豆乳鍋


帰り道,晩ご飯の算段をしにスーパーマーケットに寄った。あたたかいものが食べたい。


豚ロース薄切り少量パックがある,鍋用カット野菜セット小袋がある。よし,鍋にしよう。鶏もも肉と豆腐も入れちゃえ。


季節柄,目立つところに鍋用スープが展開されている。ストレートつゆの大きなレトルトパウチのタイプはどれも1人鍋には量が多すぎるので使えないが,近頃はバリエーション豊富でなんだか楽しそうに見える。あっさり水炊きにしてポン酢でも買おうかしらと見ていた調味料の棚に,豆乳鍋のもとの比較的小さめな紙パックが売られていた。


原材料をじっと見る。豆乳,ほたてパウダー,醤油……これ,家にある材料でいけそう。


というわけで,見よう見まねで,食べたことさえない豆乳鍋にトライしてみた。昆布を入れた水(やや少なめ)を火にかけて,沸いたところで無調整豆乳200mLを気前よく注ぎ入れ,塩と醤油を入れて味見をし,再び温まるのを待ちながら「料理がまずい人間って,こうやってレシピも見ずに,1度市販品を使うこともせずに適当にオリジナルやアレンジをやろうとするからまずくなるんだよなー」と考えていた。わかってはいるの。


結論からすると,まずくなかった。鍋は偉大だ。鶏は偉大だ。今ふりかえって,最初のほんのり味気ない感じは酒を入れたらよかったかもしれないとは思う。水炊きなら入れるのに忘れていた。


味はともかくとして,台所の科学(化学)っぽさが,面白かった。豆乳には蛋白質が多く含まれているという至極当たり前のことを体験できる。豆腐はにがりで固めているが,にがりではなく熱により凝固させるとどうなるか。


最初はね,汲み上げ湯葉みていになるのかな,って思ってたの。あくが吸着しそうだったから,豚は入れずに,鶏と野菜だけにして,それもぬるい内に入れたのね。


ふつふつしはじめてからは弱火にしていたんだけど,しばらくして,表面がふわふわ固まってきた。


ふわふわ?


すくって味見をしたところ,食感はかきたまスープのかきたまそのもの。これは予想外。


楽しいし,ふわふわの凝固豆乳おいしい。


そんで,ふわふわを食べて,具を食べて,第二弾として残りの野菜と鶏と豚肉を入れた。豆腐を入れるのはやめた。


途中盛大にふきこぼしてもったいないことになりつつ減った分の水を足しつつしていたら,第一弾ほどの量はないものの,ふわふわのかたまりができた。そして,透明なだし汁が残った。


豆乳の白いのってぜんぶ蛋白質なんだねえ。鍋のまわりにややこびりつき気味のも,卵焼きとかでできる端っこのぺりぺりそのもの。ぱりぱりしててけっこううまい。


新しい発見でした。おもしろい。


ほいでも,かきたま鍋になったらそれはもう豆乳鍋ではないような。うまかったが,昆布醤油だし+かきたま鍋だった。少なくとも自分がイメージしている豆乳鍋は,具を食べるときに豆乳スープが絡んでいる(豆乳スープパスタみたいな)状態なんだけど。見よう見まね(見たこともない)でつくったのが間違いではあるのだけれど,本物の豆乳鍋ってどんな感じなんだろう。


豆乳を別に温めておいて仕上げ前に加えれば想像している状態にはなるけど,鍋って,そうじゃないし,市販の豆乳鍋用のスープは豆乳別添じゃないだろう。不思議だ。