2021/22Vチャレンジマッチ・2日目
@小田原アリーナ
結果が出てしまえば、すべては結果論になる。
アイシンの(審査が下りれば正式に)V2昇格、VC長野と大分三好のいずれもV1残留。
初日のフルセットマッチを制したヴォレアス北海道と富士通カワサキレッドスピリッツはいずれも、V1の壁の前に涙を呑んだ。我ながら陳腐な表現だ。
トヨタ自動車サンホークス(V2・10位) 0-3 アイシンティルマーレ(V3・1位)
前日と同じルートで向かったのに小田原でうまく乗り継げなくて、遅刻したでござる。
1日目が終わった時点で得点率差が大きく、2日目で逆転するにはかなり厳しい状況だった。
2日目も、第1セットからずっとアイシンがリードする展開。
自動車、前日よりは良かったのかなあ。良かったような気はするけれど。
たぶん感染拡大しないためといった理由があるのだろうけれど、自動車は応援団が来ていなかった。一方のアイシンは、ぎっしりではないものの応援団席に人もいたし、応援Tシャツ(1000円。素敵施策)も売っていた。
アイシン側も声を出しての応援はできないし音楽も入っていない、だから、アイシンホーム&自動車アウェイというほどではないものの、自動車ちゃんたちは、自分たちが上位カテゴリでセントラル開催の試合なのに、広い小田原アリーナのセンターコートで、なんだか孤立無援に見えた。
あとで思ったんだけど、音楽やアナウンスの盛り上げ効果って、あまり意識していないけれど、大きいんだな、と。とくに広い会場の場合は。
自動車ちゃんたちが声を出して気を吐いてプレーしていても、遠いスタンド席までは届かなくて、覇気が薄く見えてしまう。
第1セットをアイシンが取ってアイシンの昇格が決定したときも、両チーム、どことなく恬淡として見えた。
アイシンは前日勝った時にはもう少し喜んでいたような気もするけど、昨日もめっちゃ点差つけてのストレート勝ち、今日の第1セットもリードを許すこともなかった(と思う)から、喜びを爆発させるようなタイミングがなかったな、とは。
第2セットが始まるまえに、自動車ベンチは、このまま終わらないよ、みたいな声出しをしていたけれど、点差こそ前日より小さかったものの、2日連続のストレート負けだった。
アイシンは試合後半はベンチの選手も出して、ベンチ入り全員出たのかな。
VOMインタビューで、鈴木康平が、自分がこのチームに関わって十余年、この日のために(ここに立つために、だったか)ずっと頑張ってきた、と、昇格の喜びを、これまでの年月を噛み締めるように語った。涙声だった。
暗くて狭くてひたすら寒い、いまはもうない君津の体育館で東部決勝リーグを観ていた頃を思い出す。あの頃から、中大オールスターズではあったよな。達川とか。
Vリーグ参戦を決めて、チーム名に愛称がつき、立派なWebサイトができ、イメージカラーやマスコットキャラクターができ、中央大以外からも関東の1部の主力選手が数多く加入し、参戦2シーズン目(初年度は辞退)で優勝・昇格と、その航海は順風満帆に見える。船出に至る過程の様々な大変なことに、彼はずっと対応してきたのだろう。
その努力は今日実を結び、そして、新たなステージで、新たな戦いが始まる。
アイシン:2勝6ポイント(V2昇格)
トヨタ自動車:0勝0ポイント
VC長野トライデンツ(V1・10位) 3-2 ヴォレアス北海道(V2・1位)
35-37
25-19
22-25
25-14
15-10
VC長野:1勝1敗3ポイント 得点率1.44(V1残留)
ヴォレアス北海道:1勝1敗3ポイント 得点率0.65
長野:森崎 リヴァン 池田幸 三輪 山岸 伊藤 L藤中
北海道:浜田 佐々木 田城 張 越川 柏田 L渡辺
「後からならなんとでも言える」が「後からいろいろ言いたい」試合だった。
この試合のVOMインタビューで池田が言っていたのかこのあとの試合のVOMインタビューで大分の山田が言っていたの忘れたが、カテゴリが違うと戦い方のセオリーが違うので、戦いづらい。地力に差があっても初戦で苦労するのはその辺りにも理由があろう。
それで言えばVC長野はMBのカラーがV1「らしく」ないように思うが、VC長野が土俵際で踏みとどまったのはMBの活躍が大きかったし、数字の上でVC長野とヴォレアス北海道の差はMBのスパイク得点に顕著だった点が趣深い。
ヴォレアス北海道のほうが、よほどV1っぽい構成だな、と感じていた。V1のセオリーに似ているなら、VC長野にとっては戦いやすいんじゃないかな、と。
でもほんとに結果論でしかなくて、ヴォレアスが昇格決定していたら今日書いてる内容全然違ったものになったと思う。だって、チャンは全く止められる気配がなかった。47打数(チーム打数の36%)で決定率61.7%。チャンはフリー打撃状態だし、チャンにもっていくまでのリベロの渡辺俊介とアウトサイドの越川・佐々木の3人の安定感、何より醸し出す圧が強すぎた。
VC長野の「ぽくない」MB。アタック得点は森崎12/12(100%!),三輪15/19(78.9%)。三輪の打数はアウトサイドの伊藤(7/17)よりも多い。VC長野の攻撃面でのウィークポイントは伊藤で対角の池田もまあぼちぼちというなかではMBのスパイクは見せ球でも囮でもない。そんなことしてる余裕はない。
とくに1・2セット目の三輪は打ち放題打っていた。第2セット、ヴォレアスが同一ラリー中に柏田に3回あげて3回ともちゃんとヒットしなかった次のラリーで山岸が森崎にあげたときは、嫌味か、嫌味か??? 見せつけてる???? と思いました。まあヒートアップしてましたね(プレー以外でもね。ヒヤヒヤした)。ヴォレアスも、相手のMBの打数の多さがわかっているから浅いフローターサーブをMBに取らせたり(でも2人とも平然とスパイクに入る)、第3セットには三輪に田城をマッチアップさせたりと手を打っていた。三輪のセットごとの打数はわからんけど、田城を置いたのは三輪には効いていた感じがある。なんとなく。
残留を決めた15点目はラリー中の三輪のスパイク得点で、それはとてもこの日のVC長野らしかった。
勝敗の分かれ目になったのは長野のサーブだった。第4セット序盤のリヴァンと第5セット序盤の森崎。2セットビハインドで迎えた第4セット2−2(?)からのリヴァンのサーブローテーションで5連続ブレイク。ちょうどそのとき少し席を離れていたので、戻ってきたときには「何が起きた?」という感じだった。そして10−4でヴォレアスはSRを交代し(その後戻した)、14−6で佐々木を下げ(戻した)、21−11で越川を下げた。第3セット終了時点での得失点差はわずかだったが、数々の交代も流れに棹さすことはできず、25−14の大差で落とし、得点率差での昇格はほぼ望み薄となった。が、終盤のぐずぐずには、ヴォレアスは得点率差ではなく、勝って昇格することを選んだと思った。
長野は何点差つけようが勝つ以外に残留の道はないので、第5セット開始時点でより追い込まれていたのはどちらだったか。
その重圧のかかった局面で、5本続けて強いサーブを放てた森崎が勝利を引き寄せた。
ヴォレアスが悪かったわけではない。帳票から「セッター誰でしょう」って言われて迷ってしまいそうな(セッター浜田が2/5だから)MBのアタック関連数値はもったいなくはあるが、長野もV1だとまあアレ(=スパイク拾われるか留められる、ブロックも機能しない)じゃないかな、と思いながら見ていたし、これだけアウトサイドの3人が機能していれば別にMBのスパイクなくてもだいじょぶではあるので……やっぱり結果論でしかないし、極論はサーブ殴り勝ちだったし。
ただ、ヴォレアスもサーブで殴り倒すチームだからこそ、サーブで殴る=勝てる、ではないのが、当たり前だけれども勝負のあやの難しいところだ。
勝敗が決した瞬間、長野は喜びを爆発させ、一方のヴォレアスはその場に崩れ落ちた。初日を彷彿とさせる長いデュースを制した第1セット。あと1セット取れば昇格までたどり着いた第3セット。「あと少し」がぜんぜん「あと少し」ではないのは、昇格を目指してきたこれまでの多くのチームが味わってきた距離。
大分三好ヴァイセアドラー(V1・9位) 3-1 富士通カワサキレッドスピリッツ(V2・2位)
29−27
25−21
34−36
25−19
大分三好:1勝1敗4ポイント(V1残留)
富士通:1勝1敗2ポイント
富士通:長谷山 谷平 加藤 柳田 浅野 エバデダン L小林
三好:井口 山田 川口 エメルソン バグナス 安部 L備/小川
これもあくまで結果論にすぎないが、先の試合と異なり、こちらは、ゲーム全体を通じて、三好が優勢だった。上位-下位の対戦でしばしば見られる、1試合の中で言えば第1セットは取れたけれど、1セットの中で言えば16点目は先に取れたけれど、のあれの2日がかりパターン。ですよね、という。
三好の入りが前日とは違っていた。富士通はこの日もネタを仕込んでいた(今日は柳田がスナイパー役で「ずきゅーん」のたびに1人ずつ倒していく方式。ところが、6人目で小林を残した状態でアップゾーンの岡村を狙い、7人目はなぜか廣本コーチ(?)を狙ったため、残ってしまった小林が「俺は?」となっていたのが無闇におかしかった)が、惑わされることもなく、三好が、ふつうに、戦えていた。
素直に組んじゃうと、そりゃ差は出ますよね、と。富士通が昨日勝ったのが富士通にとっては初めてのことだし、同一カードの2日目、前日のフルセットでデータも取られてとなると、なかなかね。第1セットのデュースを三好が制し、こりゃ今日はストレートかもなあという雰囲気。試合が進むにつれて、富士通は体力面できつそうだな、という印象が強くなっていった。上位カテゴリとの対戦で、頭も身体も最大出力し続けないといけない。でも、人間なので。今日は、フルスロットル出したくても出せないもどかしさが見えた。
だから、第3セットも概ね三好が先行して進み、やはりここまでか、と思っていたところに、富士通が23−21から追いついて、何度かの三好アドバンテージをひっくり返してセットを取ったのは、失礼ながら少し予想外だった。
それは、富士通の執念が捥ぎ取ったセットだった。デュースに入ってからの3度のチャレンジ要求(無効1,成功2)という行為によって。
第3セットを取るのが精一杯だったという見方もあるが、デュースに入って1度は試合終了の笛が鳴ったのをチャレンジで判定を覆し、最後の得点もチャレンジで判定を覆して得たものだった。最後まで諦めない、できる限りのことをする、その姿勢は、良い意味で予想外だった。
昇格への意欲を前面に出しているヴォレアスと比べると富士通はやはりどうしても一歩引いているように見える。えげつない前のめりでも上がれないのがトップカテゴリなのに、って思う。でも、えげつない前のめりでこそなくても、けして引いてなんていないし最後の笛が鳴っても諦めていなかった。
「上がる」でも「今のこの試合に勝つ」でも、なんでもいいけど、気持ちに身体がついていけなくて敗色濃厚な中で、そこにあらがいひたむきに、勝つ、絶対勝つ、という気迫を見せていた柳田のタフさが、チームを、ベンチを、動かした。
だから彼は敗戦の悔しさもあらわだった。富士通の連覇に柳田の貢献は大きいとは常々聞いてはいたが、ここ数シーズン自分で観ていなかったこともあって、これほどとは思っていなかった。なんてすごい選手なんだろう。なんてすごいキャプテンなんだろう。
それはそれとして、チャレンジ(成功)多すぎでしょう
前の長野とヴォレアスの試合もチャレンジが乱れ飛んだ。前日は長野がチャレンジにほぼ成功していたが、今日は長野が焦り気味で失敗が続き、逆にヴォレアスがたくさん成功した。三好と富士通の試合はどうだったかな。第3セット最後が印象的だが、そのほかにも、富士通がライン判定のチャレンジをして成功したと言った直後に三好側がブロックタッチのチャレンジをしてやはり成功したという、珍しい場面もあった。
第3セット31−30での富士通のチャレンジは、試合終了の笛と同時ぐらいに山本監督が要求したものだった。柳田のライトからのストレートスパイクのアウト判定(ライン判定)に対するチャレンジ要求で、富士通ベンチとは対角の主審側のサイドラインの判定なのでベンチからはっきりとわかる位置ではなかっただろうから、権利を残していても仕方ないとワンチャンで要求したものと思うが、それが成功して、首の皮一枚で繋がった。コート内はもちろん、ベンチも、監督すごい、と盛り上がった。
そのまえの三好の29点目、安部のサーブポイント(ノータッチエース)でも富士通がライン判定のチャレンジを要求したが、ちょうど隠れていて見えずに主審の判定通りになり、三好アドバンテージに変わっていた。
最後の得点もチャレンジ。34−35から、浅野のスパイクのアウト判定に対し、ブロックタッチ有無のチャレンジを要求し、ビデオ判定の結果ブロックあり。判定が覆り、第3セットを取ったとき、富士通の面々の喜びようといったらなかった。
V2はビデオ判定がないので、V2だったら覆らなかった判定も多いだろう。人の目には限界があるし、両チームに平等(公平)ではあるものの、いつもはこれぐらいのジャッジミスが通っているのかと思うと、良い気はしない。2部以下にもビデオ判定導入できればいいのにとは(つって判定用のカメラは段差のないアリーナ席からはかなり邪魔になる問題も)。
V1の壁
V1とV2の入れ替え戦、2戦目は2試合ともV1チームが勝利し、残留を決めた。
ことに、得点率差となったVC長野は薄氷だった。結果がどちらに転ぶか、試合を観ている間は全く予測できなかった。
だから結果が出てから振り返って、V1とV2の違いはこうだ、と言ったところでなんの意味があろうとは思うが、なにしろ帰る道中が長いので、そういうことを考えてしまった。
しかし同時に思う。これを「V1の壁」とくくるのはちょっと違う。V1はV1で、上位と下位の差が大きく開いたシーズンだった。V1下位との壁、或いは、入れ替え戦そのものが持つ壁だろう。その壁をこじ開けようともがき、そうはさせじと対峙するところに生まれる熱は、自身の娯楽として観ているわたしにとって、実にエキサイティングだった。エキサイティングは、レベルとは別のところにある。この入れ替え戦はコンテンツになる、と思った。北海道地方のNHK総合放送で(たまたま、あるいはゆるめの動機で)見た人たちがどう受け止めたかはわからないが、試合が面白くなかったとは言わせない。
V2-V3の入れ替え戦の淡泊さも一方で事実として残ったが、V1-V2の入れ替え戦はこの2期すべて1勝1敗、以前のプレミア-チャレンジ入れ替え戦に比べて相対的に接戦度が高かった。
入れ替え戦は当事者(リーグの運営、各チームの運営、スタッフ、選手)にとってはシビアなことが多いし、全体的な底上げという観点からは異なる見解も出てくる。そもそも、同一カテゴリの上位下位断絶は、レギュラーシーズンのエンタメコンテンツとして全く望ましくない。ポストシーズンの楽しさのためにレギュラーシーズンをないがしろにしていいわけもないので、手放しで「入れ替え戦楽しかった! ぜったい毎年やろう!」と言い切れるものではないのだが、ひとまず、今季の入れ替え戦を戦った6チームと、会場の小田原アリーナと、全ての関係者に、おつかれさまでした。