10.5m×21mの長方形の中で
大阪市中央体育館で開催されていた9人制全日本総合(全日本9人制バレーボール総合男子選手権大会)に,1日目と2日目の2日間行ってきた。
9人制を観るのはこれが2度目。1度目は今年6月の関東実業団で,2試合程度様子を覗いてみただけ,というところ。ルール・レギュレーションさえもほとんど知らない状態だった。
今になってこのエントリの見出しを書くために検索したくらい。
→https://www.fujitsu-ten.co.jp/volleyballteam/ninevolleyball/difference.php
せっかくなので,9人制を(ほぼ)初めて見て得た最初の驚き,を,つらつらと書いておきたい。
※書いている内容はおもしろくない
コートが広い
1日目は専らサブアリーナにいた。サブアリは他のラインを残したまま9人制のラインを引いていたので,6人制よりも1メートルずつぐらいコートが広いことがよくわかった。ポールの穴の位置も違うのかな,それともバドミントン用の穴なのかな。総合体育館をつくるのって大変だ。
コート内の人数が1.5倍なので,広くは感じない。むしろ,人がたくさんいる印象のほうが強い。とはいえ,サーブにしてもスパイクにしても,感覚として「あ,これアウトだな」という球がライン際に(それなりに余裕を残して)決まると,ああそうだったコート広いんだ,と思う。
ネットの高さもちょっと低いんですね。
線が少ない
2日目にいたメインアリーナは9人制用ラインだけになっていた。そのシンプルさには不安になるくらい。アタックラインがないのはすぐにわかったけれど,センターラインもないそうだ。上記のサイトには出ていないけれど,6人制ならある,監督が出ていいのはここまでよラインみたいなの(正式にはなんだろう)もなかった。
コートが広くてラインがなくて,助走からのジャンプで見当をつけづらいだろうなー,なんて。
ボールレトリーバーがいない
大会の規模には関係ない。6人制は大会規模によって1ボールから3ボールまで見かけるけれど,9人制は全部1ボールと思われる(記録席に予備ボールはある)。転がっていったボールは基本的に選手が自分たちで取りに行く(誰かが取って返すのもあり)。4面進行だと運が悪いとえらい遠方まで出かける羽目になることもある。
進行が間延びするのは致し方ない。
補助員の人数が少なくていいのはメリットだろう。バレーボールは,ただでさえ,周りに人数が必要な競技だ。主審1・副審1,ラインジャッジ4人。審判だけでも6人制1チーム分の人数が必要で,さらに記録,点示。
このうえにボールレトリーバーがのってくると,補助員が足りなくて試合ができない,ということにもなりかねない。6人制の試合では,補助員集合を急かすアナウンスが入ったり,それを聞いてスタメンの上級生があわててスラックスをはいて飛び出していく光景もまれによくある。意図的か否かはさておき,9人×3チームで試合が運営できるサイズなのは,大切なことかもしれない。
オーバーネット
厳しいんだこれが。6人制のブロックは腕を前に出して手首を返して囲い込むのが基本。9人はブロック時でもオーバーネットは反則で,6月にご一緒した9人制ますたーに「厳しいときは手首を返しただけで反則を取られる」と聞いた。
それでもキルブロックが出るからすごいんだけど。
全体的に,セッターのオーバーネットもちょい多いかな。
ブロック
ルールは調べればわかるけれど,ルールブックにのっていないセオリーはなかなかわからない。
前衛・後衛といった縛りはないので,ブロック枚数も自由。ざっと見たところ,自チームのサーブのときに前に6枚並ぶのがスタンダードのようす。
ブロッカー(?)がサーブ順になったときは,いちおう6人並びつつもサーブのあと全力で走って戻る場合もあれば,人を入れ替えてサーバーはレシーブに入る場合もあるようだった。
その先はチームや相手攻撃によりまちまちだけれど,相手のサイド(レフト・ライト)にあわせて3:3で分かれたり,真ん中の人が左右に移動して4枚ついたり。5枚のこともあるらしいけどわからなかった。
大人数ブロックにつくことは可能だが,9人制ではブロックのワンタッチを1打にカウントするので,「触れば良い」とも言い切れない。弾かれそうだとか,状況に応じて判断して,枚数を減らして後ろで拾ったり手を引っ込めたりする。
セッターもブロックに跳ぶ。ブロックワンタッチのあと同じ人が触ってもダブルコンタクトにはならない。
レセプション
おおむね前衛から2:4:3。前衛はセッターとセンター(ポジションの呼び方知らないんで適当)。あとの7人はw字風。中の人にきいたところ,中衛が取るんですって。じゃあバックは何をしているんだろう。9人制のサーブはかなりえぐい。
スパイク
ローテーションがないので,ポジションは固定。チームによる違いがいちばん大きいところで,強いチームはやはり攻撃の選択肢も多い印象を受けた。
おもしろいのは,セッター挟んで(6人で言うところの)AクイックとCクイックの位置からのダブルクイック。6人でもあるはあるけど,9人のほうが多い。その2人ともが囮でボールはサイドへ,ということもある。
セッターの位置がさほどライトよりに感じられない。どちらかというとセッターを中心とした線対称。クイックもそうだし,コート中央付近から(6人制のスロット3とかBあたりに)助走で入ってくる選手も,セッターの左右両方にいる。
Xとか時間差とかもある。個人的には,真ん中(センター)を多用するチームを好む傾向があるので9人も同じ。
もちろん,バックアタックは(そもそも概念として)ない。実際どのへんで踏み切っているのか(アタックラインがないので)定かではないが,わざわざ後ろのほうから打たなくても,という話で。
サーブがえぐい
2回まで打てるので1打目はそうとうえぐい。
コート上のプレーヤの数が多いということは守備枚数が多いということ。攻撃側は,どんなに人数がいようが究極的には相手コートに返すボールを打つのは1人で,ゆえに,いったんラリーに入ると6人よりも長くなる傾向があるようなないような。
サーブがブレイクチャンスであり最大の武器である傾向は6人制よりも強いかもしれない。1セット21点で9人いるので,サーブ順が早くても1セットの間に2度回るかどうか(1セットで1度もサーブを打たない選手も少なくない)だけれど,ビッグサーバのサーブ順でブレイクが続いて「あれよあれよ」という展開になりがちでもある。なんせ1度失敗しても終わらない。
1打目を失敗したとき,2打目はフローターのコントロールサーブにする選手もいる(そうでない選手もいる)。セカンドでも失敗するとちょっとかっこわるい。
ネットプレー
6人と9人,違いはたくさんあるけれど,大きいのを3つ挙げろと言われたら「サーブを2回まで打てる,ブロックをワンタッチに数える,ネットにあてたらもう一回ボールに触れる」の3つだと思う。
ネット際のボールをそのままアンダーハンドでトスにするのではなく,いったんネットにあててボールを上にあげてからオーバーハンドでセットするのは9人制セッターの必須スキルのようだ。
セッターに限らない。ネット際の処理しづらいボールをいったんネットにあてて体勢を立て直すのは,9人では普通でも6人畑の人間はとっさには難しい。自分が観ていた試合で,6人制キャリアの長い選手に対してプレー中に「ネット!」と指示する声がちょいちょい聞こえてきた。(そしてネットにあてられずネットの下を通過していくとかなり切ない)。
三好循環器科EKG(大分三好ヴァイセアドラーOBがかなり多い)の話題になったとき「めっちゃ豪華なメンバーだけど,強いのは9人制でやってるチームなんだよね」といった意見も聞かれたが,ネットプレーに限らず,とっさの判断やボールのあしらいに差が出るよな。
9人はつなぎがいい,というのはよく聞かれることだ。前衛ではネットプレー使えば最大4回ボールに触れるとはいえ,全体的みればアンダーハンドからの(それも後ろからくる)いわゆる二段トスを打つ機会が圧倒的に多い。月並みな表現になるけれど,次にさわる選手が打ちやすいボールにするスキルとか,相手コート(の守備)を観ての判断とか,そういった小さいところが点差になって表れるのかな,とは。
ローテーションがない点はシンプルで,役割が固定されているぶん分業化・専門化が進む。セッターを除いて8人,その人数と10.5m四方のコートをどれだけ巧く使いこなせるか。