全日本インカレ6日目・最終日(3位決定戦・決勝戦)
JSportsで録画放送(再放送)あります。是非にご覧ください。
3位決定戦:早稲田大学3-2明治大学(15-25 31-29 25-15 23-25 15-13)
MIP:早稲田大学#1福山汰一
早稲田:3加藤 2山口 17藤中 1福山 4田中(11加賀) 12喜入 L8後藤
明治:17辰巳(12政井) 6原 2與崎 11濱中 4小野寺 16加藤 L1瀧野
熱い試合だった。優勝がなくなった両チームの,たくさんの後悔をこえて迎えた最後の朝の,まわりのいろんなものがはがれ落ちてまんなかに残っている気持ちが輝いている。これぞ3位決定戦という試合だった。
グループ戦からどのチームよりもたくさん試合をした明治は,4年生を全員ベンチに入れた。インカレ3年連続センターコート。でも,天皇杯もないし,Vリーグに行って続ける選手もほとんどいない。多くの4年生の引退試合。
前日の準決勝のしらーっとした敗戦が腹立たしくてならない,まるで別チームかのような調子の良い立ち上がりだった。思いっきり吹っ切れていた。第1セットは明治が大量リードでひた走る。濱中のサーブで6連続ブレイク。濱中のサーブで崩して加藤がトランジションアタックを決める。来年メンバーがたくさん替わっても,きっと明治は良い意味で明治なんだろう。明るくて笑顔で。
一方の早稲田は,立ち上がりはミスが多く,明治の勢いに呑まれていた。終盤,11-24から4連続得点で調子を上げ,第2セットに繋いだ。
第2セットはやや明治ペースのほぼ互角で進行した。このころから早稲田のMB打数が増えてくる。じわじわと突き放していた明治が20-24でセットポイントに手をかけ,そこから早稲田が5連続得点で25-24と一気にひっくり返す。アドバンテージを取って取られて,デュースはお互い譲らないラリーが続いた。
結局31-29で早稲田が第2セットを取った。点差がついていたところからセットを落とした明治は,第3セットになって明らかに動きが落ちた。このまま3-1で終わるかな,と思った。ブロックは早稲田のほうがいい(高い)。トスがあわずさっぱり決まらなくなる明治のスパイク。加藤がどうにかふんばっていたけれど,加藤に集まってしまい,そこも厳しくなる。何をやってもうまくいかない時間帯。明治は切れるとすこんと切れてずるずるいきがちで,そういう試合をしばしば見てきた。
第4セットの後半からの明治が,明治の真髄なんだろうなあ。なんだろうね,あれ。きれいな形とか作れなくて,もうほんとにばたばたでぐちゃぐちゃなんだけど,ぶつかっても椅子に突っ込んでも床に突っ込んでも,それでもボールを落とさない。ここで終わらない。繋いで繋いで,ブロックにかけて,ようやく取った1点はただのサイドアウトの1点でしかなくても,その1点がとても大きくて。
だから,そりゃ選手やファンは,勝ちたかったと思う。メダルはないよりあるほうがいいに決まってる。でも,第4セットを取って,もうそれ以上はない最終セットを見られることになって,わたしは,勝敗どうでもいいや,になっちゃった,かな。
最後は,今度こそ,福山のためのセットだった。たぶん。
早稲田も,よくここまで来たとも思うの。第4セットに加賀が足をいためたみたいで,セット間に治療して無理して出ていた。ほぼOPが使えない状態だった。福山加藤の打数が多いのは,OPの分も彼らが背負っていたからなんだろう。ちびっこ下級生レフトの2人とリベロの後藤は,MBを使えるパスを山口に出し続けた。
第5セットの早稲田の得点は,ほぼ福山と加藤の2人であげている。9-11から福山スパイクで10-11,濱中スパイクミスで11-11,福山ブロックで11-12。明治タイムアウト。
タイムアウト明け,濱中のスパイクで12-12,福山スパイク13-12,明治加藤のスパイクミスで14-12,加藤今度は決めて14-13。
14-13からの早稲田レセプションアタック。山口が福山にあげるのを期待していた。多少サイドを警戒しながら。
すっと真ん中にあげられたボール。矯めて放たれたスパイクはその日一番の鋭さで床を叩いた。
福山の肩にすがって泣く山口の姿とか,4位表彰のあと笑顔で握手を交わした福山と與崎のそれぞれの笑顔とか。応援席に向かっての整列で誰よりも深く頭を下げていた原とか。
この1戦に,この1年の,この4年の,或いは10年くらいのプレーヤー人生の,全てをはき出せただろうか。
決勝戦:中央大学3-0筑波大学
一切メモ取ってないんですが,たぶんそれまでと同じと信じまして(録画見ればわかるんだけど)
中央:14石川 6渡邊 2今村 16武智 13大竹 1関田 L11伊賀
筑波:8中根 5ロジャース(1藤井) 2宮下 7小池 9秦 3兒玉 L16渡辺
中大はピンサで3塚本,25谷口,ワンブロで8井上慎,ワンブロ入れた時にディグが上がって,どうするんかなーと思って見てた。
筑波にとってはしょっぱい試合だった。期待していただけに,残念だった。もっと強くてもっと巧くてもっと楽しいチームなのに,と思うと,地団駄を踏みたい気持ちだった。
でも,それが,インカレのセンターコートの決勝戦,相手が中央大学,という舞台なのだろうなあ。
また来年,かな。
中大の連覇は,驚くことではない。去年とほとんどかわらないメンバーで,各々がさらにパワーアップ・レベルアップしていて,優勝しなかったら嘘になる。そのプレッシャーに全く動じていないところも含めて,ほんとうに強いチームだと思う。
石川が取りざたされた今年の後半。確かに石川はスパイクの音(と球速)が他の選手の比ではなく,彼のスパイクがコートにたたき付けられると場内からどよめきが自然発生するぐらいには恐ろしく異次元にいるんだが,中大が強いのって石川だけじゃないからなあ。石川がいなかった東日本インカレで木曜に負けたゆえの9-16シードではあるけれど,秋は石川だけじゃなくあれこれ不在だった期間も全勝だった。
武智と今村がたまにふかすと,癒やされるもの(軽くdisって……はいない)。そうじゃないと恐ろしさと緊張の連続で気持ちが持たない。
夕飯を食べながら「あそこはミドルだよねー」という話をしていた。大竹も渡邊もでかい。そして2人ともスパイクすごい。大竹のサーブもすごい。でかいから前に立たれるだけでもイヤだ。
上で軽くdisったけれど,武智巧いし(なんか知らんけどじわじわとけっこう好きです)。今村も人間の中ではめっっちゃ強いし。それらに供給しているのが関田なんだから。
めっちゃ悔しい。
個人賞
- ベストスコアラー賞 早稲田#1福山汰一 中央大#14石川祐希
- スパイク賞 早稲田#3加藤久典
- ブロック賞 早稲田#1福山汰一
- サーブ賞 早稲田#1福山汰一
- セッター賞 中央大#1関田誠大
- レシーブ賞 筑波大#2宮下拓也
- リベロ賞 中央大#11伊賀亮平
- 敢闘選手賞 筑波大#2宮下拓也
- MVP 中央大#1関田誠大
- 優勝監督賞 中央大学 松永理生
去年の中大総ナメの記憶が鮮やかなので,おおかた今年もそうだろうとたかをくくっていたらとんでもない。最初の「ベストスコアラー賞,早稲田大学いちばん」のところで「うおおおおおおおおおおおおおお?!!!!!」となった。
福山が,個人賞の話題をかっさらっていった。個人賞表彰の整列,ずらっとあいたところに次々と福山が入っていく。
華やかだった。福山のための3位決定戦で,福山のための個人表彰だった。それぐらいに。
MBがベストスコアラー。聞いたことがない。ブロック賞とサーブ賞との個人三冠ということから,スパイク得点だけでなくブロック得点とサーブ得点によるところ大だろうとは思う。早稲田がベスト4の4チームの中でいちばん消化セット数が多い(総得点も多い)という事情もある。インカレは準決勝以降の4試合だけで算出しているという話も聞く(明確なソースはない)。
それにしたって,ベストスコアラーということは,少なくともチームのベストスコアラーであることは確実で,それがもう驚天動地。
「俺たちのイケメン主将」を慕い,支えてきた3年生以下の顔が,誇らしげだった。
ベストスコアラーはセッターの山口がびっくりするぐらい福山に打たせ続けた成果ではあるけれど,福山のスパイクの助走や踏切の位置,ジャンプの高さ,スイングの鋭さ。サイドから見ていたからわかりづらかったけれど,エンドから見るとスロットも幅がある。
そして,サーブ賞とブロック賞はセット数が多いことがプラスには働かないので,この三冠,やっぱり凄い。サーブ賞は,秋あたりから打ち始めた独特のスパイクサーブに尽きるだろう。ジャンプフローターと普通のジャンプスパイクサーブの中間ぐらいの比較的コンパクトなフォーム・スイングで,やたら速くてやたら威力のあるフローター。
スパイク賞の早稲田加藤も,福山に負けず劣らずの打数で,その中でのスパイク賞。早稲田の両MBのスパイクは(たまにめっちゃ低いしたまにめっちゃ空振りしてるけど)基本的にえらく高い。中央突破の爽快さは格別だった。
セッター賞関田,リベロ賞伊賀は去年のこぴぺ。優勝チームでもあり,まあ,そうかな,と。
敢闘選手賞とレシーブ賞が筑波の宮下。筑波は,決勝戦がしょっぱかったので最終日の印象だけだと評価が下がってしまうけれど,自分が見た4回戦と準決勝は圧倒的に強かった。藤井主将も交替出場で出ていたけれど,ほぼフル出場でサーブにスパイクブロックにと活躍していた宮下に個人賞。
宮下はポジションMBだけれど後衛ではOP的な役回りでリベロと交替せずにバックアタックに入る(ライトの小池がレセプションの要)。「レシーブ賞」は,スコアリングスキルではないこともあり,選出の基準がよくわからんのだけど(去年の武智も),後衛でのディグやブロックフォローが評価されるものだろうか。宮下が,というよりも,ボールを落とさない筑波のディフェンスの,代表で宮下なのかなーという気もする。