一瞬だけ真面目な話。

ここで,「オリンピックに出場するためにバレーをやっているのか、それとも、バレーを愛しているからこそ、世界一の舞台であるオリンピックに出場したいのか」と書いていて,今までちらちら感想を見てきた中でこれを指摘している人がいなかったので,ああ,やっぱりそう思う人はいるんだな,と思った。


今回の最終予選のメンバをどうやって選考したのか知らないんだけど,田中体制になって最初の代表メンバーはトライアウトで選んだんだった。その時,当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった朝日健太郎がトライアウトを受けなかったというので,一部で噂になった(そしたら彼はその年度末でサントリーを退社してビーチに転向したんだよなぁ。自称「ビーチでアテネを目指す」だったけど,目下どんな感じなんだろう)。


トライアウトであれば,本人がオリンピックを目指す意志のある人だけが代表に入っているという形ではある。だけど,その意志が,オリンピックが先なのか競技そのものが先なのか,それも人によって様々だろうね。例えば,体育なら何でも得意で何でもいいからオリンピックに出てみたいと思っていて,たまたま体格だとか母体が小さいだとかで自分にもオリンピックを目指すスペースがあるからバレーボールを選んだ,という人も,いるかもしれない。


あくまで個人的な希望(幻想)は,後者(バレーが好きだからオリンピックに出たい)であってほしいけど,前者の方がハングリーで力にはなりそうだ。


わたし自身がオリンピックにはあまり興味がないのと同様,スポーツ選手でもオリンピックに出たいと思う人とそうでもない人はいるだろうし,先に述べたようにオリンピックに出たい人でも動機はいろいろだろうし,何にしてもそこに優劣はないと思う。その競技をやる以上世界と戦ったり世界で一番を目指したりする気持ちは,あってほしいかな,と思うけど,ないからって非難することではないよな。


現実問題として,全日本に入って全日本に帯同することは,いろいろと大変なことが多いと思う。会社員だし自分のチームもあるし。去年は秋にワールドカップがあって,夏の間も遠征していて,おかげで全日本組のVリーグの出足はみんな悪かった。NECが5位に終わったのは何も宇佐美と細川の調子が悪かったからだとは言わないが。


自分のチームより全日本だろう,オリンピックだろう,って,言い切れるか? 日の丸つけて世界相手に戦う事ってそんなに重要? どうせならクラブチーム選手権の方が盛り上がってもいいんじゃないかと思う。


そもそも日本という国の代表として戦うことにどれほどの意味があるか,とか,オリンピックそのものにどれほどの権威があるか,とか。サッカーみたいに,国の代表チーム同士の戦いでも単独の世界選手権の方が権威があるスポーツもたくさんあるし(クラブ対抗の選手権もたくさんあるね)。


バレーに関しては,ほかの世界大会でそこまでがちゃがちゃ言わないのでオリンピックが最高っぽいけど。


先日も書いたようにVリーグはぬるいとは思う。本音のところで高い目標ではなくむしろぬるま湯Vリーグを贔屓してしまうわたしは,はっきり言えばただの選手萌えなミーハーなんだが。だから,まあ,ぬるま湯はいかんと思うしあまりにぬるま湯に慣れているとリーグそのものの存亡だとか競技自体の存亡だとかにかかってくるので,もうちょっと厳しい環境で鍛えた方がよろしいのではないかとは思っているのだが。中にはオリンピックで日本がいい成績を残すことにナショナリズムだとかアイデンティティを感じる人もたくさんいるだろうし,そういう人たちを向こうに競技自体を存続・発展させるためには,どうしてもナショナルチームが好成績を残すしか方法がないだろう。


なんにせよ,今回,予選大会が終了してオリンピックに行けなくなって,テレビの放映も一般大衆もあっさりと「4年後の為にがんばれ」と言う。4年後の為にがんばるのは(がんばれと言われているのは)全日本チームだけれど,その構成員は当然今回とは異なるだろう。スタッフ側は4年計画でも8年計画でも立ててその為だけにがんばればいいが,選手はそうはいかない。勿論4年後のオリンピックのために結成された新チームに再び選出されオリンピックを目指すことを自分の人生のメインに置いて構わないのだけれど,全日本のチームだけを考えていたら競技者としては間隔が広すぎる。一応毎年なんだかんだで代表チームは働いているけれど,毎日面倒を見てくれるわけじゃない。代表チームなりオリンピックなりを最終目標にしつつも,もう少し短く期限を切って一つ一つ目標を立てて実行していかないと大風呂敷広げすぎても収集着かないし,彼らは基本的には一人一人それぞれのバレー人生を自分なりに進めていくしかないのですよ。