今度の日曜日は「新選組!」スペシャル
またの名を総集編+座談会。午後4時過ぎからテレビの前にかじりつくことができるかどうか。がっつりHDDでの録画予約はしているけれど,後で見るには長すぎる(時間がない)から,できればリアルタイムで消化したいところだ。
そういえば昨日「隊のメンツなのにいいとこなし」だった人を谷長男と浅野薫ぐらいでは,と書いた。しかし一晩経って,浅野薫と同列に並べるのは谷長男に失礼ではないかと思い始めた。
二人とも「ろくな仕事をしなかった」「隊士でありながら,キャラにフォローがなかった」「退場の仕方もかっこよくなかった」等が共通している。おまけにおそらくは視聴者の印象もかんばしからず,救いのない描かれ方にも同情票すら集まらなさそうに見える。
しかし,浅野薫と谷長男は大いに違う。浅野薫は,弱腰,やる気レス,仕事さぼる,人を騙す,と,ろくでもなかった上にドラマ中ではその生死がはっきりしない。よりによってみんなのアイドル谷周平(一時近藤周平)を踏み台にした脱走を試み,おそらくは成功して生き延びたに違いないところがむかつき増長である。
それに比べれば谷長男には同情の余地(というかフォローの余地)もある。確かに彼は育ちの良さを鼻にかけて入隊の時から近藤や土方のことを下に見ていたし,弟を近藤の養子にすることで出世しようと目論んでもいた。日頃の言動を見ても自己を過大評価する傾向にあったことが窺え,それらは端から見ていてあまり感じの良いものではない。だから煙たがられがちだったわけだけどそこで開き直りきれず本人が気にしてしまい,そこへ起きた(善意から申し出たかもしれない)河合の介錯失敗によってますます立場を悪くし妙に卑屈になってついには居場所をなくして脱走を試みる。弟達を(勝手に)道連れに。
その弟が「みんなのアイドル」周平ちゃんだったが為に「兄ちゃん,感じ悪い」って思ってしまったんだけど,でもさ。いささか「困ったちゃん」な性格ではあったけれど,悪い人ではないし何か特別悪いことをしたわけでもない。彼の不幸はちょっぴり小心でたまたま巡り合わせが悪かったことにある。最後,脱走が見つかったときに勝てないと分かっていても勝負に挑み,一合もせんと斬られちゃったのにも,彼なりに思うところあったのだろうと思うと浅野薫よりはまだ退場時のフォローもされていよう。
浅野薫と谷長男の名前を挙げた「いいとこなし」グループにどんどこ平畠さんな葛山武八郎の名前を敢えて入れなかったのは,二人とは違って彼には同情票が集まるだろうと考えたからだ。葛山武八郎もまた,ろくな活躍もせずキャラのフォローもなくかっこいい退場の仕方もしなかったが,葛山の場合は性格に問題ありの谷長男とちがって,ほんとに「彼は全然悪くないのに(どころか何もしていないのに)幹部連の内紛に巻き込まれて命を落とすことになった可哀想な平隊士」然と見えるもので。
でも,いったい谷長男と葛山武八郎の間にどれほどの違いがあるだろう。
本人悪くないのにたまたま損な役回りだった,という点に於いて葛山武八郎と谷三十郎(谷長男)は同じ。そして葛山の不運も,考え方によっては,本人にその責任の一端があるといえる。
葛山がダメだったのは,−−これは葛山が死んだ回にどなたかの感想で読んで成る程と思ったことなのだが−−,あの時代にろくな覚悟もなくあの集団に入り,あの集団の中でああでいようとしたことだ,と。対テロ特殊部隊(しかもゲリラちっく)に自発的に入っていていながら,趣味は読書。趣味が読書なのは構わないが,謹慎中に「本が読めるからかえって嬉しい」のは自分の職種を把握しきれていない。
そしてもう一つ。「取り入る人間を間違え」たのは佐伯又三郎だが,葛山武八郎もまた,組織の内紛に際して付くべき人間を間違えた。と言っても彼は付くべき人間を自ら選択をしたのではなく,周囲の様々な思惑に(不幸にも)巻き込まれただけなのだけれど,自分の頭で自分が付くべき人間を決めず振り回されるままになったこと,そして最後結果がうまくいかなくなったとき,その責任を振り回した周囲に求め,自分は悪くないと言い続け思い続けた。
その辺は例によってわたしの性格によく似ているのであの回は結構見ていて辛かったのだけれど,それらの行為は世が世ならまだしも(少なくとも命は奪われない),新選組でそんな糸の切れた凧でいることは命取りになりかねないし,なったとしてもそれは本人の責任である,と。葛山の死に際の潔くなさは,けして格好のいいものではなかった。死に際の潔さでいえば谷長男の方が上だろう。それではいかんかったのだ。
谷長男にも「かわいそう」な部分はあり,葛山武八郎も自業自得部分はある。なので違いは明確ではない。
それなのにわたしが昨日武八郎を分けてしまったのは,武八郎の宵宵山での散歩姿がかわいかったから,ではなくて,つまりは「かわいそう」と思わせキャラだったか否かの違いなんだろうな。
谷長男と武八郎,意外と似ている。奇しくも彼らはそろって最期斎藤の手にかかっている。
長くなったので「わかば」の話題はまた今度。今日(金曜日)はクリスマスイブ仕様でツッコミどころ満載だったことよ。