日曜・月曜の深夜,少しだけアテネオリンピックの体操の男女種目別決勝を見たのですが。


「文句があるならば見なければいい」と,自分で書いているのだから,ここで文句を書くのはよしておくべきなんだろうな。文句があるならば見なければいいのだ。


文句よりも要望に近いのですが(つまりは文句です)。


種目別決勝は男子と女子とが交互に行われた。1日目が,男子床→女子跳馬→男子鞍馬→女子段違い平行棒→男子吊り輪。2日目が,男子跳馬→女子平均台→男子平行棒→女子床→男子鉄棒,だったかな。


男女が入れ替わるたびに実況席も入れ替わる。アナウンサと解説者がそっくり交替するのだ。しかし,男子は男子,女子は女子で一人ずつの人が解説を担当している。それを交互に聞いていると,解説のギャップがあからさまに見えてくる。


と言っても,まともに見たのはそれぞれ2種目ずつぐらいなのでそれだけで決めつけるのはよくないんだけど。つまり,男子の平行棒が酷かった。


それが日本人選手が決勝に残っているかどうかの違いから生まれているのだとしたら,日本人選手なんて残っていなくていいよ,と思ったぐらいだ。


こっちは4年に1回かせいぜい2回(世界選手権ね)見る程度の素人なんだから,競技の見所や採点のポイントをていねいに難度も繰り返し説明して欲しい。どんな演技が高得点に繋がるのか,どんなミスがどの程度の減点になるのか。勿論素人目にも,なんとなく「おお,すごいぞ」とか「おお,美しいぞ」というのはあるし,特に金メダルを取る選手の演技には不思議と自然と惹きつけられるものがある。それを要素ごとに取り出して数値化するのが採点なる行為だろうから,そこを説明されれば,漠然と感じた「おお,すごい」が何を根拠として生まれたものかもわかって楽しいんだけどな。


それに,金メダルクラスの演技には有無を言わさぬ圧倒的な存在感があっても,それ以外の選手の演技になると,自分の素人感覚と実際の順位が異なっていることも多い。それは素人見た目の「きれい」「むずかしそうな技」だけではない,体操競技界でのお約束が働いているからだろう。体操競技や個々の種目に於いて何を「美しい」としているのか,何を「すごい」としているのか,やはり或る程度説明してもらわないとわからないのだ。


女子の解説者がそれを完璧にこなしていたということでもないのだが,彼女は,淡々と,例えば「床ではラインをオーバーしたら0.1ポイントの減点になります」などと,「美しい」だのなんだの言いつつも結局は点取り合って順位を付ける「競技」として必要な情報をその都度しつこく視聴者に提供していた。また,結果が出た後にその選手の演技を振り返って(VTR流れるわけでもないのだが)得点の根拠となったワンプレーを推測したり,他の選手との差の根拠を或る程度は呈示してもくれた。


男子の解説者が全くそれができていなかったということでもないのだが,(ここから本題です),平行棒で冨田が銀メダルということは金メダルの選手はそれ以上の演技をしたんだろう。金メダルの選手のどこがどのようにすばらしかったのか,冨田よりも上回った原因は何なのか,一言ぐらい説明があってもいいと思うぞ。


見慣れている人が見れば,(または,最初からきちんと見ていれば),例えば演技を始める前にさっと発せられる演技に盛り込まれる予定の技の名前や難度といった情報から,或いはミスをしたときのミス具合から,得点差の原因を容易に推測できるのかもしれないけれど,昨日今日ふらっと見た人間にとっては少し説明が足りないと感じた。


わたしは結果に不服はないのだ。「確かにミスはしてないしきれいはきれいだけど,もうひとつなんか煮え切らないなぁ」と思ったのと,最初横目で流していたのに途中から思わず目が吸い寄せられたのとの違いがあったから。だけど,ほかの種目を見ていてわたしの感覚がアテにはならないこともわかっているから,解説が欲しかったのだ。まして,冨田が素人目にはノーミスの演技に見えたのに対して,金メダルを取った選手は最後の着地で少し体がぶれた。そのままだとその点差の理由がわからない。


だけど,実況のアナも解説の人も,最初から最後(表彰台)まで,冨田の演技に対して「最高の演技」とか「持てる力を全て出し切った」とか「完璧」とかしか言わない。得点付けに関する説明には全くなっていない。金メダルを取った選手に対する演技後の解説もない。おまけに,冨田が最初の演技者だったことについて,審判の点が辛くなるから損だとか,入場して紹介されてすぐに演技が始まるので精神を集中させづらいとか,その中でよくやった,とかそういう,なんていうのかなぁ。いらんフォローだよね。だって,今まで行われてきた全ての体操競技の大会で,出場選手の実力が伯仲していた場合に,最初の演技者が優勝したことが一度もないのか? さすがにそんなことはないだろう。それに,完全に平等な条件にはできない競技は掃いて捨てるほどある。競泳なんて隣のレーンの選手にスタートで先に出られたらどんどん向かい水(?)が押し寄せてくる仕組みだ。確かに最初は損なのかもしれない。だけど,順番を決めるのがくじなのか予選得点なのか知らないけれど,損を覚悟した上での演技だし結果だ。仮にあまりに不平等ならば考慮されるだろうし考慮されていないと言うことは,そこに文句をつけてはいけないのだ。あとからいろいろいうのはかっこわるいし,そんなこと言ったところで結果が変わるわけではないのだ。


実況席はあの結果に不服ということなのだろうか。だけど正面から判定に文句は言えないから,そういう言い方をするのだろうか。


その後の他の選手の演技の時に,オリジナル技を入れてどうこうと言っていたので,もともとの持ち点(勝ち点?)に差があったのかなとも思うのだけど……うーん。金メダルの選手の演技を最初からきちんと見ていたら説明していたのかな。なんとなく,すっきりしない。せっかく金メダルなんだから,どこがどうすごかったのか言ってほしかった。


それに,銀メダルをすばらしいすばらしいと連呼するのはどうなんだ。いや,銀メダルがすばらしくないという意味ではない。そうではなくて,金メダルや銅メダルはすばらしくないのかと問いたい。金メダルの選手を一言も讃えないのは,ものすごく不自然で気持ち悪い。金メダルを讃えようよ。もし結果が気に入らないのならもっとわかりやすく嫌味の一つも言ってみろ。


だいたいね。個人で争っているんだから,その人の国なんて団体競技ほどには関係ないだろう。選手一人の力だけで上手くなるわけじゃないから,所属している団体のコーチだとか諸々スタッフ周りはまとめてそのメダルを与えられるものだと思う。同じ団体に所属する複数の選手が揃っていい結果を出せば,それはその団体がすばらしいということになるだろう。それを突き詰めれば,同じ日本に……となるものではある。それはそれでわかる。でも,その為に団体競技があるようなもので,個人の方は基本的に本人とその周りのそれを支えた人達に対して与えられるもののように感じられる。それはウクライナでもアメリカ合衆国でも日本でも関係ないだろう。直接勝負して2者間で勝ち負け決める競技ならどちらかに肩入れして熱くもなるけどそういう競技でもないんだしさ。せっかくすばらしい演技の映像が流れているのに,そんな扱いでは勿体ないじゃないか。(1:22)