北陸新幹線のW7/E7系グランクラスに乗ったよ


JR東海の新幹線のつもりで臨んではならない。


後から考えると,お大尽なのか世間知らずなのか非常識なのかオジョウサマなのか,要するに阿呆である。これが東海道新幹線だったなら,普通車指定席が満席だからといって,グリーン車には乗らないだろう。「グリーン車は高くて,自分が乗るものではない」とわかっているからだ。


はくたか557号。新宿駅で指定席を買おうとしたら,乗り換え時間がぎりぎりのためか,締め切っていた(出てこなかった)。大宮駅まで埼京線で出て乗り換えの窓口で買おうとしたところ,普通車指定席が満席。グリーン車も満席。


自動券売機のタッチパネル「グランクラス △」の部分を,ついタップしてしまった。値段が表示されて,乗車券なしの特急券だけで9せん7ひゃくえんだかの表示に目を剥いたが,背に腹は代えられなかった。普通車指定席が満席,ここは大宮。たとえ1人とはいえ,自由席にあきがあるとは思えなかった。1時間以上立ちっぱなしはイヤだ。


それでも東海道新幹線だったなら立って乗るか(東京-京都間立ちっぱなしの経験は何度かある),いっそ一本遅らせて次の新幹線を選んだだろう。おそらく1つあとの新幹線でも試合開始に少し遅れる程度で済んだはず。


無知って怖い。


でも,結果として,無知ゆえに遠慮せずに飛び乗って正解だった。すごかった。豪華だったし快適だった。隣はグリーンの号車だったけれども,贅沢をするなら思い切って贅沢に振り切ってグランクラスをおすすめする。


中は2:1の1列3席。1席ずつ独立した繭みたいな形。飛行機の一部機体のビジネスクラスのフルフラットシートまではいかないけれど,背もたれ座面フットレスト(?膝から下)を各々角度調節できるので,良い具合に倒せば3秒で寝入れそうな快適な座り心地。フットレストは足置きではなく膝から下が繋がっているのでわたしのような脚が短い人間でもフットレストに届かないということがない(椅子から足が出なかった)。


あしもとに荷物を置いて椅子を倒すと,鞄に手が届かない(笑)。当然前の席の背中には届かない(物入れもない)し,手すりや窓枠がまるいから,手持ちのちょっとした荷物置き場にかえって困るぐらいだった。手すりに小物を入れるポケットはあるんだけども。もちろん電源も取れる。JR西日本のフリーペーパーもあった。


そういったあれこれを何も知らずに飛び乗ったのでアテンドさんに困惑顔をさせてしまった。機内サービス,もとい,車内サービスで,軽食(和食か洋食か選べる。洋食を選んだ。サンドイッチとぶりのムニエルと果物だった)。お茶菓子(パウンドケーキ)。おつまみ(亀田製菓のあられとナッツのミックス)。各一つ。飲み物は,赤ワイン,白ワイン,スパークリングワインもあったかな。ビールに日本酒(たぶん)。ソフトドリンクはコーヒー紅茶ハーブティー,冷たいウーロン茶にオレンジジュースに,コーラ。ジンジャーエールがあったかなかったか。それらがガラスのうつわでサーブされる。


飛行機とちがって離着陸時にはサービスがないなんてことはないので,アテンドさんが飲み物のおかわりを頻繁にききに来てくれる。とはいえ,車内のワゴン販売はないので,静か。


とにかくびっくりして動揺しまくっていた。「軽食どちらになさいますか」ときかれて「要りません」と言ってしまうぐらいには動揺していた。無料サービスでついてくるなんて知らなかったよ。有料かと思ったんだよ朝ご飯食べてたんだよ。乗り換え改札で「△」だったからぽちっただけだよ。わざわざ乗車前に改札内でコーヒー買ったわよ。


普通車指定席の特急料金が3200円ぐらいなので,ざっと3倍。めちゃくちゃ高いんだけど,それだけの価値がある。1度は乗りたいグランクラス。いや,ほんとに。


単に「移動」を「少し快適に」するんじゃなくて,「グランクラスに乗る」というイベント。大宮から長野までの1時間20分,とても心地良かった。ビジネスホテル1泊分と思えば,そんなに高くもないかもしれない。


ソファばりの椅子に埋もれながら,「これでたとい出かけた先に目当ての選手が不在だったとしても,この道中は無駄足にはならない」と満足していた。


なお,帰路は「かがやき」の普通車指定席。こちらは全車指定。油断大敵全車指定。幸い土曜の夜の上りだったので空席があった。普通車ながら,ヘッドレストの位置を自在に調節でき,最前列には壁際に折りたたみのテーブルとは別にドリンクホルダーもついていて,快適な北陸新幹線の旅となった。


せっかく開通したのだから,長野までじゃなく,富山か金沢まで行きたいな。ただしそれをグランクラスでとなるときっととんでもない額になるのだろうから,東京から軽井沢あたりまでくらいがちょうどいいのかもしれない。