松島紀行


朝から仙台は小雨(傘なくても大丈夫なぐらい)。10時過ぎにばたばたとチェックアウトして駅に行き,荷物を新幹線改札近くのコインロッカーに預けてドトールで軽く小腹を満たし11:08仙台発の仙石線快速で松島海岸へ。仙石線のホームはほかの在来線からかなり離れた場所にあって,在来線中央改札から入って中から行けるというごく当たり前のことに気づけず,改札に行くためにエスパルの地下をうろうろしてしまった。


仙台って地図で見ると随分遠いんだけど,余裕でSuica範囲なのでSuicaペンギンが至る所にいたりと首都圏と変わらない雰囲気。仙石線の地下の改札はまるで京都あたりの地下鉄の改札の風情。車体もアルミ色に濃いブルーのラインの外観に横長椅子(東塩釜の操車場で車両ごとにラインの色が違えた仙石線ロゴ入りオリジナル車両の列車を見かけた。どうせならそっちがよかったなー)。


列車は市街地を抜けた辺りで地上に出て,途中に見える懐かしの国鉄風情の駅をパスしつつ11:34松島海岸着。仙石線自体はたぶん単線で(未確認)松島海岸駅はすれ違い用っぽい島ホームの小さな駅でしたがそれでもSuica対応の自動改札です(しつこいね。西の在来線が播州赤穂までしか自動改札が伸びていないので,東北本線ならまだしも仙石線なのに,とついついひがみっぽくなってしまう)。松島海岸まで行くのはだいたい30分に1本で,快速が1時間1本,もうひとつが普通。追い越しはないのでどちらに乗ってもそんなには違わない。らしい。


駅を出たところで,12時発の遊覧船に間に合うよ,とおじさんに営業されたので切符を購入。1400円。遊覧船乗り場まで歩いて(5分ぐらい),乗船までぶらぶらしてから遊覧船で松島湾一周。所要時間約50分。やたら鴎が沸いていると思ったら,船の中で「かもめのえさ」を売っていてお客がデッキからまいていた。その頃少し雨が強く(といっても「傘をさしたくなる」程度)なっていたこともあって,空はどんより灰色,海もどんより灰色,けぶる景色は墨絵寸前。自分もデッキに出てみたけど寒かった。でも,外の方が岩石の層の褶曲っぷりがしっかり見えるので楽しい。


島はいいね。松もいいね。そして大量の牡蠣棚&海苔棚(っていうの?)。なんだかほっとする景色でした。さすが日本三景,うちの実家の近所とは規模が違う(ノリはちょっと似てる)。船が湾の外まで出るので水平線も見られたし,良かった。冬の雨模様も風情はあったけど,今度は暖かい季節の晴れた日に行ってみたい。


その後ちょろっと散歩がてら五大堂(屋根の下にぐるっと十二支の彫刻がある)を見て,適当に昼ご飯。牡蠣フライ+酢牡蠣+焼牡蠣にお味噌汁ご飯小鉢の定食。牡蠣ウマーー! 昔牡蠣が嫌いだったわたしが言うんだからたぶんほんとうにおいしいと思うよ。大粒ぷりぷり。潮の流れのおかげなのかなんなのか厭な牡蠣臭さがないのね。その辺歩いてても潮の匂いしないし(それは自分の鼻がきかない+生まれ育った海が汚すぎるのが理由か)。


食後は瑞巌寺伊達政宗公にもゆかりの深いお寺だそうで。参道の杉木立が厳かで立派。方丈の襖絵は桃山様式で派手派手(それも,本物は宝物館にあって方丈に今はまっているのは復元なので,ほんとにきんきらきんだった)。ご立派な拝観料(700円)だったけど,説明書きも丁寧だし広々とした境内もどことなく静かで,かつ,現役のお寺の空気が感じられて,なかなか良かった。


昔お寺の住職さんが上仙するときに使っていたという駕籠が展示してあり,説明によると4人で担いで駆け足で旧道約37kmを4時間で行った由。今は快速で約30分。仙台からすぐに行ける便利な場所という認識だけど,片道4時間もかかればそれだけで充分一日仕事(泊まりがけ仕事?)だったろうなあ。


宝物館も寄ってみたけれど,襖絵のオリジナルが公開されていなかったのが残念(冬に行くから……)。有料スペース外に西国観音三十三カ所巡りだかなんだかの観音様を彫った小さな石像がずらっと並んでいて,苔むした地面に濡れた落ち葉がいい風情。そして,その背面が延々と石窟になっていて,天気が悪かったのと時間が遅かったのとで暗くて中が見えなかったんだけど,けっこうな規模でなにやら彫ってあった様子。12月は3時半に閉門の由。3時過ぎに瑞巌寺を出て駅に戻り3時34分発の仙石線上り快速に乗って帰仙。


松島は想像していたよりもはるかに多くの観光客でにぎわっていた。観光バスもたくさんいたし,個人客も多かった(乗った遊覧船は団体はいなかったのに大きめな遊覧船がしっかり埋まっていたよ)。光のページェントのためなのか牡蠣が旬だからなのかわかりませんが,冬で天気が悪いのにあれだけいるのは良い感じ。「そりゃ日本三景だからね」というだけでなく,仙台駅からのアクセスの良さと駅から徒歩圏内でコンパクトに観光できるのが魅力。公園や道も整備されていてきれいだった。


以前,遊覧船が要予約っぽくて,と書いたけれど,それはわたしのガイドブックの読み間違いだったようで予約なしの松島海岸発着の遊覧船があったし,本塩釜と船で行き来するのも,その場でチケットを買うので大丈夫そうだった。遊覧船は毎正時発。


そんなところかな。そしてうとうとしながら仙台駅に戻ったのが4時過ぎで,54分発のはやて・こまちの指定席を取って,時間があるのを良いことにエスパルのおみやげ物売り場を冷やかしまくり,ちまちまと買い込んで帰京。今日が消費期限の生もの自分だけ用土産であるところのずんだ餅をこれから食べる。


国内の1人観光旅行はこれが初めて(国外もナイアガラフォールズとケベックシティぐらい)。好きなように動けるから気楽な反面,都度都度の心の動きを人に話したり共有したりすることができないのは少しつまらなくもあり。でも今日みたいな感じ(移動が簡単,観光スポットやご飯時に1人でもあんまり浮かない)だと一人旅ハードルも低くていいな,と思った。