八月花形歌舞伎第三部

歌舞伎座


5月以来の歌舞伎観劇でした。7月の国立劇場の歌舞伎鑑賞教室は気になっていたものの忘れているうちにタイミングを逃し、7月後半はワクチン接種したりオリンピック開幕したりでばたばたと。


しばらく意識も遠ざかっていたのだけれど、GoogleChromeのカードで出てきたBAILAの記事2つに、ちょろいので釣られてしまいました。


ひとつが、このところ女性誌(Webメディア含む)媒体でのセット販売が著しい染五郎丈と團子丈の対談インタビュー(集英社。同一ソースでBAILAとwithは見かけた)、もうひとつが、婦人公論の梅枝と小川大晴親子のインタビュー。若い男子(複数)と幼児……あざとい。あざといが釣られるクマー。

「義賢最期」


木曽義賢:幸四郎 小万:梅枝 折平(行綱):隼人 待宵姫:米吉


大晴くんの役九郎助孫太郎吉は、小川綜真さん(歌昇さんちのお子さん。屋号違うけど遠目の親戚の由)と日替わり出演。きょうは大晴さん。


知らないお話だったし、予習も、歌舞伎美人の「みどころ」のみだったので、さほど身構えずに観ていたのだが、これがたいへん良かった。


話の筋が良い。わかりやすいし。伝統的な義太夫狂言でしばしばみられる「まったく共感できない人たち」とは異なり、登場人物の行動も心情も、わかる。義賢が行綱の正体を知っていてお互い胸の内を明かしあったくだりは胸熱。


すんごい隈取りとかめちゃめちゃごっつい衣装とかこそないものの、「歌舞伎」と聞いて想像する歌舞伎らしさがあって、絵が綺麗で、ちょいと人情話で、判官贔屓で、おまけに、ど派手アクションつきで、おもしろかった。


「源平布引滝」は「実盛物語」をよく目にするが、これも観たことがない。「義賢最期」のその後のお話だそうで、いずれ機会が巡ってきたら観てみよう。


終盤の立廻りは、たしかに、思っていたのの3倍ぐらい長くてもう少しコンパクトでもいいような気もしないでもないのだけれども、そして、九郎助や小万が大立ち回りを演じさらに小万には白旗を預かるという重大な使命まで課される理由も(行綱の田舎の妻と舅ではないのか。ふたりは折平が行綱であることを知っていたのかしら。あと、行綱と待宵姫の仲は結局どうなったのかしらん)よく分からないけれど、それはさておき。


一点透視図法で描かれた奥行ある大広間は、絵とわかっていても錯覚してしまう、広がりのある舞台空間をつくりだしていて、そこで展開される軍兵と義賢の立廻りは、大がかりで大迫力。戸板返し(?)、戸板にのって持ち上げられて、そのまま横に落ちたり、と、仕込みのときから観ているこっちがはらはら。そしてさいごは階段落ち。若くないと無理。若くても無理。幸四郎、がんばってた。


そして、梅枝が、めちゃめちゃうまかったしめちゃめちゃ格好良かった。太郎吉を連れて義賢のもとを訪れたときのちょっとした仕草がすっごく柔らかいお母さんだし、立廻りの場面では一転、颯爽としていて強くて頼もしい(なんだけど、どこまでも女性)。お姫様でも町娘でも女武者(じゃないけど)的な役でも、ほんとになんでもびたっと寄せてくる。すごい。

「鞘当」


不破伴左衛門:歌昇 名古屋山三:隼人 茶屋女房お新:新悟


やたら派手な格好してイキりあってる同士がすれ違いざまに難癖つけて喧嘩してるところに茶屋女房がきて仲裁する、という、言ってみればそれだけの短い一幕、なんだけども。


吉原の桜の舞台(ここでも一点透視法の奥行ある街並み背景)、ふたりの素敵な衣装。不破の黒地の雲に稲妻も、山三の水色地の雨に濡れ燕も、どちらも素敵。スワローズファン(?)としては、とくに燕が気になる。あの柄欲しい。


歌昇観たの初めてかなあ、初めてかもしれない。初めてではないかもしれない。顔が良いし、声も良い。すっごく素敵だった。


言わずもがな、隼人も顔が良い。姿が良い。和事の優男感はもともとのイメージとはちょっと違うけど、様になってた。このふたりがいちゃいちゃ(違)してるって、なんの視聴者サービス。

三社祭


悪玉:染五郎 善玉:團子


染五郎の美貌を気配からまるごと消し去る漁師メイク(鼻下に青いひげそり後つき)、すごいな。


三社祭じたいとても好きな演目で、コミカルで躍動感のある踊りが、詩章も振りの意味もよくわからなくても楽しく観られる。


踊りの良し悪しや巧い巧くないはぜんぜんわからないけど、当たり前かもしれないがちゃんと踊れてる。むしろ、さすが現役高校生の若さというべきか。キレが良い。マウンテンクライマーあり、コサックありの超ハードダンスなのに、体力ある。


何より、これまで何度かみてきたインタビュー記事での思い込みはあるにしても、ほんとに息ぴったり。


にこにこ笑顔で明るい気持ちでの打ち出しでした。


ところで、15年ぶり(?)ぐらいで、夏着物に袖を通した。薄物の紬。春先に麻の長襦袢を新調したときに、肩幅と袖幅を詰めてもらっていた。着物を着るのも3月末以来だったので帯の結び方を忘れて焦りまくり、人前で帯の脇の部分を見せられないぐらいぐちゃぐちゃだったが、時間もなかったのでストールで隠してそのまま出かけた。夏の羽織り物が欲しい。


夏用の草履もそれぐらいぶりで箱から出したので心配だったけれど、無事壊れることもなく行って帰ってこられた。しかし細めのエナメルの鼻緒は今なら選ばないだろうなあ。帰宅後足袋を脱いだら左の第三指の股に水ぶくれができていた。下駄ずれ・草履ずれがいつも妙な箇所に出るのはなぜ。


単も薄物も雨の多い季節なので、あと、ほんとに暑い日に着るのは無謀でしかないので、タイミングが難しい。今回も帰りに寄り道したら最後に小雨がぱらついて、折りたたみ傘片手に急いで帰宅。夏用の雨コートが欲しい。めったに着ないものの備えって難しいよね。お財布的にも。