NINAGAWA十二夜(二度目)


初演も合わせると3度目。どんだけ好きなんだ自分(ちがいます)。


でもおもしろかったー。今日は3階席の上の方(Aなのに)で下手寄り。下手寄りすぎて花道完全アウトだった(通常3階正面から花道は見えないがこの演目は鏡にうつるので運が良ければ少し見える)のは残念だったけど思っていたよりも見やすかったし,初日が上手寄りだったのでバランスが取れていたかと。大向こう(「おとわや!」「おもだかや!」)さんが近いのも一興。


二幕目の向月台のシーンは1階の後ろからよりも3階からのほうが,鏡が全部見渡せて良かった。初演のときにあのシーンが気に入ったはずなのにこないだ行ったときはそれほどでもなく感じたのは下から見たからだったらしい。


今月2度目なのでイヤホンガイドは借りず筋書きも家に置き去り,話の筋もだいたい覚えていたので随分余裕をもって見られた。観客がことあるごとに笑っているのが,数週間前の自分を見るようでほほえましい。どっと沸く客席に対してへーぜんと演じ続ける舞台の上の人たちもすごい。そして,ネタが来るとわかって構えていてもやっぱり自分も笑ってしまうんだ。


6月博多座からずーっとなので,慣れているといえば初日の時点でもとっくに慣れていたろうけど,今日の菊の主膳之助と獅子丸はなんだかちょっと横顔が色っぽかった。主膳之助(兄)と獅子丸(男装中の妹),衣裳の色以外はおんなじような扮装なのに色っぽさの質(性別)が違うように思えるのは幾分贔屓目が過ぎるか。獅子丸にはすごく女女した色っぽさ(有り体に言えば女々しさ)があるわりに本来のお姫様姿であるところの琵琶姫はどってことないんだが(これは好みの問題)。初演時には記憶にないんだが,英竹と獅子丸が決闘するシーンで,庵五郎に刀の抜きかたやらの手ほどきを受けている(音声はなくてしぐさだけ)ときのへっぴり腰の獅子丸が超らぶりい。


亀の麻阿も相変わらずかわいかった。「小間使いの女の子」ではなく「家政婦のおばちゃん」風味。他の人たちが話をしている横でしきりに爪を気にしていたり扇子で扇いでみたりと小芝居が多いので目が離せない。


先回も書いたが,なんべんみてもご都合主義でぐだぐだな筋書き。シェイクスピア御大の原作は如何ばかりかと帰りに図書館で筑摩書店刊の世界古典文学全集シェークスピア2を借りてみた。さすがに英語は読めないので翻訳版で,細かい部分は訳者が今回の脚本の底本とは違うのでわからないし,もちろんいくらかは端折ったり大幅に変えたりもしている風だったものの,意外なところが原作のままだったりとわりと原作に忠実に翻案しているものとわかった。つまり原作も一目惚れ上等で,セバスチャン(主膳之助)は手が早い(原作の方がさらに手が早い)しヴァイオラ(琵琶姫或いは獅子丸)は気が強い。アンドリュー(庵五郎)は向月台(ではないが)シーンで前触れなく現れるのも同じ。強いて言えばオリヴィアよりも織笛姫のほうが多少奥床しいか。


先日職場で歌舞伎を頻繁に観に行っているのかと訊ねられ「年に1回ぐらい」と答えてしまった。今月のこれはカウントするには異色なので,今年中に一度行かねばと自分に課す。どっかで何かおすすめはないものか。八月納涼行けるかな。