2016年度中国大学春季リーグ男子1部・3日目
@岡山大学清水記念体育館
中国リーグの春のリーグ戦を観るのは一昨年以来の2度目。一昨年も同じ岡大の清水記念体育館でした。タクシーの運転手さんに「清水記念体育館」と言ってもぽかんとされます(「体育館」だけのほうが通りがいいようだけど,体育館は複数あるので油断ならない)。岡大のキャンパスは広大で複雑なので,知らん人間が運転手さんに説明するの無理よ。
体育館の構造もわかりづらい。ギャラリーには外階段で2階に上がって2階テラスを横切ってから入るしくみ。土禁なんだけど,よく土禁と言えるわね,という年季の入った埃の積もりっぷり。とうぜん座る席なぞないのだが,柵というか手すりが簡素なものなので通路に直に座ってもコートを全部観られるのが不幸中の幸い。一方あまり前のほうにいると,何かの拍子にバランスを崩したときに落ちそうでけっこう怖い。
入場無料,パンフレットは800円。受付やパンフレット販売は隣の第二体育館でした(女子の試合してた)。
中国男子1部は6チームで,3週(6日間)かけて2回戦総当たりで順位を決定する。5セットマッチを1日5試合やるのは,自分が見聞きする範囲ではここだけだ。各日4チームがダブルヘッダになる。5試合全てが長引くことがない前提で成り立っている方式のように思う。それだけ上位と下位との力の差が大きいリーグではある。
下位2チームが2部上位2チームとの入れ替え戦に回る。
※お名前は原則パンフレット準拠です。明らかに違う人もいると思うのですが確認するすべがないので,積極的にお知らせください。
島根大3-0広島工業大(25-20 25-16 25-12)
のぞみ1号博多行きに乗って,岡山駅到着が9時9分。それから荷物を預けて朝食と昼食とおやつを調達してからタクシーで向かうと,だいたい第1セットの終盤に着く。駅からバスも(わりとたくさん)あるんだけど,めんどうでついタクシーに乗ってしまった。ワンメーターでは着かない。けっこう遠い。
島大は,昨秋萩の対福平戦で見ていいな,と思っていた町川がスタメン(たぶん,宮本が抜けたところに入っている)。対角は伊藤。あとはほぼ去年と同じメンバー。
対戦相手の広工大は,昨秋の入れ替え戦に勝って1部に昇格。まったくの初見でした。
全体的に島大優位に進んだものの,第1セット終盤は,けっこうな点差から広工がキャプテン池内のサーブのローテーションでぐぐっと追い上げていたような気がする。
土曜朝イチだからか,両チーム(そのあとの彼らの試合に比べても)なかなかかみ合わずミスも多かった。わたしが館内に入って居場所を求めて通路をとことこ歩いていたわずかの時間に2回ドリブルを取られたようたん……。
福山平成大3-0広島国際大(25-17 25-14 25-9)
福平)19佐藤 12冨田 11野中 1勝岡 14山本 3川崎 L13矢野
広国)8松田直*1 1佐々木*2 12濱川 11橋本 14松田侑*3 4三田 L13宮本
年に1回(か2回)リーグでちらっと見る広国。過去2年セッターやらサイドやらをしていた中平と,点取り屋だった中野が抜けていた。
得点力面では,ひとりでそうとう稼いでいた中野がいなくなったのは大きな痛手かな,という印象。そのかわりという言い方はアレだけど,レフティオポジットの橋本のサーブ,スパイクが決定力が高く好印象。
平大も大きくメンバーがかわった。去年4年がレギュラーだったセッターと両MBにくわえて迫田が怪我をしているとかで,冨田の対角には3年の山本が入っていた。
この試合に関しては実力差が大きいのでなんとも言えないところはあるんだが,平大は新しいメンバーが機能していてこれはなかなかよい感じと思わせる。
広島大3-0広島工業大(25-14 25-22 25-11)
広大)6遠藤涼 13秦 10遠藤靖 1池田 14金尾 17尾嵜 L7前潟
広工)9日田(8渡部) 4末中 5長畑*4 12蒲原 3東山 1池内 L2清中
広工の12蒲原が,くつひもが蛍光緑で気になった,じゃなくて,跳べるサイドで素敵。きゃぷつんは袖まくり。
広大は比較的昨年メンバーの残存率が高い。檜山氏はご卒業(進学ですかね)でコーチに。コートの中のめちゃめちゃ楽しそうな様子も変わらず,安心の広大クォリティ。
いや,クォリティはむしろ上がっているかも。昨秋に引き続いて学連委員長をおつとめあそばされる山崎がピンサで出てサービスエースを決めたら,全員をなぎ倒す(?)パフォーマンスを披露していた。なんかしらんけど,ブレイク得点時のパフォーマンスのバリエーションが増えてるよ。
広島国際大1-3島根大(29-27 22-25 24-26 23-25)
広国)1佐々木 12濱川 11橋本 14松田侑 4三田 8松田直 L13宮本
島大)10伊藤 15浅尾 5若槻 16町川 14森下 7河村 L3横山/9福田
代替わりしてもプレー中にアチャーと頭を抱えても,やはり多少なり島大のことは(ひっそりと)応援する気持ちで見ている。去年春秋ともに5位。秋4位の広国との直接対決は,順位を上げるためにとりわけ力が入る一戦だった。
今年卒業した(と思われる)としやさんが応援に来ていて,途中いっとき自分のすぐ隣にいたので,めっちゃ緊張しました。一方的に。すごい応援してて,競ったセットを島大が取ってめっちゃ喜んでて,その雰囲気にのせられて自分もめっちゃ(心の中で)応援してました。
両チームボールに食らいついて粘って,ボールを追う様に気持ちが入った熱い試合だった。島大は,第3セットのデュースを制すことができたのが大きかった。第4セットもフルセット寸前の展開だったけれど,僅差でかわしての勝利。1巡目を3-1で勝てたのは大きい。浅尾きゅんさんのブロック効いてた。素敵だ。
そして,対戦相手として見てみて,広国のリベロまじうめえな,と唸っていた。ブロックフォローが神がかっている。アタックラインよりも前で真下に落ちるブロックを完璧に上げたと思えば,次のプレーではエンドライン外まで引いてブロックワンタッチで軌道が変わったボールに飛びついている。セッターが1stタッチしたときにはすかさずセッティングに入る。ちょいちょいアタックライン手前からのジャンプセットを見せるのがかっこいい。
東亜大2-3福山平成大(20-25 26-24 23-25 27-25 12-15)
東亜)6井上 15穐吉 1岡林 13鳥飼 3林 11大宅 L24正近
福平)19佐藤 12冨田 11野中 1勝岡 14山本 3川崎 L13矢野
そのまえの広国-島大も熱戦だったけれど,この試合はさらにどうしようもなく,すごい試合になった。「すごい」しか言えない。うまく言葉で表せない。情動的なやつは項を改めたいが,何を書いてもえもくなる。きっとすぐに忘れてしまうだろうけれど,いろんな観点から自分の心と頭が刺激され,揺さぶられた試合だった。ひたすら得点経過をメモしていたが,終わってみればえもーしょなるでぱっしょなぶるな風が吹き荒れて,メモ帳を開いて事実ベースの何かを書く気分になれない。
東亜だけが飛び抜けている印象があった中国リーグで福平が力をつけて東亜を負かすようになった。実力が拮抗し,お互いに高め合って,見応えのあるハイレベルな戦いが繰り広げられているように見える。
東亜も去年とはかなりメンバーが入れ替わった。第1セットスタメン,サイドは井上,鳥飼,岡林の3人。サイドの選手層が厚く,途中出場の1年の古賀(←東福岡高)も交えて,セットごとにポジションや出場選手が違っていた。昨秋がつんとやられた大川内はリーグ中の故障をまだ引いており,ピンサで入って後衛3ローテのみ出場というパターンが多かったかな。MBは去年から出ている2年の穐吉と,対角に4年の林。リベロが1年(←東福岡高)の正近。そして,セッターがコートに立っている年数は一番長いことになるのかどうなのか,3年の大宅。
余談だけれど,東福岡高校の今年卒業した主力選手のうち,井口,古賀,正近の3人が揃って東亜大に入った。なんつー贅沢な。
ぽこっと1試合だけ観に来た関東者が1試合だけ観て何か言えることなんてないんだけども。師匠たちから聞いた話も総合して,この2チーム,似てる部分が多いんかな,と思って観ていた。
たとえば,サイドからMBへのコンバート組。福平の川崎,東亜の林。サーブのあとラリーが続けばトランジションアタックにバックセンターから助走に入るのがわくわくする。
川崎は前衛サイドからのスパイクも多かった。川崎がレフトに開くとまんなかはあくんだけど,真ん中はほら,冨田とか冨田とか冨田とかおるし。でもセンターのクイックにも入るしブロードにも入る。横幅の広さが凄い。
もうひとつは,故障者。福平の迫田,東亜の大川内。彼らを欠いて力が落ちているのはなく出ている選手が出つづけることで力を伸ばしているように見えた。福平の山本にしても東亜の井上にしても,去年も交代出場などで少しはプレーを観ていたはずだけれど,そのときの印象より断然グレードアップしていた。怪我が治ったら即スタメン復帰確実というほどの差が今もそこにあるかどうかは知らんけど,あったとしてもチームの底上げにはなってるんやろうなーと思う。
結果論で言えば,勝った福平のほうが強いということになる。この試合わたしは途中からかなり東亜よりで観ていたので,勝てなかった悔しさのかけらを味わうことになった。
絶対的な差なんてないと思うし,なにが勝因かはわからないけれど,サーブとブロックで福平が上回っていたかな,と。冨田・山本筆頭のジャンプスパイクサーブ組は文字通りレシーバーをぶっ飛ばしコートを薙ぎ払い,一方でフローター組がミカサボールの嫌らしい取りづらいコントロールサーブでカットを崩し,そしてブロック。MBの野中が(さきの試合でも書いたけど),サーブよしブロックよしでなー。めためたやられた。キルブロックも多かったし,ブロックワンタッチ→矢野→冨田→無理。みたいな。とにかく冨田がおかしかった。
この試合,究極は冨田のえぐさに行き着く。たかき氏はわりと波があるつーか調子が落ちるとスパイクミスが増えて自滅しちゃう傾向が認められるような記憶がなくもないんだけど,この試合は5セットやって最初から最後まで鬼神モードのままだった。サーブミスが非常に少なく,サービスエースを量産。サーブから調子をあげていき,スパイクも手がつけられない状態に。ブロックが何枚つこうが止められない止まらない。がくっと調子を崩すことがなかった。今年からセッターが変わったのに,なのか,だから,なのか,上級生になったからか知らんが,ほんとにもう。
一方の東亜は,サイドアタッカー陣を駆使して戦っていた。ここは苦肉の策というよりもポジティブな意味あいでとらえたい。とりわけ古賀は鮮烈だった。えぐいサーブえぐいスパイク。冨田に比べると「当たれば」度合いが大きかったが,それでも春高なり天皇杯なりでちら見したときの猛烈な波の大きさを思えば,だんぜん安定していた。冨田がおかしかっただけだ。
第5セットの最後は古賀の3連続被ブロックだった。わたしは気づいていなかったんだけども岡林がベンチに下がっていたそうな。ほぼ古賀しか選択肢がないところで古賀に上がり,がっつりブロックにつかれて止められる。それを3連続というのは大宅さん,ライオンのおかあさんが仔ライオンを谷に落とすというアレですか。
冗談はさておき(あながち冗談でもないけれど)古賀個人のどうこうじゃなくてベンチワークやトスワークの比重が大きかろう。新入生が4月半ばで負う責任じゃなかろ。おそらく東亜側はどこに力点を置いて布陣を敷くかというのをずっとやっていて,いろいろな選手交代もたぶんそれ。福平の多様なサーブへの対応を最優先にするのか,相手のスパイクに対応するのか(誰の,とか,どの,とか,まあいろいろ),こちらのスパイクを優先するのか。「これで完璧」という一つのかたちがあるわけではなく,あるかもしれないけどそれを模索する段階が春の1巡目でしょうとも。
古賀しか選択肢がなくなっていた時点で,詰め将棋的な意味合いですでに大勢は決していたということでしょう。そりゃもちろん「それでも打ち切れるエース」のきらめきはいかばかりかというのもわからんでもないが。
試合後の古賀はべこべこに凹んでいたが,そこで涙する古賀を好ましく思う。詰め将棋的な意味合いで負け,と書いてはみたが,目先の春の1巡目の対戦ではなくこの先を見据えたとき,シャットアウトをくらってでも古賀,は敢えての選択だったのかもしれない,と,のんきな外野としては思うわけ。