2017全日本大学選手権・6日目(3位決定戦・決勝戦)
最終日です。特設コート。以前男女共催だったときと同様に,男子3決→女子3決→女子決勝→男子決勝→表彰式・閉会式。
3決のあとMIP賞と4位表彰。3位表彰は表彰式・閉会式にて。
床は板張り。アリーナ席(主審側)は応援団席。
男子3位決定戦:中央大3-0東海大(25-22 25-17 25-22)
T) 2宮原 1小野寺 30新井 26島田 4神谷(2s途中-12佐藤) 13永露(3s途中-7龍) L29外崎
C) 5山下 1石川 3平田 2大竹 4武智 18水野 L9柳田/27土岐
東海大は,セッター永露。今大会どちらも出てはいるがどちらかといえば龍が多かったようだったので(1回戦2回戦は見てないけど),来季を見据えた3位決定戦なのかな,と,いささか淋しく感じたり。
ポジション5には島田。こちらも大会の前半は(見ていないので)わからないが,春・秋リーグ(東日本インカレもかな)および3回戦以降でのスタメン出場はおそらく初めて。前日の準決勝では伊藤が入っていたポジション,準々決勝では後衛の守備固め的に伊藤にかえて島田を起用していたので*2,この試合では最初から作戦としてのレシーブ重視といった布陣だったか。
その島田は,月並みな言い方をすれば起用にこたえ,中央大の強力なサーブを安定して返していた。スパイクも打数は少ない(し決定率もさほど高くはないだろう)がまずまず。ゆいいつサーブはあまり効果的でなかったが,これは島田に限らず,だったので。なんとも。
しかし,宮原・島田とややレシーブよりの選手で両OHを固めたにもかかわらず,だ。MBのスパイクが効かないとその布陣は意味をなさぬ。自然トスはOP新井に偏重し,3枚ブロックがつくことになった。中央大のサーブは強力かもしれないが,返っていないわけではない。コンビを使うのは難しいとかいろいろいろいろあるとは思うが,厳しかった。龍一誠でスタートし,トスが不安定になってきたところで永露にかえて奏功した準々決勝を思えば,今日の永露のトスが不安定になっても最終盤まで永露で通したことには,ひどく残念におもった。
とはいえ,事情はあるのだろう。あとになって思い出したが,準決勝戦の後で膝をぐるぐるにアイシングしていたのだ。セッターが。いためていたのかもしれぬ。むしろ最後は無理をして出たのかもしれぬ。第3セット17-22だったかな。で,出たときには,逆転でのセット取得もしんどい点差になっていた。
それでも龍一誠は龍一誠だった。佐藤謙次への小気味良いCクイック。小野寺とのホットライン。絶対的な指標として龍と永露とどちら「が」いいというのは全然ない。去年まではともかく,今年は永露メインで上げる試合が多く,永露いいな,と思うこともたくさんあったし,途中で龍が入って好転しないことも多かった。去年までのすごく輝いているプレーはそう多くは見られなかった。
今日も奇跡の逆転なんて起きなかったけれど,最後にそのプレーを見て,やはり見ていて楽しいセッターだったと過去形で再確認した。4年間でどんどん変化し進化したサーブ,勘の良さ,柔らかさと気の強さ。ほんとに,ほんとに,彼の両手から放たれるボールは,心なしか弾んで見えた。
交替遅いよって思った。もう少し彼のプレーを見たかった。あと1セットでもいいから。
みたいな話を延々と書くと延々と書いてしまうのでこのくらいにしておこう。双方の戦術なりなんなり,気になることや語りたいことは尽きないが,どうしたって3位決定戦だ。天皇杯ファイナルもない東海大にとってこのチームでの最後の公式戦だったが,一方の中央大も,天皇杯ファイナルには出るものの,やはりこのメンバーで戦うのは最後(石川はブロックラウンドにメンバー登録されていないし,大竹もドイツに戻った様子)。
今年数えるほどしかなかった,4年生が全員揃ったコート。最後に勝って終われて良かった。山下は最後の得点を武智に託した。1本目をスパイクミスした武智をみて,ああもうほんとに武智だよ,と思った。武智大好きだ。そういうところも含めて。
2度目の正直で25点目を取り,武智の目には涙が浮かんでいた,んだと思う。遠くから見ていたのでよく分からないけれど。他人のひたむきさを自分の娯楽に消費することに軽く罪悪感を覚えるのだが,インカレ3位決定戦の勝者が流す涙は,優勝チームとも敗者とも違っていて,それは言うなれば,十代から二十代のはじめを捧げた部活や青春の結晶なのだろう。
試合後のインタビュー,主将武智のインタビューは場内にマイクの音声が出ていなかったようで,まあなんとも武智だねえ……。2番手の大竹は様々な質問にしっかりと応じたあと(この人,わりかしきちんと長めに喋る印象),来年からも中央大学を応援してくださいと締めくくった。
最後にインタビューに応じた石川はほんとにぐだ泣きで,しばらく声を発することもできなかった。わたしには彼の胸に去来するものを想像することもできない。ただ,大学バレー界が石川フィーバーに振り回された(と言っていいよね)この4年,とくに一昨年秋の大騒動を思い返し,さらに日本代表選手としての石川を取り巻くあれこれを思い出していた。そういう状況全体に辟易しても,自分の既得権益が脅かされることを不満に思っても,だからといって石川本人のことを悪くは思えないし嫌いにはなれない。それが本人にとっていいことなのか或いはどうでもいいことなのか,それはわからない。
MIP賞:中央2大竹
女子3位決定戦:嘉悦大3-0鹿屋体育大
女子決勝戦:青山学院3-2筑波大
男子決勝戦:早稲田3-0筑波大(25-20 25-21 25-18)
Tsu) 4中根 2秦 13田城 1小池 17小澤 7樋口 L15高橋
W) 9藤中 13武藤 20宮浦 4加賀 19村山 10小林 L14堀江
筑波大は,一昨年の決勝戦と,悪い意味で同じだった。隣で一緒にみてくれていた筑波応援勢は,負けた悔しさよりも今年のワーストが今日であることが悔しいと言っていた。
そういうのって主観なので,きっとそこまで悪くもなかったと思うのだけれども,前日中央大を破った試合と比べると,たしかに,物足りなかった。中大戦は第1セットからずっと競っていたので大きなビハインドがなかったが,今日は逆に,序盤から早稲田にじりじりと点差をつけられて,筑波は後手後手に回り,焦りがプレーに出るという,完全に悪いスパイラルに陥っていた。2セットダウンから逆転したといっても内容が違っていて,それゆえか,第3セットになると,ちょっとしたプレーが粗くなっていって,なんとも筑波らしくない。
東日本インカレ,秋リーグに続き,3回目の2位。筑波はいい選手がいて,興味深いバレーをして,強くて,楽しい。それでも優勝は斯くも遠い。
山を越えたあとの難しさ。連戦続きでのフルセットゲームの翌日。
それだけ早稲田がうまかったのだろうか。試合展開そのものは,早稲田が良いというよりも筑波の自滅のように見えたので(オポネントエラーが多そうな),前日のような早稲田の面々の大活躍といった風ではなかった。
東日本インカレまでは,喜入,山崎,加賀の3人が揃ってコートに立っていたが,秋リーグから,村山,宮浦二人の1年生がスタメンになった。喜入も山崎も,アップゾーンで,バックアップの役割を担っていた。
そして秋リーグ優勝。4年生最後の大会であるインカレでもそれはかわらなかった。たしかに,村山も宮浦もすごくいい。まだまだ1年生らしい伸びしろはあるが,今日の試合でも二人のプレー面での貢献はとても大きかった。二人ともサーブに威力があるし,左利きOPの宮浦のスパイクはびっくりするコースに打ってくる。村山が稼いだブロックは(ブロック賞ですわ)試合を優位に進めた。
MVPは主将の喜入だが,喜入はあまり試合には出ていない。サントリーにリベロでの加入が発表されており,スパイカーとしては最後の大会だった。第3セットの終盤,23-16で,加賀と交替してコートに立ったが,24点目は同時にコートインした山崎が決めて,上がるなら喜入だろうとおそらく場内の誰もが思っていた25点目は,小池のエンドラインを攻めたサーブがラインを割って,喜入がボールを触る前に試合終了となった。
1年生が試合でのびのびプレーできていたのが早稲田のチーム力で,させていたのが4年生の力だろう。喜入も山崎も,1年生の二人と比べてけして見劣りする選手ではない。それでもこのスタメンで通しきった早稲田の強さを想った。まちがいなく全員で掴んだ優勝だ。
早稲田に,天皇杯ファイナルに出てほしいと思った。今日の試合では見ているこちらがいささか不完全燃焼だった。代表決定戦で日体大に敗れたのだから出られないのは自業自得なんだけど,せっかく優勝したのにね,って,ちょっとだけ。でも,天皇杯は負けて終わる可能性が限りなく高い。だから,これはこれで。
コートに立つ4年生が減った中での加賀の活躍と頼もしさがかっこよかった秋以降の早稲田だが,左打ちOPの武藤の活躍も目立った。武藤と宮浦が二人揃って跳んでるところとか,どうしたらいいのか。堀江のリベロぶりも良い。セッター小林もなんだかんだ言われなくなったような気がする。ハッピーセットが引退するのは淋しいけれど,来年の早稲田も楽しみだ。
MIP賞:早稲田4加賀
男子最終結果
優勝:早稲田大学
準優勝:筑波大学
第3位:中央大学
第4位:東海大学
第5位(ベスト8):東京学芸大学,日本体育大学,日本大学,関西学院大学 (関東3,関西1)
第9位(ベスト16):駒澤大学,順天堂大学,明治大学,大同大学,大阪商業大学,近畿大学,東亜大学,福山平成大学 (関東3,東海1,関西2,中国2)
男子個人賞
- 最優秀選手賞:喜入祥充(早稲田大学#1)
- 敢闘選手賞:中根聡太(筑波大学#4)
- ベストスコアラー:石川祐希(中央大学#1)
- スパイク賞:石川祐希(中央大学#1)
- ブロック賞:村山豪(早稲田大学#19)
- サーブ賞:小澤宙輝(筑波大学#17)
- セッター賞:中根聡太(筑波大学#4)
- レシーブ賞:加賀優太(早稲田大学#4)
- リベロ賞:堀江友裕(早稲田大学#14)
- 優勝監督賞:松井泰二(早稲田大学)
MVPと敢闘選手賞は両チームのキャプテンに。喜入はほとんど出場していないのでどうするだろうと思っていたが,レシーブ賞が発表されたときにMVP喜入と予想した(ら,当たった)。
監督推薦で決まると(3年前の会長挨拶で)聞いた。試合で活躍した選手にはMIP賞がある。大会を通じて,いや,1年を通じて最も優勝に「貢献した」選手に贈られる賞であれば,コートに立つ立たないは関係ないかな,という
わたしはこういうお約束にどっぷり保守るほうなので,喜入MVPにも納得している。もちろん主将じゃないMVPでもいい。(でも3年前の1件は未だに気にくわない)。
しかし,ここ数年の全カレのレシーブ賞ってけっこう,謎よね。スコアで決まる賞でないがゆえに,準最優秀or準敢闘選手賞っぽい使われ方をしているように見える。14武智,15宮下,16武智,17加賀。「不適当と言いたいほどではないのですが,レシーブ賞という言葉のイメージだけで考えるとほかにも相応しい選手がいるように思えなくもないのですが,いえ,けして不満ではございませんが」と控えめに申し上げたい感じ。特に15宮下は場内に衝撃が走った。
そもそも「レシーブ賞」って何なんだろう。
*1:こっそりうかがったところによると体育館備品との由。
*2:なぜそれを準決勝でやらなかったのかと小一時間問い詰めたいのだがそれはそれ。