腐ってないカレシにBL世界を軽く紹介するための10本［れびゅう３］

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タクミくんシリーズ／ごとうしのぶ／角川ルビー文庫

小説　一人称／受視点　難易度：★

全寮制男子校（高校）が舞台の学園モノ。登場する男子高校生の９割以上が男と番う，文字通り女子の妄想の中でしか存在し得ない世界。しかも舞台の全寮制男子校はお金持ちの子息が集うお坊ちゃま学校。とはいえ主人公（受）は育ちも庶民なら容姿も十人並み，対する攻は世界を股にかけるなんちゃらグループの御曹司で日系アメリカンのクォーター，相当の顔面偏差値と実家偏差値と頭の良さと性格の良さと人気とを兼ね備えたスーパーマン。ますます妄想の中でしか存在し得ない世界。

お話は学園内で起こる様々な男子高校生同士の痴情のもつれに主人公カプが首を突っ込んで解決するという……本筋はともかく実態はそんな感じの短編連作。いちおうメインカプにもストーリーはあって（それが本来の本筋），幼少期のトラウマを抱えて対人恐怖症になっていた受を攻が熱心な愛情でもって接してやがて２人はくっつくと。その後，２人の身分の違いによる諸々の障碍やら気持ちのすれ違いやら将来への不安やらがちらほら。

たまに切なさに胸を揺すぶられることもありつつ，基本的にはライトでほわほわぬる〜い作品。エロも，舞台が寮なんでやりたい放題はやりたい放題なんだけど，描写自体はぬるま湯の限りなく朝チュン。

なんでも攻は主人公の記憶にはないぐらい大昔に主人公（受）を見初めていて彼を追ってわざわざ日本に留学して高校に入学したらしい。だからそんな話がどこにあるかと。でも，そういったスーパーマンが平々凡々な庶民を見初めて一途に愛してくれるという夢物語そのものは悪くないし，主人公が社会性を身につけ友人達と仲良くやっていけるようになっていく様子はお母さんのような気分にもなれる。また，見目も育ちもいい男子高校生が次から次へと出てきて，キャラクタもカップル模様もよりどりみどりで，脇キャラ達とその恋愛模様も楽しみどころ。

既刊21冊以下続刊。ここ10年ぐらいは基本的に年に１冊（１月新刊扱いで12月刊行）しか出ないので，スニーカー文庫時代からのシリーズなのに冊数はこんなもん。１冊も薄いのでその気になればすぐ読めます。