Vプレミアリーグ男子ファイナル6・3日目


岐阜メモリアルセンター・で愛ドーム


岐阜市内を訪れたのはおそらく初めてでした。名古屋からJRの新快速で18分。そのわりに街の規模は大きく,JR・名鉄それぞれの駅から市役所に至るけっこうな範囲に大規模な商店街が展開されていた。もちろん地方都市の多分に漏れずシャッターがおりたままのお店も少なくはなかったけれど,駅も綺麗で,街も綺麗。


朝の東京は生憎の雨模様だったけれど,東海地方は気持ちの良い晴天が広がっていた。大きすぎず寂しすぎない規模の街並み,遠景に広がる雪を被った高い山並み。穏やかな長良川の水面。高くそびえる金華山の頂上には岐阜城天守閣。そして長良川のそばに,大規模な国際会議場と,メモリアルセンター。メモリアルセンターは広々とした総合運動公園で,野球場,陸上競技場,プール等々。陸上球技場では,ラグビーのチャリティーオールスターゲームが行われていた。体育館も「で愛ドーム」(第1体育館)と「ふれ愛ドーム」(第2体育館)のふたつ。


今日は実にラグビー観戦日和だなあと思いながら屋内に吸い込まれていきました。館内は天井や照明は大阪市中央体育館風。入ると,あまり広くない入り口スペースからすぐに客席になる。アリーナ席はスタンド席から下りていく形にしていて(このあたりの造りは大田区の体育館みたい)サイド側は可動式ベンチシート,エンド側は板で段差を作ってパイプ椅子だった。スタンド席のシート……覚えてないや。背もたれあった。そんなにかたくなかった。


岐阜駅からさらにバスで20分(しかも本数少ない)という立地が災いしたのか客席はそれなりに空いていたけれど,広すぎず狭すぎずの規模感はVプレミアにマッチしている。せっかくのファイナルなんだからここが埋まるぐらい入るといいのになあ*1。建物そのものはめっちゃ新しいわけではないけれど,まるい天井と明るい照明が良い雰囲気だった。


エヴァンドロのトスアップ

JTサンダーズ(RR1) 3 (28-26 25-23 26-24) 0 堺ブレイザーズ(RR5)


前日土曜がお休みだったJTはこれがファイナル6の2試合目。対する堺は前日パナソニックに3-1勝ちをおさめ,初戦に続いて好調を維持。他チームファンをして「RRまるごと死んだふり作戦だったのか」と言わしめていた。試合開始前の会場DJのマッチアナウンスでも,この試合はファイナル6の行方を左右する重要な一戦になるかもしれないと煽っていた。


3セットすべて2点差,うち2セットがデュースと,結果こそストレートで決着したがハイレベルで競った試合展開だった。試合時間も1時間39分となかなかこってり。


第3セットは堺リードで(第2セットも堺がリードしていた),逃げ切ることを願っていたものの,けっこうな点差を追いつかれてしまった。この試合に関してはどちらを応援するでもなくどちらに勝ってほしいでもなくただただ試合を楽しんでいたが,それゆえに,あと1セットでもいいから長く観ていたかった。


sakai


たしかに競ったスコアにはなったが,実際のところJTのほうが上手だったことも間違いない。素人目ながら,JTがじわじわと堺の攻撃パターンを狭めていく様子が窺えた。第2セットにしろ第3セットにしろ。とくに印象的だったのが,石島がライト側でレセプションに入る場面。石島の前にアタックラインぎりぎりぐらいの短いサーブを入れる。カットそのものが大きく崩れることはないものの,石島は前に動かされてスパイクの助走に入れない。センターのクイックも使えず(何故だろう。1本目が浅い位置だとセッターがレフト側を向いて待てないとかだろうか)前衛レフトの千々木に集まってしまう。千々木はもともとバックロウのほうが得意な選手で,JTはそこにブロックを2枚以上つけて対応する。


ローテーションを確認しなかったが,状況から考えるにおそらくS2が顕著だったと思われる。ペッパーが後衛レフト,セッターが前衛。ただ,6ローテ中の1つだけのようにも見えなかった。B帳票によると,サーブ受け数石島24,千々木12(チーム最多はL井上29)。


レセプションの上手/下手で比較するならおおかた石島>千々木だろう。千々木がサーブで狙われる場面は頻繁に見かける。サーブの強いチームならば千々木を狙いたくなる。


でも,JTはそうしなかった。敢えて石島に拾わせ,千々木をフリーにし,その千々木のスパイクに,ディフェンスで対応した。


初日サントリー戦で面白いように決まっていた前衛MBと後衛WSとのセンター線を使った時間差/位置差攻撃が,次第に使えなくなっていった。(第1セット序盤は悪くない感じだったので第3セットになったらその場面を写真に撮ろうと構えていたのに撮れなかった)。


両MBの決定率が,堺らしくなく低かった。MB囮で千々木に打たせてみてもさっぱり合わない,決まらない。もちろん,前衛MB後衛千々木が両方囮で石島の51などという,わたしも(筧本も)思い切り騙されたぷりもてんぽに3箇所から入るのやめてほしいよね展開もあるにはあったし,石島も決めていたからそれはいいんだけど。


結局堺がJT蜘蛛の糸に絡め取られ,じたばたしてみたけれど断ち切れなかった,のだろうか。


こう書くと堺がだめだめだったように見えるけれど,そんなことはない。いつぞやの(しつこいが)某東京体育館はえらい違いだった。弱点が見えたかという不安はあるが,きっと1週間で立て直してくるだろう。


そして,この試合で会場を大いに沸かせたのは両チームのサーブの殴り合い。特に,第2セット(だったっけ)の終盤,堺がペピチのサーブで3連続ぐらいでブレイクして逆転したあと次のサーバの越川が4連続ブレイクぐらいをやり返して再逆転した場面は,双方の闘志むき出しの殴り合いが恐ろしかった。タイムアウト明けでも容赦なくサービスエースを取ってくる彼らの研ぎ澄まされた集中力たるや。


試合後。コートと応援団の位置が逆だったので,VOMインタビューのあと,それぞれ自チーム応援団の前に整列するために,交差する。すれ違うときの89組のかたい握手や抱擁をみて,これが最後の対戦になるかもしれないんだなと,記憶が2009年冬の東京体育館まで巻き戻される。小澤のJT退部発表後初めての試合だった。

ジェイテクトスティングス(RR6)1 (21-25 19-25 26-24 22-25) 3 サントリーサンバーズ(RR2)


suntory


「ほぼ地元」のジェイテクトは,応援バスをしつらえて,大応援団がやってきた。対するサントリーもサイド側スタンド半分が埋まる程度に大応援団。白と赤。


試合は,ジェイテクト側は久しぶりの袴谷ベンチ入り(からの出場),セット毎にかわるMBとWSは総力戦の構え,松原ピンサ起用の成功等々,にんまりポイントがたくさんあった。浅野には,何度見てもその度に新鮮な感動を覚える。しなやかなプレーにも,若手らしい溌溂さを全身からきらきら溢れさせながらもチームを引っ張っていこうという気概が垣間見える姿勢にも。


「Vファイナルステージ」の幕を見上げる,高橋慎治にも。


サントリーもさらに短髪になった阿部裕太の,観る者の心を鷲づかみにする咆哮。雄叫びを上げながら走り回り胸タッチする赤い集団。阿部と金子と鶴田を同時にコートに立たせるとあたりが一気に熱を帯びる。エバンドロも暑苦しい。栗山はもっとスマートなイメージだったのにすっかり染まっている。山村だってもういいお兄さんなのに率先して「ぶーん」してる。すーさんも吼えてる。


ジェイテクトがそれに飲まれたとか,そういう話ではないんだけど。


わたしは第1試合で精根尽き果てたので,第2試合はあまりむつかしく観ずに,サントリーの暑苦しさと白ユニ姿も涼やかなジェイテクトの爽やかな情熱を楽しんでいた。2試合ともストレートだとつまんないなーと思っていたところでジェイテクトが第3セットを取ったので嬉しかった。RR6位のてくとさんは持ち点がゼロなので,フルセットになってせめて1ptでも獲得したかったけどねえ。第4セット,追いつけるかと思ったんだけど,その前に点差がつきすぎていた。


サントリーはリーグ通して好調で,ファイナル6も初戦こそ堺にストレート負けを喫したが,前日は豊田合成をストレートで退けた。ニコ生で少しだけ観ていたが,合成を寄せ付けない堂々とした試合運びだった。このジェイテクト戦も要所をおさえた感があった。陳腐な言い方にはなるけれど「ジブンタチノバレー」的な,持ち味を生かして自分達の得意なパターンで戦えている感じ。何試合も観ているわけではないからそれが何かはわからんし,近年短期決戦に弱い傾向があるので,この先なんとも言えないけれど(個人的に今後の本命かな,とか)。


suntory


栗山のパイプ,ノーブロック。専修大時代にもしばしばノーブロックになっていたっけ。


試合が終わって帰りがけ,城を撮影すべく屋外でカメラをごそごそしていたわたしの後ろを通り過ぎていった人達が「バレーの試合を初めて観たけれど,面白かった」「負けたのは悔しいけれど,楽しかった」と話していた。


そりゃ勝ったり負けたりするよ。それが醍醐味とも言えるわけで。たとえば交通手段を確保するだとか試合後にロビーでお見送りする*2だとか,そういった努力と,試合中のコートの中での努力と,どちらもそれぞれに大切で意味がある。この試合に関しては,第4セットの終盤,ジェイテクトがあと少しで追いつけると思わせる追い上げを見せたことが,応援に来た観客を引き込み「残念だったね悔しいね,でも楽しかったね」と言わせたんだと思う。リリーフサーバで入った松原のノータッチエースが神がかっていた。負けたけれど,と笑顔で満足して帰路につけるのは素敵なことで,次の試合も(近くで都合がつく日なら)応援に行こうと思ってくれるかもしれない。


夕日に映える岐阜城が美しかった。


陸上競技場と岐阜城


山城なのもロープウェーがあることも知っていたけれど,こんなに標高が高くて急崖だとは実際に見るまでピンと来ていなかった。あんな高い山の上にどうやって造ったんだろう。いずれ(天気の良いときに)訪れてみたい。もちろん歩きではなく。

暫定順位(3日目終了時点)


最後まで消化試合数が揃わない。


  1. JT 10pt(残3)
  2. サントリー 10pt(残2)
  3. 堺 7pt(残2)
  4. 豊田合成 4pt(残3)
  5. パナソニック 3pt(残3)
  6. ジェイテクト 2pt(残3)

*1:公式記録によると第1試合の観客数1,385人。嗚呼。

*2:「今日は惜しかったね,次がんばってね!」って気軽に言える。もちろんチキンなわたしは下を向いて足早に通り過ぎましたが。