まつばやし。


今年もこの季節になりました。開幕が近づきV・チャレンジ界隈からぼちぼち現役4年生(not インターン)の選手登録が始まりつつある中,V・プレミア各チームの新入団選手動向が注目されていたところ,例年発表が早めのサントリーサンバーズが本日先陣を切りました。


新入団選手のお知らせ。


2017年度 新入団選手のお知らせ 2016 ニュース SUNBIRDS サントリー


小川猛(専修大),加藤久典(早稲田大),松林憲太郎(東海大)の3名。


松林。


夕方,出先からオフィスに戻る電車の中でこれを見て,全く心の準備ができていなかったものだから(ちょっと疲れていたのもあって)頭の中がこのことでいっぱいになってしまいました。


そういう時期(内定式が終わった,とも言う)であることをわかっていたはずなのに,油断していた。


どこかプレミアのチームに行くっぽい雰囲気は察知していたから,その点では驚かない(というか「心配していなかった」)んだけど。行き先も,想定外とはいえないんだけど。事前情報を掴んでいなかったので「うん,知ってた」とはならず,まあ,それなりに。はい。他の面々のほうがより驚いてるのが正直なところではあるのですが。はい。


松林が好きです。たぶん。


そんなにめちゃめちゃ好きなわけじゃないけど,たぶん,けっこう好きです。


最初に見たのは2013年。1年次の東日本インカレだった。


http://d.hatena.ne.jp/cana/20130622#p1


当時の記録によると,春リーグのあとでMBの鈴木しょーたがやめ,MBに池田,あいたOPに松林という布陣で臨んだようだ。2012-13ごろの東海大は,2011年の全日本インカレ優勝のあと優勝メンバーから4年生スタメン4人が一気に抜けたこともあり,(東海大にしては)成績が低迷した,しんどい時期だった。


松林に対しては良い印象を持ったようではあるが,しかし,試合そのものの記憶はほとんどない。


それよりも,その後縁あって,3回戦で東海大を破ってベスト8入りした仙台大の監督にお話を伺ったときに松林の名前が出たことが印象深い。それがわたしの松林の印象を決定づけ,今でも尾を引いている。


「松林っているでしょう,東北高校出身の」


東海大に勝った試合を振り返ってくださいとお願いしたら,監督はそう仰った。仙台大の,つまり,東北出身者が揃っている選手たちは,松林のことはよく知っていたから,と。


その心まではわからない。「よくわからない関東の(雲の上の)強豪」ではなかったということなのか,対策を知っていたのか,さほどのものでないと思っていた,のか。


わからないけれど,くすり,と笑ってしまった。


それから迎えた長丁場の秋リーグも4週目まではOPで出ていたが例によってチーム成績は奮わず,最終週とその後の全日本インカレではスタメンから外れている。


翌2014年,2年生になって(鶴田が抜け)久原と対角を組むようになった。新入生に龍一誠を得て,チーム成績は上向き始める。春2位,東カレベスト8,秋優勝。すでに当時の2年生がチームの中心と言って過言でなかった。玄人好みの久原や,神業のディグでコートを後ろから操る井上,そして龍一誠が1年生らしからぬふてぶてしさを見せるなかで,松林は,松林だった。


たとえば,サーブがぜんぜん入らなくてスパイクも決まらなくて調子が上がらなくて,セット終盤相手がすでに24点取っている局面でサーブ順が回ってくる。所謂「入れてけサーブは万死に値する」場面で,ほんとに入れるだけのサーブを打つことがしばしばあった。それまでスパイクサーブを(全く決まらないけど)打っていたのに。当時のわたしは今と違って強打サーブ原理主義者だったので,よけいに「まつばがチキった」とカリカリしていた。


ややチキンハートでちょっぴりおとうふメンタル。わたしの中ではあべじゅんの位置づけだった。残念なところがあるけれど憎めない,そんなポジション。


いや,いい選手なんだよ,すごいんだよ。でもちょっと,弱いところがあったんだよ。


その後3年生,4年生と,学年が上がるにつれて,彼の良さが磨かれ,存在感やたくましさが増してきたのだと思う。


今でも調子の波が小さいとは言いかねるけれど,安定しているとは言いがたいけれど,波が高いときの高さが半端なく高くて,とても魅力的だ。たった1試合でいい。なんなら1セットでもいい。彼が乗っている姿を見られたら,きっと虜になる。


誰も止められない。色白の鬼神がコート上の空間を支配する。そこには何か得体の知れないものが宿っていて,スパイクは触れたら切れそうで。感電しそうで。誰も止められなくて止めたくない。


たまにね,そういうんがあるんよ。だから嫌いになれないし,もっともっとと期待してしまう。


サントリー。V・プレミアの人気チーム。昨季は7位だったけれど,そこでもだもだしているチームではないだろう。


嬉しいといえば嬉しい。不安といえば不安。楽しみといえば楽しみ。寂しいといえば寂しい。いろんな感情を呼び覚まそうとすれば呼び覚ませるけれど,そのどれでもなく,入り乱れて混乱しているのではなく,ただ,「ああ,そうか。そうなんだ」と。何も考えられないでいる。


わたしは東海大のファンではないけれど,なぜか,たまたま,ハマり具合が深い選手に当たる。歴代の選手と比べてまつば沼はそれほど深くないはずだけれど,今回の発表で頭のなかを突風が吹き抜けて真っ白になった挙げ句に一瞬凪いでしまったことを考えると,これから全日本インカレまでの間に,ずぶずぶ自家中毒でハマっていくような厭な予感がある。


身長185cm,最高到達点347cm。東北色白美人。身長はけして高くない。どちらかというと低い。そのわりに最高到達点は高いけれど,「ちっこいけれどよく跳ぶ」とも,ちょっと違う。頭を使った巧みなプレーとも,違う。むしろ3枚ブロックに真っ正面から突っ込んじゃうような,来たボールをとにかく思い切り叩きつけちゃうような,どちらかというとそういうタイプ。本人の調子がよければぶち抜くかブロックアウトを取れるし,調子が悪ければシャットされる。もっと(メンタルの)調子が悪ければブロックをいやがってスパイクアウトを量産するし,それもいやがれば今度は拾われる。


おかしいな,褒めてないな。大好きだとか愛しているだとか,臆面もなく言っているのにな。


でも,好きなんだよな。


来年より後の松林が楽しみな気持ちは嘘じゃないけれど,今の松林を見られるのは今年いっぱいで,それはもう避けようがないことで,だから,あと少しの限られた時間をめいっぱい楽しみたいと思う。