公文協主催松竹歌舞伎巡業東コース


江戸川区総合文化センター


どうやら歌舞伎の巡業を観に行くのは2012年の板橋以来のようで,6年も経っていた。


彦三郎が7月は巡業(東コース)に出るというので,土日の東京近郊で探したところ,初日の江戸川か29日の練馬か,というところ。後回しにしないほうがよかろうと初日夜の部に行くことにした。昼と夜の公演内容は同じ。夜は16時半開演で終演は19時半ごろということで,A席(たしかS席があったので2等)3000円にしてはコスパがいい。最後列だったけど。


23区内ならなんとかなるじゃろうと会場も確認せずに当日を迎え,案外遠いことを知る。それでも家から1時間強。最寄りは総武線新小岩だけれど駅から1.2km。関東甲信地方が梅雨明けし,気温30℃を越す(まだ身体は慣れていない)昼下がりに1km以上歩きたくない。都営新宿線の船堀から新小岩方面のバスがあったので,それに乗って近く(江戸川高校前)で降車し,そこから歩いた。文化センターまでは水辺の公園沿いの小径をたどって5分ぐらい。木陰と川のせせらぎが心地良く,土曜の午後を過ごす家族連れなどでのどかな雰囲気だった。


終演後は歩く覚悟でいたが,貸し切りバスを用意してくれていた。事前予約制の先着定員75名(ぎゅうぎゅう)。船堀,小岩,新小岩の3ルートあったが,所用ありて船堀ではなく新小岩に向かう。


新小岩の駅目の前には長い商店街のアーケード。どこにでもあるようなフランチャイズ店もあれば個人商店もある。なんとも「地方都市」の趣で,ああこれは確かに「巡業」だ,と感じた。井之頭五郎のように商店街のなかの飲食店に飛び込んでみるのも楽しそうだったが,新小岩では所用を済ませられなかったので新宿に向かう。総武線と(お茶の水から)中央線を乗り継いで新宿まで40分。東京の東の端の端。黄色い電車に乗りっぱなしでいいし錦糸町までならよく行くので心的距離は埼玉や神奈川より近いものの,所要時間を見るとなかなかどうしてけっこう遠かった。

近江のお兼


近江のお兼:梅枝


チキンなので,まだ,イヤホンガイドを手放せない。預かり金なしで700円(プログラムは1300円。チケット価格は安いがこのへんは本公演と変わらないのでちょっぴり割高感。)。所作事2つは高木美智子氏の解説だった。よく喋る。


梅枝が踊っていた。かわいい。オペラグラスを忘れてしまったため最後尾からは細かいところはろくすっぽ見えない。ひっきりなしの解説が少々アレだったので,耳から外したり戻したりしつつ。


幕間15分。物販でどら焼きだかダックワーズだか。

御所五郎蔵


御所五郎蔵:菊之助,土影土右衛門:彦三郎,傾城皐月:梅枝,傾城逢州:米吉


河竹黙阿弥の作とのことで,河竹黙阿弥らしい七五調。渡り台詞も盛りだくさん。両花道を使って,菊之助の御所五郎蔵率いる男伊達と,彦三郎の星影土右衛門とその弟子たちとがずらっと並んだところは壮観。


目が悪くてよく見えていないなかで,下手側の先頭の人(星影土右衛門)の第一声を聞いて「うわ,すごい良い声」と惚れ惚れしたらそれが彦三郎だった。自分が下手寄りの席だったのでよく聞こえたというのはあるのだが,改めて良き声であることよ。


梅枝と米吉が傾城の役。米吉さんの,女方じゃなくて女優なんじゃないかと疑いたくなるぐらいの自然な女の子らしさはすごい。こんなにかわいらしくてしかも同僚によくしてくれるぐらい人柄も良い傾城ならば,そりゃあ,お殿様(?)も入れあげるし借金も作るわ,と同情を禁じ得ない。


幕切れが「え,これでおしまい?」という,なんていうか「さあ,この戦いの行方は?!」となって「待て次号」ではなく「終」だった感。ほんとの大詰は別にあるのか,それともこういう筋なのか(プログラムをまだ見ていない)。

高坏


次郎冠者:菊之助 高足売:萬太郎 次郎冠者:橘太郎 大名某:團蔵


楽しく笑って打ち出し,という,巡業っぽいプログラム。松羽目物っぽいけど背景は満開の桜。台詞も多くてわかりやすい。


橘太郎丈が良い仕事。萬太郎もかわいい。


そして,菊之助。酔っ払っている菊之助がたいそうかわいい。酔っ払って高下駄でタップダンスを踊る。たいへんかわいい。