を繰り返している。ふたりとも淡々としていて,そのギャップが,なんつーか,すごかった。


どうせ毎度毎度同じ感想しか出てこないんだけど,何度見ても改めて同じことに感動し,素敵だな,と思えるのは悪くない。


そんなのを1年なり2年なりごとに繰り返して,自分が出戻ってからもう7年,いや8年か。振り返ってみると随分長くなっていた。


新しいアルバムが出てホールツアーやってスタンディングツアーやって。アルバムないときもちょこっとスタンディングツアーやって。


アルバムツアーの有り難みはまた格別だ。さほど熱心なファンではないから,BUCK-TICKの端から端まで全て大好きなんて言わないし,どの曲も全部大好きとも言わない。でも,新しいアルバムの中から,すこっとはまる曲に出会えるのは嬉しい。新曲が出続けるからこその楽しみ。


今アルバムでは,ONCE UPON A TIME が好き過ぎてやばい。ライブの客の反応見るとどうやらそんなでもなさそうなんだけど,わたしはあの曲になるとすげー上がってる。そしてAlice〜なみにはしゃぐ。なんでそんなにはまっているかわからないんだけど,たぶんBメロと,サビでの転調がすばらしく好み。明るく軽やかなAメロ,マイナなBメロ(下がってく音階が好きだ),サビ前の一拍のゲネラルパウゼ,サビでブレイクして,明るくて楽しい気持ちになれる。ファンタジックな歌詞も大好き。


そして,ライブになると,CD(わたしはBUCK-TICKのオリジナルアルバムは今もCDで買っているのだけれど,いまどきメディアを介さずに買う楽曲の方が多いぐらいなので,原点に返って「レコード」と言ったほうが適切かもしれない)で聴いているときと違った感動がある。ライブだと映える曲やライブで盛り上がる曲が必ずある。それはステージの効果や演奏・演出と一体になることで作られる曲の深みや広がりだったり,ライブ用のアレンジだったり,ときには聴衆の反応だったり。


「無題」には頭を横から殴られた。終わったあとも戻って来られなくて,拍手もできない。初日八王子は本編ラストだったからそのあと客席が暗いままのアンコール中ずっと魂抜かれたままだった。3回目を聴いてもやっぱり棒立ちでしかいられなかった。曲前のSEからの唐突な入り方(今井さんの曲にはしばしば神がかり的なイントロを持つものが現れるが,この曲もまちがいなくその一つだ),オイルみたいな丸い,ふちがせっけんの泡のまわりみたいな色してる背景の映像。エフェクタで歪んだ音。動かないゆうたさん。櫻井さんの凄味。


曲だけ聴いていても,すごい曲だと思っていたけれど,何倍も凄さが増した。ライブの無題を一曲切り取って作品として保存したい完成度。今後もライブで折に触れ演奏される名曲になるだろう,なってほしい。重いんだけど。すっごく重いんだけど。


ライブでは初めて聴いたタナトスも凄かった。やるらしいと聞いて心待ちにしていて,1日目にやらなくてしょんぼりして2日目。ノっている周囲に置いて行かれてた。例によって,衝撃にぽかーんと突っ立ったまま動けなかった。


タナトス然り,今ツアーはアンコール曲のバリエーションが多そう。近年のライブでやっていなかった曲が入っているからそう思うのかもしれない。STEPPERS と LOVE PAREDE の2曲が固定されているわりにいろいろやるなあという印象。月蝕は初日八王子で聴いたのがやはり初めてだったような気がする。渋公2日目の Mona Lisa も一度ぐらいはあるかもな,ぐらいで,記憶にない。with黒色すみれバージョンの VICTIMS OF LOVE もよかった。渋公1日目にレザンファン来たときには驚いた。


Coyoteモンタージュ夢魔,Alice〜は頻度高いほうかな。NATIONAL〜もトータルではあまり多くないけど,ごく最近はちょいちょいやってる印象。楽しいので好き。


曲ごとの感想も書きたいなあ。八王子のことはもうすっかり忘れてしまったし,渋谷公会堂の記憶も次第に靄がかかってきた。2日分がごっちゃになっているし,どの曲だったかわからないことばかり。


でも,まだまだ書ききれない。忘れてしまうのがくちおしい。自分が見た物を全部記録しておいて,見直すことができればいいのにと強く思う。それが大部分星野さんの太腿であったとしてもだ。