物語の世界


今の家に住んで15年,「行きつけ」と言っていいだろう店が何軒かできた。そのうちの一つに深夜まで営業しているカフェがある。1人客が多いこと,深夜でも(ラーメンや牛丼でない)しっかりした食事がとれること,長居をしても許される雰囲気があること(つまり相応の単価でもある)。これらを満たす店はありそうでなかなかない。


軽い本を買ったときに持ち込んで読み切ってから帰宅するのがわたしの基本的な使い方なのだが,店内にもたくさんの本が置いてある(ここまで書くと一発で特定される)。金曜の夜,思うところあって手持ちの読み物がないまま立ち寄り,店内で目についた分厚い単行本の一冊を手に取った。


作品冒頭に出てくる,舞台「まほろ市」の説明に触れたところで,一気に引き込まれた。オムニバスっぽい見てくれだったのに読み進めてみたら長編だった。タイトル通りあちこちでいろいろな小さな事件が起こり,それらがどたばたしながら少しずつ繋がっていく。閉店まで1時間と少し,というところから読み始めたのがよくなかった。閉店ぎりぎりまでごりごり読んだが,続きが気になって仕方ない。帰る道々そんな話をして,帰宅するや否や,Amazon先生でKindle版を購入。それがシリーズの3作目というので(つまり3作目から読み始めた),当然1作目と2作目も買うよね。


まずは続きから読むよね。読みますよね,ぶっ通しで。読み終えたらもう空が明るくなっていたけれど,当然1作目に戻って読みますよね。寝落ちしますよね。3時間ぐらいで目が覚めますよね。目が覚めて二度寝しようかなーって思いながらとりあえず続きを読みはじめますよね。読み終えたら2作目に取りかかりますよね。


この我慢のきかない性分のせいで,わたしはふだん滅多に本を読まないのだと再認識しました。お話の途中でやめられない。少しずつ読み進めることができない。ほかの用事を全部すっ飛ばしてしまう。


夕方5時,全部読み切って,身支度して神宮球場へ。すでに遅刻確定。


それにしても,こういうときのAmazonKindleは最強すぎて怖い。真夜中の1時半に,読みたい本がワンクリック,ものの数分で手に入る。



書影を入れようと検索したら,山田ユギ氏の作画で漫画化されてるのね。映画になっていたというのは,その,Kindle版があるか調べてもらっているときに知ったんだけど,とうぜん気づいていない。書店にはたまに行くから,視界には入っていただろうに。


自分が世間のエンターテイメント事情に疎すぎるのは,かっこわるいな。顔見ただけでは俳優の名前も出てこない。