映画「ピーターラビット」(字幕版も観たよ)


ネタバレだよ。書きかけだよ。


去る9日に吹き替え版を観た。好き。すごく楽しくておかしくてかわいかったから,字幕版も観たくなった。


時間が合いそうになくそろそろ公開終了も近そうなので諦めていたのだが,たまたま,日曜の夜の回があったので,観てきた。


結論から言うと,自分の今の英語力では,字幕版は厳しかった。音声(英語)が何の意味もなさず専ら字幕の文字を追うことに意識を奪われ,画面のほかの要素を見落としがちになる。今回は,さきに吹き替え版を観たあとの2度目だから大丈夫だったけれど,字幕だけだと厳しい。ミュージカルっぽい演出なのに歌詞が全く聞き取れないのもつらい。


語学力だいじ。


それはそれとして,映画はすごく楽しい。「ピーターラビット」というタイトルと絵本原作であることから想起されるふわふわしたハートウォーミングなストーリーからとはぜんぜん違っていて,それが良い。そもそも「観に行こうか」という話になったのも,Twitterで評判だったからだ。ウサギとヒトとのシマ(畑)を賭けた抗争だとか,仁義なき戦いだとか,ウサギがマジ畜生だとか,そっち方向で。


原作は遠い昔に読んだきり忘れてしまったけれど,けっこう骨太だった記憶はある。ファンタジックではありながら,動物界の残酷さがあったり,登場する動物たちは悪い意味でも大人の人間臭さが感じられたりと,けしてふわふわはしたものではなかった。


それに,なんたって,実写だ。上着こそ着ているけれど,リアルな毛並みのリアルなウサギ。二足歩行したり服を着たり喋ったり,人間みたいな表情やしぐさをするところと,走るシーンのおしりがもこもこしている動物ウサギ感が兼ね備わっていてキュート。


動物たちの世界にいるときのウサギは二足歩行で言葉を自在に操り,一方ヒトと接触するシーンでは(たまに二足歩行するが)概ね四足歩行で喋ることもなく,ヒトから見たウサギの姿に近く描かれている。実写でファンタジーの世界の行き来のバランスが絶妙。逆に,ウサギ以外の動物たちは,ヒトと直接交わるシーンが少なくてほぼ「動物たちの世界」でだけ出てくるので,擬人化デフォルメが強い。


子どもでも飽きずに観られる(といいな)のぎゅぎゅっと詰まった展開で,予告編から観ても2時間かからない。エンドロールがおそろしく長いので,正味90分ぐらいかな。


雀の歌で始まり,時折歌が挟まる。ミュージカル映画,までは行かないけれど,動物たちの宴会のシーンなんかは,そういう雰囲気もあって,楽しい。テーマソングの「I Promise You」が素敵。邦訳も。


メタジョークも楽しい。吹き替え版の冒頭に出てくる「ごめんね,この映画はそんな教育的な映画じゃないの!」が最高。


鶏も楽しい。難しいことを言っている。朝が来るたびに絶望しているのにひよこの数はどんどん増える。


アクションも楽しい。描写は,少年漫画っぽい。カートゥーンっぽい,といった方がいいのか。大げさで,けろっとしていて,楽しい。


冒険もあるし友情もある。


ピーターにつきあわされる,ベンジャミンもかわいい。友情に厚く良識もあるが,それを「そういうキャラだから」。かっこいい。ピーターは自信過剰な嫌なやつだけど,憎めない。


そして出てくるヒトはたいてぶっとんでいる。ビアとマクレガーはかなりの変人で,ハロッズのボスもタクシー運転手も,街ですれ違うカップルも,みんなおかしい。


ウサギとヒトとの争いは,どう考えてもウサギが悪い。ウサギはウサギ特有の(考え無しで身勝手な)理由で本気でヒトを排除しようとする。ピーターはほんとうに悪いウサギだけれど,悪いことを悪かったと認めてごめんなさいができた点は教育的な映画だと思うし,ハッピーエンドといえばハッピーエンドなわけで,そういう意味でも,見終わってみれば「ウサギとヒトとのハートフルストーリー」で,けして間違いではない,という。