歌舞伎座7月大歌舞伎「NINAGAWA十二夜」
歌舞伎座の初日,行ってきました。目が覚めた時点で家を出るまで1時間を切っていたのでおめかしは諦めましたが。1階のほぼ一番後ろで,2階の天井が視界を遮るものの舞台を見るには差し支えない。柱で舞台が見切れることもなく,花道もほぼ全部見えて,2等のわりにいい席でした。朝ご飯抜きで出かけたら序幕の途中でおなかが鳴り出してかなり恥ずかしかった。
昼ご飯は隣の歌舞伎茶屋で買ったなだ万のお弁当。贅沢。とりどりの具がどれもおいしかった。
初日だからかスーツ姿の偉そうな男の人がたくさんいて,お互い挨拶しあっていて,ものものしい感じ。演出の蜷川幸雄氏もいらっしゃってました。終演後には,ロビーで挨拶していた上品そうな和服姿の女性を,年配のご婦人方がみんなしてあからさまにじっとり見ながら通り過ぎていて,どうやら音羽屋の女将さん,とは言わないよね,富司純子さんだったよう。芸能人オーラとかはわからんけど,立ち姿に雰囲気があって綺麗だった。
お芝居自体は初演でも観たけど当時の記憶は忘却の彼方,筋書きも残っていないので,あらすじこそ思い出したものの細部はいちいち新鮮。そしてわかっていてもはっとする幕開きの鏡の演出でした。
初演時には「やりすぎじゃん」と思った麻阿たちの坊太夫いじめも,そういうものと思って観るからか麻阿びいきになっていたからか気にならず。麻阿はかわいいねぇ。なんであんな賢しらな感じの腰元が見るからにダメ人間な桐院某と恋仲なのかさっぱりわからん。いたずらっ子チームでは,團蔵の人(なんべん確認しても役名を忘れる)も地味に好き。メインキャストで唯一役者が変わった安藤英竹も,前の松緑の英竹がどんなだったか忘れたけど,前よりかはバカぶりが減ったというか,やや品がある英竹でこれもおもしろかった。どっからあんな髪型(キャラ設定)が出てくるんだろう。欲を言えば,せっかく登場シーン辺りのせりふが面白かったので,もうちょっとあとの方までそれで引っ張っても良かったと思うんだけど,話し方はだんだん普通になっていってた(慣れただけ?)。
信二郎改め錦之助の大篠左大臣は,前回は大人しいハンサム貴公子って感じだったので,今回はちょっと貫禄がついていたかな。織笛姫はとくに印象変わらず。綺麗は綺麗なんだけど,衣裳やらなにやらどことなし大人っぽい。父の喪やら兄の喪やら言ってる間にもごもごという設定でもあるまいがどうしても獅子丸に比べて年増に感じてしまうのは仕方あるまい。(獅子丸の衣裳の淡い桃色の小袖に水色の裃の方がどうかしている)。
それにつけても斯波主膳之助の地に足の着いていない行き当たりばったりな生き方には呆れるばかり。琵琶は兄を頼りにして慕っていたようだけど,兄,相当軽い。話そのものも,最後は無理矢理大団円という感じで,ご都合主義で非常によろしい。ラストシーンはどっちが菊之助かわからんかった。
全体的に笑いどころが多くてしょっちゅう腹抱えて笑ってました。メタっぽいギャグが出ると嬉しい。前回は「長い」と感じてけっこう負担感だった気がするけど,上演時間も短く,気楽になった。第二幕短すぎ(その分序幕がもう一場か二場分短くてもいいんじゃないか。12時半過ぎるとはおもわなんだ。おなかなったちゅうねん)。2回の休憩を挟んで4時間15分の拘束だけど,全く中だるみもなく無駄もなく,観ていて長さを感じない楽しい時間でした。
その後さらに散財した話は別途。