令和4年3月歌舞伎公演『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』

国立劇場
前日の夜に買ったわりに、端の方だけど2階2列。これで2等席。財布に優しい国立劇場。ありがたい。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にもちなんだ演目。かつ、「歌舞伎名作入門」ということで、本編前に萬太郎の案内の「入門 “盛綱陣屋”をたのしむ」があり、鎌倉殿の時代に舞台を借りつつ大坂の陣を描いている、といったあたりの背景が映像を交えて紹介されてからの本編。
去年の3月の国立も麒麟繋がりで、片岡亀蔵丈の解説付きだった。3月の国立は親しみやすい趣向になっているし、時季が合えば前庭の桜が楽しめてたいへんお得。今年も生憎の曇天だったけれど、ちょうど見頃だった。
お財布に負担をかけずに一度歌舞伎を観てみたいという向きには、3月の国立はかなりおすすめできる。
歌舞伎座は、お銀座の四丁目から歩いて10分かからないし、ビルになっても正面も館内の雰囲気も趣を残しているし、木挽町広場含めたもりもりのお土産売店や時間があれば歌舞伎座タワーの屋上庭園含めてアミューズメントスポットだけれど、その分お財布には優しくないもの。
国立劇場はレストランも1階の喫茶だけになってしまったし、周辺もあんまり飲食やショッピングできる感じじゃない(探せばあるのかもしれない)。半蔵門から向かう途中の角のファミマで何か買って無料休憩所で食べるパターン。色気はない、が、そこまで含めて、財布にはやさしい。*1

小四郎は昨年9月の歌舞伎座に続いて、丑之助。もはや小四郎が主役と言っても過言ではない。観たのが千穐楽直前ということもあり、まあ、なんつうか、こう、このお役得意です感がじゃっかん鼻につく気配を感じられなくもなかったのですが、子役はいるだけでいい、とは彦三郎兄さんも仰せで、子どもの1年はそのときしかないので、目一杯愛でるものです。
小三郎は半年前の亀三郎とは配役がかわって、今回は小川大晴くん。ひろくんもたいへんかわよい。小三郎ママ早瀬役は莟玉。若くて綺麗で少し堅さのある早瀬の身分高そうな張り詰めた感じ、よかった。そして、ひろくんリアルママ、じゃなかった、リアルパパの篝火は、ほかの篝火知らんけど、すごく板についてる。好き。
前回代役で藤太勤めてた萬太郎が本役で藤太、又五郎の和田兵衛、等々、配役も好みで、良い盛綱陣屋だった。
主役の盛綱役は菊之助。前回歌舞伎座幸四郎で、わたしにはどっちがどうとかはぜんぜんわからなかったけれど、いずれも若い(?)役者さんが大役をがんばる、という趣で、真摯な感じが良いよね。わたしは好き。若い(?)父の初陣を飾ったばかりの我が子に対する複雑な感情が、身近なものに感じられる。

盛綱陣屋、すごく辛いお話なんだけど、登場人物のバランスも話の構成もすごくよくできていて、たしかに名作だと思う。9月も同じ感想を書いたかもしれないけれど、小四郎が良くないと締まらないので、良き小四郎を配置するのが大変そう、という難しさがあるけれど、女子3人(微妙、篝火、早瀬)のバランスといい、あれといい、これといい、ほんとに、よくできていて2度観ても飽きることがないし、また違う配役でも観たい。
ちょうど今の歌舞伎界は御曹司小学生が充実しているので、丑之助はもちろん、ほかの御曹司ちゃんたちも、盛綱陣屋どんどんかければいいと思う。ほかに子役がだいじな古典の演目があればそれも今のうちにかけよう。
という気持ちになった。
 あんまり難しく深く考えると、児童の福祉や権利や、と深いところに沈んで眉間に皺が寄ってしまうので、あんまり難しく考えずに言っている。

ところで、今回、プログラムに当たり籤が入っていたら菊之助のブロマイドがもらえる、という趣向もあったが、なぜかこの日に限ってプログラムを買うだけ買ってざっとしか見ておらず、帰ってから当たりが入っていたことに気づいて驚いた。
1月の手拭いプレゼントが掠りもしなかった(それも2年連続)ので、どうせ当たるわけがないと思い込んでいた。話の筋もだいたい分かっていたし。
当たり籤には引き換えは当日中と書いてあったけれど翌日ダメ元で行くだけ行ってみようと再び半蔵門に向かい、入り口で事情を説明したら、有り難いことに引き換えていただけた。往復の交通費は余計にかかったけれど、直筆ではないけれどサインも入っているし、国立は舞台写真の販売がないので、ありがたい。菊之助の盛綱のすっきりした立ち姿、かっこいい。

*1:あとは同じく国立劇場の7月の歌舞伎鑑賞教室かしら。巡業も、何度か行ったかぎりでは、別のハードルはあるもののとても良かった。