風景を撮る。または,乗り物。


巷でさんざん言われていることだが,バレーボールの試合は,初心者の素人がいきなり手を出すには,いささかハードルが高い撮影対象だ。


恵まれない撮影環境,物足りないと感じる機材,もちろん大前提に絶望的な撮影スキル不足はあるが,それも「被写体が暗い場所で常に動きまくっている」ことが著しく難度を上げている。そして自分の下手さが辛く感じられる。くじけそうになる。


関東の冬の晴天が好きだと,かれこれ50回は言っただろうか。そして,冬の空に浮かぶ富士山が好きだ。朝の通勤経路でちらっとだけ富士山が小さく見えるところがあり,空気が澄んだ晴れた日に(専ら冬だ)青い空にくっきりと白い山頂が映えていると,朝から清々しい気持ちになる。


東京から綺麗に見えるのは冬場ぐらいだけれど,冬でなくても富士山は綺麗だ。明るい時間帯に東海道新幹線に乗るときにはE席で窓にかじりつく。三島・新富士あたりからの広々とした裾野も綺麗だけれど,下りならそのずっと前,小田原のちょっと前ぐらいで山の間から見える富士山もいい。


東海道新幹線E席


去年の11月にCyber-shotで撮ったもの。撮影モードを間違えたりとわたわたしているうちに良い位置を逃した。


東海道新幹線の車窓なら,茶畑も素敵だし,伊吹山も好きだ。JR神戸線から見える瀬戸内海や明石海峡大橋も綺麗。


最近気づいたのだけれど,どうやら,車窓の風景が好きらしい。旅行や移動全般が億劫で嫌いだと自覚していたのだけれど,実際には乗り物にテンションが上がっている自分がいる。電車に限らず,人に乗せてもらう車での移動も,延々壁が続く高速道路は好きじゃないけれど,八王子の圧巻のジャンクションだとか関越道で片品川を渡るときに見られる河岸段丘だとかの風景にいちいち感動する。時間帯によって色が違うのもいい。


新幹線や有料特急では,車内でコーヒーを飲むのが好きで,コーヒーを買うと,窓際に置いて,こういう写真を撮りたくなる。カメラと呼べる物が貧弱なスマートフォンのカメラ機能しかなかったころから,「こんなん撮ってどうするねん」とセルフツッコミをしつつ撮っていた構図。


近鉄特急の二階建て車輌から


もっとも,この写真は先月鳥羽に行ったときなので,α6000。


乗り物にテンションが上がるのって,子どもみたいだ。でも,子どものころは興味がなかった。乗り物の種類もなかったし,そもそも,レジャーに出かける習慣がなかった。


大人になってからもなかった。移動はめんどうなものだし,移動中は睡眠時間だった。楽しいと思えるようになったのは,ここ数年じゃないかしら。(もちろん今でも,旅行や遠出はあまり気が進まない。)


そして,子どもっぽい興味ついでに,巨大な建造物にも,最近になって魅力的に感じるようになってきた。鳥羽旅行のときは四日市の製鉄所を狙ってシャッターを切りまくった。もちろん動いている特急の中から。


まして土曜の行きと日曜の帰りを車に乗せてもらい,土曜の帰りと日曜の行きは電車に乗った今回の君津行きは,興奮の連続だった。川崎の製鉄所は,自分が知っていたほかのそれとは比べるべくもなき規模で,高速道路を挟んだ反対側には羽田空港が広がる。ひっきりなしに離発着する航空機がすぐ目の前を飛んでいく。アクアラインのトンネルを抜けて地上に出れば,房総半島まで続く橋。行く先に京葉工業地域の製鉄所が木更津を挟んで左右に広がる。


土曜の帰りの内房線では,袖ケ浦のあたりから富士山が見えた。袖ケ浦富嶽三十六景。見事だった。夕暮れ時,紫がかったくすんだピンク色が広がる西の空に浮かぶ東京からみるよりも大きな富士山の灰色のシルエット。


さすがに人の多い各駅停車ロングシートでカメラを取り出すことはできず,その光景を目に焼き付けた。明くる朝は(きっと人も少ないだろうから)撮ってやろうとはりきっていたのに,翌朝は晴天ながらガスが多くて富士山は見られなかった。


帰りもアクアライン経由で海ほたるPAに寄った。ガスっていなければどんなにか見晴らしがよかっただろうが,夕焼けのガスの向こうにけぶる横浜や君津の光景もそれはそれで幻想的だった。


2階の川崎方面駐車場の出口からのカーブの具合がいい。


海ほたるから,木更津方面を望む
海ほたるから,木更津方面を望む